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VRマシン・グリフ王国への道  作者: ai56go
変化する環境
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俺達の家

 今日もラナは庭の椅子いすに座り、朝からぼんやりしている。


 俺は、のどかな風景をながめたり、散歩したり。


 他にすることがない、何もすることがない。


 宝箱を発見する前の日常に戻っていた。



 夕食の材料を買いに町へ。

 いつもの店で食材を買う。無意識むいしきに隣の雑貨屋のおくに目が向いた。

「おい、ラナ、ボートと釣り竿があるぞ」

「ほんとだわ、めずらしいわね」

 飛びつくように購入こうにゅうし、大喜おおよろこびで俺はボートを頭からかぶるように持ち上げ、小屋へと急ぐ。

 食材と釣り竿を持って歩くラナは、いそあしになる俺とは対象的に普段と変わらなかった。


 早速さっそく、使ってみよう。

 二人でボートに乗り、釣りを楽しもう。エサは前回と同じパンにした、パンしかエサになりそうなものがない。

 喜んで釣りを始めたが一向いっこうに釣れない。十分たっても、三十分たっても、ウキはピクリとも動かない。

「私さきに帰って夕食の準備するわ」

 ラナは飛んで帰ってしまうありさま。

 一人ボートに乗って釣れない釣りをしていても面白いはずがない。


 ボートをぎ、俺もきしへと向かう。



 その日の夕食。

「アンナ、元気だったよな」

「そうね」

「「……」」

「セシル、見違みちがえたよ。人ってあんなに変われるもんなんだなぁ」

「そうね」

「「……」」

 俺はいろいろと話題を考えるが、ラナは興味を持たない。まあ、昨日もした話で、もう話は出尽でつくしているんだから、ムリに同じ話題を持ち出す俺の方がおかしいのかもしれない。


「「……」」

 会話の無いまま食事を続ける。


「家を建てないか?」


 唐突とうとつに口にした俺の言葉に、ラナは一瞬まったが、何事なにごとも無かったように食事を続け、聞き返す。

「また小屋作ってどうするの?」

「そうじゃなく、立派りっぱな家だよ。お金もあることだし大工に頼んでアントレアの屋敷に負けないくらい立派な家を建てないか?」


「お金があるんだから、別にいいけど……。でも、そんな大きな家らないわよ」

 めた態度、ではない。

「なら二階は空中庭園と露天ろてん風呂にすればいい、一階は俺達の部屋と食堂とリビングと、……そうだ、フリースペースをつくろう。カウンターやステージを作って、いろんな物をかざって、楽団員がくだんいん劇団員げきだんいんを呼んで、そこで楽しくごせるようにするんだ。 空中庭園には、いろんな草花くさばなえて、そうだ動物園のようにしてもいい。 リビングでは、二人ガウン姿でお酒を楽しむ。床には大きな白い犬がくつろいでいる」

 放言癖ほうげんへきのように夢を話した。お金は十分ある、できないことはないはずだ。


「……そうね、いいかもしれないわ」

 俺の身振みぶ手振てぶりの仕草しぐさに半分あきれているのかもしれないが、それでも微笑ほほえむラナ。ラナの笑顔は好きだ。うれしくなる。


 頭に浮かぶ《魔物の洞窟》のことを忘れりたい。


 俺は誇張こちょうを続ける。

 ジャングルのような露天風呂、水着を着て一日中楽しめるようにしよう。

 地上と隔離かくりした空中庭園、小動物の楽園らくえんにしよう。

 何十人もの使用人をやとい、俺達にかしずく。

 クエスト屋は日々、めずしいものを見つけてくる。フリースペースはさながら博物館だ。


 俺のジェスチャーをじえた大言壮語たいげんそうごにラナがクスクスと笑い出す。

「アントレアの屋敷の風呂場よりはせまくてもいいけど、足がばせる風呂はいいわね。 博物館はムリでも、二階に空中庭園をつくるのはおもしろそうよ」


 夢のような話をする俺に、ラナは笑いながら現実味げんじつみのある言葉でこたえる。

 その日の夕食は、空想くうそうの家を頭にえがき、部屋数や、空中庭園のレイアウト、風呂場の広さと、話が盛り上がった。


 そうと決まれば、早いにしたことはない。


 翌日、いつもより早く町に向かい、大工の家をたずねる。

「大工だから家は建てられるが、なんでもってことにはなんねぇよ。 それに、湖の近くは荷馬車にばしゃはいれねんだから、どうすることもできねえだろ。湖までの道はあんたらがなんとかすることだな」

 《魔物の洞窟》入り口までは荷馬車が通れる道があるが、そこから先の湖までは、俺達が通ることで出来た獣道けものみちしかない。

 歩いて五、六分程度ていどだから、木こりをやとって道はなんとかできるだろう。

 大工のかたには困惑こんわくするが、はある、「道は俺がなんとかする」大工と約束をわした。


 仕事の紹介所で、木こりを募集し、その帰り道、クエスト屋の通りに足を運ぶ。



『クエスト屋が居るじゃないか!』


  -----


 あれから俺は、一ヶ月近く自分の部屋にもっている。


 食事もろくに取らず、風呂もろくに入らず、夜昼ちゅうやわず作業に没頭ぼっとうしていた。

 なぜかこれが俺のするべきことで、それも急ぐ必要性を感じる。買い物も風呂の準備もラナにまかせっぱなしにしてある。

 俺が家事をしなくなると、ラナは文句もんくも言わずにルーチンワークのように家事をこなしていた。


「コウヘイ、食事の準備が出来たわよ」

 ラナは無表情のまま、俺の部屋をのぞく。


「あ、ラナ、これちょっとめてみろよ」

「なに?」

 スプーンでわたした白い粉末ふんまつを人差し指に付けペロリとめる。

「あ、これ砂糖ね。とても甘いわ」

「だろ。砂糖だろ」

 ラナは、つくえの上にある調合ちょうごう済みの小瓶こびんを見回し、

「ここにある小瓶全部砂糖なの?」

「ためしに、つぎ、これ舐めてみろよ」

 同じような白い粉末を渡す。

「すっぱい、 これはね」

 顔をしかめる。

「これと、これと、これを混ぜたら砂糖になるし、これと、これだとになる。比率ひりつが違うとまた違った味になるんだ」

「へぇー。 この瓶、あのクエスト屋が持ってきた物よね。 詐欺師さぎしかと思ってたけど、案外あんがいまじめな人だったのね」



 一ヶ月ほど前、あのクエスト屋に出会うことができた日。


 半分あきらめてはいたが、クエスト屋を見た瞬間、なんだかいかりがいてきた。

『ほとぼりが冷めたと思って、また詐欺さぎでもしにきたのか?』そんな感情がいてくる、『それとも、今まで俺のクエストをやってたのか?』というあわ期待きたいも少しある。俺はクエスト屋に近づいた。

「砂糖は見つかったか?」


 何も言わずにクエスト屋がふくろす。


 その無愛想ぶあいそうな態度に、『今まで待たせて』とは思ったが、俺も何も言わずに、無愛想に袋を手に取り中身なかみ確認かくにんする。

 中身なかみはたくさんのびん


「これ全部砂糖なのか?」

「それが、あなたの探していた品物しなものです」

 そう言うと、クエスト屋は立ち去ろうとする。

 砂糖の代金を要求ようきゅうするわけでもなく、瓶の中味なかみを説明するわけでもなく、ただびんの入った袋を手渡して立ち去っていく。

 詐欺さぎならわざわざ、こんな手のんだマネはしないだろう、他の場所で詐欺さぎをすればいいだけだ。クエスト屋の挙動きょどうが気にはなるが、立ち去るクエスト屋に、俺はキョトンとしたまま何も言えなかった。


 小屋に帰って、台所のテーブルに瓶をならべた。

 その中から一つ手に取り、スプーンに少しすくってめてみる。

 えぐいあじしかしない。

「これ砂糖じゃないぞ」

 興味があったのだろう、俺を見ていたラナの顔は俺に合わせて、にがそうなしかめっつらになっている。

「やっばり詐欺だったのね」

「ラナもちょっと舐めてみるか?」

「いらないわよ。そんなの」


 しかし、不思議だ。詐欺ならびん一つでいいはずでは?むしろ、俺とくわすかもしれないあの通りになぜあらわれた?


 俺は、全ての瓶を調べてみることにした。

 どれもまともな味ではない。が、かすかに甘かったり、キツイ甘みだったりする物や、まったく味がない物もある。


 ラナは、農園から帰ってきてから、また庭の椅子に座ったままボーとしているし、道を作る作業は木こりにまかせてあるから、俺もすることが無い。


 俺はこの瓶の粉末をいろいろと混ぜてみることにした、不思議とそうするべきだと感じたからだ。


 組み合わせても、ほとんどがマズイ味にしかならないが、まともな味になる組み合わせもある。

 その組み合わせを調べるために、俺は自分の部屋に今までもっていた。


 俺の部屋の机には、小瓶のラベルに味の種類を書いた何十種類もの味が調合ちょうごうできていた。


 そして今日、念願ねんがんの砂糖だと納得なっとくがいくの味がついに見つかった。

 俺が調合した砂糖をまためるラナに、うれしくなる。


 その気持ちで話しかける。

「なあ、これで何か料理作ってみないか?」

「私、砂糖を使った料理作ったことがないわよ」


『え?』


 作れないのなら仕方がない。

 いつものパンと塩味のスープと水っぽいサラダで夕食にする。


「ラナ、道どうだった?」

「木こりが切り株も全部のぞいてたわ」

「なら次は大工だな。新しい家が出来たらペットを買おう。大きな白い犬を買おう」

「ペットにできる犬なんてこの辺りに居るのかしら」


 ほとんど会話のない夕食を早々と済ませ、また味の研究に取り掛かる。



 翌日、ひさしぶりにラナと二人で町に出かけ、大工の家をたずねる。


『宝箱に入っていた一万プラチナがまだまだ残っている。立派な家を建てよう』


 道が出来たことを大工につたえ、俺のイメージを大工に話すのだが、

「二階に露天風呂だって?!、無茶言うなよ。 空中庭園?バルコニーなら作れるぞ」

 大工との話し合いがうまくいかない。俺にどこまでも妥協だきょうを求めてくる。

『俺の考える家は夢物語なのか?』

 しかし、大工の言うとおりのただ広いだけの家を建てたところで楽しくない。話をり、しばらく考えることにした。夕食を買った帰り道、俺はクエスト屋の通りに足をはこぶ。


「なあ、クエスト屋、今度はペットにする大きな白い犬を探してくれないか?」

 このクエスト屋は信頼しんらいできる。俺は次のクエストを依頼いらいする。


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