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木は水に浮き、石は水に沈む。
物は地面に落ち、煙は空へ昇る。
何の変哲もない、日常の出来事である。
それを物理演算アルゴリズムが再現している。
風の流れや水の流れを含む現実世界の物の動き、古典物理学の範疇なら現実世界を完全にコンピュータ内で再現できる。
物理演算アルゴリズムは既に規格化されており《グリフ王国》もその規格に則っていることをインターネットで知った。
しかし、いくら《グリフロード》が巨大なコンピュータと言っても、無限とも思える物質を全て演算することはできず、まやかしに頼る部分が多いのが現実のようだ。
肉が焼けたり、鉄がサビたりするなどの科学反応もまやかしらしい。だから現実世界の現象と異なる。
動植物の成長や、微生物の働きなど、《グリフ王国》の世界がどこまで現実に近いのか試してみたくなる。
俺が理解できたのはこれくらいだ。コンピュータープログラミングを勉強してはみたが、すぐに分かるものではなかった。
それでも役立つ知識を少しは手に入れられた、防御力や攻撃力はある場所の数値を増やせば、簡単に強化できることが分かった。
公開されたサンプルプログラムをじっくり見ているうちに、貨幣の増やし方が分かった。今あるプラチナコインをコピー&ペーストで簡単に増やせることが分かった。
運営会社が公開したコンバートアプリを使えば、フリー素材の3Dオブジェクトを《グリフ王国》の世界に簡単に取り込める。
フリー素材の手漕ぎボートをインターネットからダウンロードし、《グリフ王国》の世界にアップロードした。釣り竿もアップロードした。ボールもアップロードした。
物は簡単にアップロードできるのだが、生き物は簡単ではない。犬の3Dオブジェクトをアップロードしたが、生き物の犬ではなく、犬の置物として認識されてしまった。ペットは簡単には作れないようだ。
これらを《グリフ王国》の俺のアカウントにアップロードはしたものの、いろいろな物がある日突然、小屋の前に落ちてあるのは不自然に思う、これらの物は、《アントレア・シティー》の雑貨屋の店先に置くことにした。どうなるかはわからない。
そしてクエストを一つ作る。宝さがしのクエストを。
プラチナコイン一万枚入った宝箱を《魔物の洞窟》に通じる坑道に埋めた。そして宝の地図を書いて、俺の小屋の近くの木の根元に簡単に分かるように埋めてみた。
……そうだなぁ。どうせなら、ラナへのプレゼントも入れておこうか。
インターネットでラナに似合いそうなローブを探す。ローブをそのまま《グリフ王国》にアップロードするのは味気ない。
Blenderという3Dグラフィックスソフトを使ってラナへ贈るローブをカスタマイズする。ポリゴンを一枚一枚繋ぎ合わせて作る。テクスチャーで模様を貼り付けてもいいのだが、ポリゴンで模様を作った方が光源で色が変わり見た目が綺麗だと考えた。
ポリゴンを作成する作業は難しくはないのだが手間の掛かる作業になる。慣れてくるとちまちました操作が苦痛でしかない。
なんでこんな単調なことやってんだ、たかがゲームで。そう考えてしまう。
それでもラナが喜ぶ姿を想像すると作業が捗る。
できあがったローブに『ラナのローブ』と名前をつけ、全てのパラメータを最大値(MAX)にしようかと考えたが、ラナが強くなりすぎるのもどうかと思う。防御力だけを最大値(MAX)にして、プラチナコイン一万枚と一緒に宝箱の中に入れ、その宝箱を坑道に埋め直した。
どうなるか分からない、それでも希望は感じる、ラナと楽しく過ごせる気がする。
次の予約日が待ち遠しい。




