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VRマシン・グリフ王国への道  作者: ai56go
変化する環境
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俺とラナ

 日進月歩にっしんげっぽいきおいで《ニュー・アントレア・シティ》は発展はってんしていく。


「ここね。コウヘイが言っていた新しくできた道って。 この先には何があるの?」

「だから、行ってからのお楽しみだって」

 俺は昨日から勿体もったいぶっている。きっとラナは喜ぶと思う。

 ラナの手にはアイスクリーム。食べながら新しい通りの景色を楽しむ。


「この辺り木しかない森だったのに。ゴールドラッシュってホントすごいわね。短期間でこんなに町が大きくなるんだから」


 自然をかした町《ニュー・アントレア・シティ》。

 平地の少ない地形をうまく利用して、花びらのえがくように次々と新しい道が作られていく、いろいろな店や施設しせつが建てられ町が発展していく。


 豪華ごうかな町並みが観光地として《グリフ王国》じゅうの人に知られるようになっていた。


 観光客が増えれば、遊びも増える。サーカス、遊園地、劇場、町全体がさながらテーマパークのように目がうばわれるもので溢れている。

 城郭都市じょうかくとしよりもはなやかな町だ。世界一にぎやかな町だ。と町人はほこらしげだ。



「あ、あれね。あれ、ジェットコースターね」

 道のおくには、長いレールのジェットコースターがあった。

「乗ってみようか」

「私、ジェットコースターに乗るの初めて」

 山の勾配こうばいを利用したジェットコースター。


 カートは、俺とラナを乗せ徐々じょじょに前へ進み、重力にまかせて急斜面きゅうしゃめんくだる。

 木々の隙間すきまを、

 街の建物のそばを、

 もうスピードで疾走しっそうするカートは迫力はくりょく満点だった。

 せまりくる障害物、息が止まりそうな急降下きゅうこうか。顔を強張こわばらせ、しのいだ。


「心臓が止まるかと思ったわ」

 カートが一周まわり、スタート地点に止まると、ラナは、ホッとし顔で鼓動こどうしずめている。

「でも、面白いわ。なんたって木や建物にぶつかりそうになるスリルがたまらないわね。 《ラナのローブ》だと、スピードはせても、あんなに狭い場所を飛んだら、いくら命があってもりないわ」


「なんか、のどかわいたなぁ、ジュースでも買わないか?」

「そうね。おどろいたせいか、私ものどカラカラ」

 町は活気かっきあふれている。どこを見てもカラフルでおとぎの国の世界のようである。

 道は舗装ほそうされ、観光客用の店が多い。

 輪投げ、射的しゃてき、玉入れ、からくり屋敷、まるで遊園地のようだ。


 家族連れの子供がはしゃいでいる。

 カップルが楽しんでいる。

 風船を手に持った子供が走っている。


 町を楽しむ多くの観光客が行きう。


 そんな通りをスタンド(売店)で買ったジュース片手に歩く。


 店舗てんぽのショーウィンドウにかざられた商品を見ているだけでも気持ちがわくわくする。

「この服、ラナに似合うんじゃないか?」

「えーー、なんか子供っぽくない?」

「まあ、店の中に入ってみよう」

「そうね」

 

 家具屋、インテリア屋、洋服屋、おもちゃ屋、飲食店。種類も軒数も数え切れないほど建ち並ぶ。


「玄関に置く置物買わないか?」

「そうね。この店に入ってみましょ」


 観光客が増えたせいか、《ニュー・アントレア・シティ》には、今まで見たことが無かった店が多くできた。そしてどの店も贅沢ぜいたく趣向しゅこうらしている。町を歩いているだけで、なんだかウキウキしてくる。


 一日があっという間に過ぎていく。


 夕暮れ前、湖に通じる道を、へと向かい歩く。

 ここは以前、けもの道だったが、家を建てるにあたって荷馬車が通れるように、俺が広げた。その、観光客が増えるにともない、観光スポットとなった湖に通じる道として、舗装ほそうされ、目をくオブジェが、あちらこちらにかざられている。


 町で買った球根きゅうこんとタネを見ながら、ラナはうれしそうに歩く。

「どんな花が咲くのかしら、たのしみだわ」

 真新まあたらしいが家の二階には空中庭園がある。そこはラナのお気に入りの場所。町で買ったタネを育てて楽しんでいる。

 最初は、あんなにきらっていた魔物の犬シロも空中庭園で飼い、ラナが世話せわをしている。


「ラナ、今日は空中庭園で夕食にしないか?」

「どうしたの急に?」

 俺はふくみのあるみを浮かべ、

「ラナをおどろかせることがあるんだ」

「なに?もったいぶって。 最近帰りが遅かったのと関係がある?」

「まあ、あるといえばあるが……、あとのお楽しみだよ」

 意地悪いじわるするが、やわらかな表情でラナは無邪気に考え込む。

「でも、私がいつも空中庭園に居たんだから、何か仕掛しかけを作ってたらわかるはずよね、それにコウヘイ最近、あまり家に居なかったでしょ?」

 あれでもない、これでもないと、ぶつぶつ言ってたラナは、

「全然わからないわ。降参こうさんよ。教えて」

 とせがむ。

「ひと目で分かることだから」

「ひと目で分かること? ってなにかしら?」

 さらに考え込むラナのしぐさを、俺は楽しむ。



 俺は、《ニュー・アントレア・シティ》の都市計画推進委員すいしんいいんの一員となっていた。

 だからラナといつも一緒というわけにはいかない。


 それでも、夕食は必ずラナと食べるように心がけている。

 食事のときのラナは、その日一日の出来事をよく話してくれた。

「調理人からケーキの作り方ならったわ、今度ケーキ作ってあげる」

「使用人にあみみ物っているの、なにか作って欲しいものない?」

「空中庭園だいぶ良くなってきたわよ。あと、遊歩道ゆうほどう作りたいんだけどコウヘイも一緒に考えて」

「シロが飛びついてきて大変なの。きっと運動不足よ。コウヘイがシロの散歩おろそかにしているせいよ」


 俺がしゃべらなくても、ラナが一人でしゃべっている。ラナの笑顔は、夕食の時間を幸せな気持ちでたしてくれる。


 いつも幸せな気持ちにさせてくれる。そんなラナに、今日は、とびきり豪華ごうかな夕食にしようと、ラナに内緒ないしょでいろいろと準備をしてきた。



 に着いた。

 「おかえりなさいませ」

 使用人が声を掛けてくる。

 できたてのマイホーム。時間があれば、ラナと一緒に、町で買った家具や置物を馬車で持ち帰り、使用人に指示をして模様もよう替えをした。もちろんラナと相談して決めた。

 やっと、しっくりくるように、だいぶ落ち着いた。


「私、着替えてくるわね」

 ラナは自分の部屋に入り、今日買ったばかりの服に着替えてくるという。


 俺は、空中庭園に出てラナが来るのを待つ。


 シロがじゃれついてくる。


 あらかじめ使用人に言っておいたとおり、空中庭園には素朴そぼくかざけができている、俺が呼んでおいた三人の楽団員がくだんいんが楽器をもって待機たいきしている。


 水辺みずべすずしい風を感じながら、ラナが着替きがえてくるまでの一時ひととき、夜のとばりが降りていく景色を楽しむ。


 少し前までは、湖には俺が作った小屋しかなかったのだが、今では、湖のまわりは、歩道、公園、展望台が整備され人でにぎわっている。

 貸しボートや釣具つりぐ屋ができ、多くの人が湖を楽しんでいる。

 水鳥が泳ぎ、観光客の乗るボートが浮いている。釣りを楽しんでいる。

 キャンプ場では、バーベキューを楽しんでいる。


 俺も、散歩したり、馬車で走ったり、ボートからながめたり、なんどもラナと一緒に楽しんだ。


 俺の目には、広い湖の周りにぽつぽつと建つ複数の邸宅ていたくから、次第しだいに、明かりがともっていく光景が映る。



 ラナが今日買った服を着て現れた。

浴衣ゆかたっていうのよねこれ、私、浴衣ゆかた着るのはじめて、どう似合にあう」

「ほんとうにきれいだ」

 ラナに見惚みとれた。本当にきれいだと思った。喜ぶ俺を見てラナはうれしそうにする。


 提灯ちょうちんでライトアップされた空中庭園。

 料理人と使用人が屋台やたいで、焼きとうもろこし、焼きそば、焼きイカ、お好み焼きと作っている。

 げた醤油しょうゆにおいがする。焼いたイカの匂いがする。目新めあたらしいメニューだが、今では普通に《ニュー・アントレア・シティ》でも売られている、ごく当たり前な軽食けいしょくでしかない。

 それでも、ここには、俺とラナしかいない。


「俺の趣味でこうしたんだが?ダメだったか?」

「そんなことないわ。私、こういう雰囲気、好きよ。それに美味しそうな匂い。何から食べる?」


 屋台やたいで手渡された食べ物を持ち、丸いテーブルに座って、二人で食べる。しゅわしゅわ酒を飲む。


「ほんと、最近料理が美味しくなったわよね。きん鉱脈こうみゃくがみつかるとこんなに町がにぎやかになるものなのね。人も物もあふれるように集まってきたわ」


 楽団員がかなでるメロディのなか、二人で食事をする。


「コウヘイ、私がおどろくことって、このこと?」

 見慣みなれない小物はあるが、普通の屋台やたいと、今となっては普通の料理、そして提灯ちょうちんげただけの飾り付け。楽団員がくだんいんは今までにも何度も呼んでいる。おどろくほどのことではない。


「いいや、別だよ」


 もうそろそろだ。

「ラナ、湖の真ん中の方を見てごらん」

 二人して、暗い湖に目を向ける。

 一筋ひとすじの光が天にのぼったかと思うと、湖の上空じょうくうで大きく炸裂さくれつした。

 パーン という音と共に、火の玉が大きく広がり、大きな光の花をかせる。

 続いて、何発もの花火が夜空をいろどる。

「これ花火ね。きれい」

 ラナは花火に目をかがやかせている。

「私、花火見るの初めて」


 ラナは、空中庭園のさくに近づく、俺もラナのそばへと近づき隣り合う。


 《ニュー・アントレア・シティ》で初めて打ち上げる花火。


 大きな音と光にきつけられてか、多くの町人が湖岸こがんに集まりだした。

 しばらくすると《ニュー・アントレア・シティ》の住人すべてが集まったのかと思うほど、湖岸は人でくされている。


 言葉もなく見入みいっていたラナは、われに返ったかのように、俺に話しかける。

「私、こんな気持ちになったの初めて、そうだ、今日を私達の記念日にしましょ。来年らいねん再来年さらいねんもここで一緒に花火をみましょ」

「……」

「どうしたの? なんで、コウヘイ泣いてるの?」

「え、あれ、おかしいな」

 俺にもからなかった。しかし、自然と涙がでた。

 なぜがラナに『おかえり』と言いたい気分だった。


 「「………………」」


 二人で花火をていた。


 無言でていた。


 言葉などらなかった。



 無心に興味深く花火を見るラナの姿は、いつか見たラナの幻想的な姿だった。(大きな箱型3Dディスプレイを無邪気むじゃきのぞむラナ)


 一点だった光が、夜空いっぱいに広がる。

 突如とつじょ現れた光に、大空から俺とラナがつつまれるような、非現実な幻覚げんかくにとらわれる。


「なあ、ラナ」

「ん?」

 隣り合うラナの、なごやかなひとみが俺にそそがれる。


「ラナどこにも行くな。ずっと俺とここで暮らしてくれ」

「変なコウヘイね。私がコウヘイのそばから離れたことなんか一度もないでしょ。 ……うん。コウヘイがここで暮らしたいのなら私もそうするわ」

  ・

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  -----


 あれから二年の歳月さいげつぎ、さらに三年の歳月さいげつぎた。

 そう、もう五年も前の出来事できごとになる。 俺とラナがそんな会話をしたのは。


 ……今でもおぼえている。


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