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剣鬼と呼ばれた戦闘狂、病魔に蝕まれた最弱令息に転生する ~気が高ぶるとすぐ血を吐くけれど、それでも戦いはやめられない~  作者: としぞう


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第22話 ラウダとの旅

「セーレル?」

「これまでの旅で行ったことあるかしら?」

「いえ……たぶんまだ行ったことの無い村です」


 あれから一週間ほどが経ち、俺は食事の席でお願いしたとおり、ラウダが視察に向かう馬車に同乗させてもらっている。

 行き先はクレセンド家の領地の北部にある、セーレルという農村らしい。


「ギリギリまで悩んでいたのだけれど、昨晩嵐に見舞われたと知らせがあったのよ。被害がどれくらいかも把握しておきたいし」

「嵐……被害……」

「農業は自然を借りて行っている物だもの。災害に見舞われて駄目になることも少なくないわ。けれど彼らにも暮らしがあるから、こういうときに支えてあげるのが私達の役目なのよ」


 大分噛み砕いてだと思うけれど、分かりやすくレクチャーしてくれる。

 俺も本で知ってはいた世界だけれど、実際に従事している人から聞くと実感が全然違う。


 なんだか、遠い世界に来たみたいな浮遊感があった。

 俺の意志を知ったアズリアも心配していたが、本当に、自分でもらしくないことをしているって笑いそうになる。


「…………」

「アルマ? ああ、ごめんなさい。色々と一気に話しすぎたかしら――」

「……うぷっ」

「アルマっ!?」


 酔った。



 セーレルへの道のりは、屋敷から約丸一日掛かる。

 その為道中の町で、一度宿を取ることとなったのだが――


「領主様!」

「あら、貴方は……」


 宿に着くなり、一人の女性がラウダに声をかけてきた。

 傍らには少女がいて……親子連れかと思ったけれど、どうやら違うらしい。


「こんばんは、先生。エミィも」

「こんばんは、領主さま!」


 ラウダは二人と知り合いらしい。

 とりあえず存在感を消してそばで聞いてたところ――


「どうやらお二人は、この町の先生と生徒さんみたいですね」

「ああ」


 囁いてきたアズリアに頷き返す。

 学校というのは、まだ幼い子ども達に教養を与えるべく作られた施設のようなもので、王国内各地、一部の領主の元で実験的に行われているらしい。

 俺もこの領内を歩いて幾つか見てきたが、クレセンド家、ならびにラウダはこの実験を積極的に取り入れているらしい。


 俺が目指せと言われているアカデミーと同じ勉学に励む場であれど、アカデミーが優秀な人材を育成するという選民思想に基づくものであるのに対し、この学校では小規模ながら教育が才能の有無に拘わらず広く与えられる。


 個人的には悪くない試みだと思う。

 しかし、既に夕暮れ時なのに、その先生と生徒が二人きりで宿屋に身を寄せているというのは……これも授業の一環なんだろうか。


「実は、エミィちゃんの村からの定期便が昨日から途絶えていまして……」


 俺と同じ疑問を持ったラウダからの質問に、先生が答える。


「エミィちゃんの村といえば、セーレルよね?」

「はい。さすがに子ども一人で歩いて帰るには遠いですし、我々もそこまでは同行が難しく……」

「仕方ないわ。皆にも守る家庭があるのだし」


 ラウダは気を遣いつつ、思案するように顎に手を当てる。


 定期便――町と町の間を行き来する馬車のことだが、ちょうど目的地であるセーレルから途切れているというのは、妙なきな臭さを感じさせる。


「普段なら、エミィちゃんのご両親が迎えに来られるんです。それもなくて、その……何かあったのではないかと、その……」


 どうやら先生にとっても初めて直面する問題らしい。

 エミィという少女も涙を堪えるように俯いてしまった。


 こういうケース、前世の世界情勢であれば、珍しくもなかった。

 町と町を繋ぐ道中で魔物に襲われるなんて日常茶飯事で、移動は常に護衛をつけなければ成り立たなかったからな。

 現代で言うなら野盗に襲われた可能性もあるが……商人のそれでもなく、ただ人を移動させるためだけの馬車便だ。旨味なんて殆ど無い。


「……分かったわ。エミィは私達の馬車で送ります。ちょうどセーレルに向かっているところだったの」

「ほ、本当ですか、領主様!」

「ええ。となると……急いだ方がいいかしら。何があったかは分からないけれど、ご両親も心配しているでしょうし」


 ラウダがこちらに目配せをしてくる。

 俺は考えるまでも無く頷き返した。


 本来であればここで宿を取る予定ではあったが、今から馬車を走らせれば日暮れは過ぎてしまうが今日中に間に合うっちゃあ間に合う。

 待っている家族がいるっていうなら、確かに早いほうがいいだろう。


 そんな経緯もあり、俺達は再び、エミィという同行者を得て、休む間もなく馬車を走らすのだった。

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