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◆閑話:異世界知識について

道中の会話です。次からは街に入ります。

「ケイヤの世界って、どんな感じなの?」

「どんな感じって、漠然としているなー」


「想像がつかないのよね。ケイヤは私がよく知る人間って感じだし、それが別の世界の人間だーって言われても、じゃあそこはどんな世界なのかと考えても、連想できないのよ」


「そういうことか。まー、そういう意味で言えばあんまり変わらないように思える」

「そうなの?」

「土の色は同じだし、空の色も同じ。草木も特徴は違えど根底は同じに見えるから、視界に違和感がほとんどない。俺としても、ここは異世界ってよりかは遠い外国って感じだ」


「へー、そんなに変わらないんだ」

「けど、明確に違うところもある」

「ほう」

「魔法とか、魔族ってやつの存在だ。いや、まだ魔族のことを直に見たわけじゃないからなんとも言えないんだけれどさ、人間とは近しいけれど、決定的に違うんだろ?」


「そうねー。羽が生えてたり角があったり尻尾が生えてたりと、人間と身体構造がほとんど同じなのに、どこかが決定的に違うよ。向こうからしたら『人間は足りていない』って感覚なのでしょうね」


「そこら辺に魔族と人間の戦争の歴史が見えそうだけれど、それは今はいいや……」

「聞きたくなったら話すわよ?」

「ありがたいなー。……で、明確に違うことのもう一つが魔法だ」


「ケイヤの世界は魔法が一般的じゃないのよね」

「そうそう。俺んところじゃ人類史の発展は科学の発展だったんだよ」

「ふーん、魔法がないって不便そうね」

「俺としては十分に便利だったから、不便だと感じたことがないよ。ていうか、メイリのそれは魔法が当たり前だったからこその言葉だしな。最初からないものに対して人は何も思わないよ」

「それもそうか。想像がつかないけれど、それが当然よね」

「そうそう」


「とはいえ、この世界にだって科学の概念はあるのよ? この時計だってそうだし」


「……おもむろに胸元を開けて取り出すのどうかと思うぞ」

「なんでよ?」

「……まぁいいや。手に握ったら完全に隠れるほど小さくて金属製の小さな歯車がたくさんある。金工技術は高いわけだ。ちなみにこれって動力は?」

「電気よ。中に電池が入ってるの」

「そこら辺は同じなのか。ますます外国感が強くなるなー」

「驚いてはいないのね」

「んー、まぁ時計ぐらい普通だし」

「普通なんだ。結構高価な物なんだけれど」

「こっちじゃ安価な物なら子供のお小遣いで買えるしなー」

「そりゃすごい」


「ちなみに電子時計ってあったりする?」

「デンシ? わからないけれど、多分ないんじゃないかな」

「こっちの世界じゃそれも主流でね。針とかはなくて、盤に数字が映されて、常にそこの数字が変わり続けて正確に時を刻むんだよ」


「なにそれ、投写魔術とかじゃなくて?」

「すまん、逆に投写魔術ってなにか教えてくれ。字面でなんとなく理解できそうだけれど、勘違いだったら恥ずかしい」

「一部の風景を切り取って、それを映像として流す魔術だよ。私は専攻してないから使えないけれど、家に魔具があるから、後で見せてあげる」


「魔具?」

「魔法陣が刻まれた道具だよ。魔力を流せばそこに刻まれてる魔法陣に応じて魔法が発動するの。魔術は得手不得手があるから、魔力さえ流せれば誰でも同じ魔法が使える魔具は生活における必需品だよ」

「なにそれすごい。その技術があるのに、なんでわざわざ電気仕掛の時計があるんだ?」

「生まれつき魔力が少なかったり、魔力が少ない子供や老人が使うには厳しいってのがあるのよ。一つの方法に固執し過ぎると待つのは停滞だからね。他の代替案があるならそれも試しておくし、魔術に取って代わる利便性があればそっちを主流にしたっていいって考えでしょ」


「へー。ちゃんと考えてるんだな」

「それも最近の話だけれどね。今までは魔術に頼り過ぎてたけれど、他の手段も見つけていこうって主張した学者がいてさ。色々と問題もあったんだけれど、魔王軍との戦争もあるし、使えるものはなんでも使いたいからってことで王族が後押ししたのよ」


「なるほどね。発展の契機が戦争ってのは人間の性なのかねぇ……。逆にそれが長引き過ぎて技術の流用が遅れているってのもあるのかな? 科学技術があっちより遅れているように見えるのは魔法の台頭だけが理由ってわけでもなさそうだなー」


「なんの話よ」

「こっちの話だよ」

「ふぅん、そう。ところでケイヤの世界ってそのデンシ……? とか以外にはどんな科学技術があるの?」

「……その質問は異世界モノあるあるだけれど、いざ聞かれると返答に困るな」


「なんで?」

「俺がただの学生だから、詳しく話すことができないんだよね……。かなり大雑把に言うことが出来るけれど、仕組みとかを聞かれても答えられる自信がない……」


「言っちゃなんだけれど、もしかしてケイヤって使えない?」


「刺さる。その言葉はとても刺さる……。いやね、俺も異世界に飛ばされるって分かってたら事前に使えそうな知識を集めていたかもしれないけれど、こんな急に飛ばされても、できることなんて皆無でしてねぇ……はぁ……」


「かなり落ち込んだわねー。まー、元気出しなさいってば。ケイヤの使命って暴れてる魔族の間引きでしょ? あんまりそこら辺は関係ないんじゃないかな?」

「んー、核爆弾の製造方法でも知ってりゃ役立てたかもしれないけれど、それなら俺を飛ばすのはおかしいしな……。実際のところ、異世界でおばあちゃんの知恵袋的な知識が役立つとも思えねぇんだよなー」


「まー、よくわからないけれど元気出しなさいよ。街も見えてきたし、入ったらご飯にしましょ」

「おぉ、でかい城壁が見えてきた! 少年心がくすぐられるなー!」

「元気ねこいつ」

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