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VRマシン・グリフ王国への道  作者: ai56go
変化するラナ
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グリフ王国しかない三

 《グリフ王国》の世界にても、つまらなくなった。

 気をくと、ホブゴブリンとの戦いや、アントレアの言葉が走馬灯そうまとうのように再生さいせいされる。そのたびに《魔物の洞窟》のことが思い出される。ストーリーから外れた行動をる俺に、《グリフロード》が『順路じゅんろはこっちだ』とシグナル(合図あいず)を送っているのだろう。

 そのたびに『《魔物の洞窟》に行ってはダメだ』と俺の心が拒否きょひをする。後悔こうかいしたり、葛藤かっとうしたり、悶々もんもんとするだけだ。


 結局、六万円という大金を無駄むだに使っただけだった。

 ラナは、人形のようになってしまった。

 いや、無駄むだとも言えない。ラナは湖畔こはんの小屋に住むことを選んだ、タライから湖に落ちた俺をおかしいと笑った、水着が無いから泳がないと躊躇ためらった。

 ラナはラナだ!そう感じられたのだから無駄むだとは言えない。


『何か作れば、ラナは興味を示す』


 小屋が作れた。椅子いすも作れた。タライが浮いた。

 ブランコも、ハンモックも作った。


 多くのことができた。


 多くのことができるのだが、物がさすぎる。

 船もない。

 釣り竿もない。

 ペットもない。

 キャッチボールするボールさえない。


 町には、刺激しげきがない。

 戦いに関係しない物資ぶっしさすぎる。

 《グリフ王国》はラナと楽しく暮らすようには作られていない。


 《グリフ王国》の世界では判断力や記憶力が低下するとはいえ思いつくことは全てやった、

 そして現実世界に戻っても、もうできることが思いつかない。


  -----


 いくらインターネットで調べても、城に戻って武道大会に参加したというプレーヤーは一人もいない。《魔物の洞窟》を攻略する過程かていで、魔界に飛ばされたというプレーヤーのブログしか検索結果に現れない。

 俺の行動をまねて《ホブゴブリンの盾》を手に入れたというプレーヤーはそこそこ見るが、そのあとにアントレアが言っていた武道大会のルートを見つけたというプレーヤーは一人もいない。やはり、アントレアが言ったストーリーは存在しないのだろうか?


 ログイン前に夢のようなことをブログに書いたが、あれ以来いらい更新が止まっている。書くことが何もない。いや、書くことは一杯ある。

・運営への不満

・グリフ王国への不満

・ラナへの不満

・そして俺への不満

 なぜ、ゲームごときにこんなになやむのだろうかと、自分の性格がいやになる。なぜゲームを楽しもうとしないのかいやになる。

 ラナとたのしく過ごした時間が忘れられない。はじめて出会ったときの幻想的げんそうてきなラナの笑顔が忘れられない。

 《魔物の洞窟》を攻略してしまうと、魔界でのつらきびしい戦闘に巻き込まれる。もう、ラナとは楽しく暮らせなくなる。


 俺がブログを更新しなくても、返事欄への書き込みは多い、ほとんどが不安ふわんの書き込みだ。運営の対応の不味まずさを愚痴ぐちらずには居られないプレーヤーは多いようだ。

 俺は、返事欄に書き込まれた内容をまとめ、『返事欄のまとめ・グリフ王国の現状』とタイトルを付け新しいブログを作成した。読者へ意見交換の場所を提供ていきょうした。


 読者にじり、俺も返事欄に愚痴ぐちを書き込んだ、改善策かいぜんさくも書き込んだ。『《インテリ・ジェネレータ》の仕事をしている関係で《IgC》も機械学習することを知っている、《グリフ王国》には、魔物と戦う以外の物資ぶっしが少なすぎるんだ、物資さえあればもっと楽しくなる』 わざわざブログを作成するほどでもない、単なる思いつきを書き込んだ。



 忙しく感じる灰色の生活を送っているうちに、次の予約日が近づく。


 多くのプレーヤーは不安ふあんいだきつつも《グリフ王国》を楽しんでいる。楽しんだあと、シナリオが終わってしまうことに不満ふまんをあげている。俺のようにシナリオ外の行動をとろうとするのは少数派なのかもしれない。


 このまま《グリフ王国》にログインしてもつらくなるだけだ。


 一時間六万円もする。たのしくもないゲームにお金を出す余裕はない。そう考えてしまう俺の思考しこうに、やはりラナはゲームのキャラクターでしかないのかと、がっかりした気分になる。他のプレーヤーのパートナー《IgC》とちがってラナだけはラナだけはキャラクターのいきえて欲しいと願うのだが……。


 運営がなんらかの対応をするまで、《グリフ王国》は中断して、新しいシナリオでもと思う。

 魔物とえども人間にた体型をしているし、れば肉ががれ血がでる。それに比べ《社会人サクセスストーリー》は俺好みかもしれない。


 しかし、そこにはラナが居ない。


 新しいシナリオの方が楽しくなるかもしれない。そうなったらどうしよう、

 複数のシナリオを楽しむほどの金銭的余裕はない、そもそも予約が取れないのだ、どれか一つにしぼることになるだろう。


 思い切って《魔物の洞窟》を攻略するのが正解なのでは、そうすればラナも元気になる。

 しかし魔王を倒してしまえば、今度こそ本当にラナは人形のようになってしまう。


 このままラナを忘れていいのだろうか?



 結局、予約日の五日前、キャンセル料がかからないうちにキャンセルし、次回の二ヶ月後の予約を取り直した。


  -----


 日に日に魔王を倒すプレーヤーが増えていく、そしてみながその後の平和な世界に不平ふへいらす。

『もっと魔物と戦いたい』

『パートナー《IgC》と楽しく暮らしたい』

 なかには《グリフ王国》のフィールドを使った『二人プレイ格闘がしたい』、『MMO(多人数同時参加)がしたい』など、シナリオから逸脱いつだつした事を言うプレーヤーもいる。過激かげきな発言で運営会社を非難ひなんするプレーヤーもいる。


 その声は日に日に大きくなり、運営会社は何らかの対応をせまられるようになったのだろう。

 ある日、《グリフロード》の運営会社が重大発表をしたというニュースが飛びった。


 運営会社のホームページをひらけてみる。


 トップページには、『今後の方針について』とタイトルを付けた記事があった。

 冒頭ぼうとうでプレーヤーのニーズに対応しきれない現状げんじょうびていた。特に、《IgC》が人形のようになることに不満をいだくプレーヤーが多いこと、運営は《IgC》に多くのバリエーションの性格・行動パターンを定義ていぎしているが、人間の思考をコンピュータで再現させることはきわめて困難なことを長々と理屈りくつっぽく記載きさいしている。

 やはり、《IgC》は人間のようにはいかない。《インテリ・ジェネレーター》をしている俺からすると、中の人なかのひとの苦労が分かるようで、幾分いくぶんかは同情どうじょうする。

 《IgC》はNPCと違い、機械学習する。ただ、どう学習するのかは、運営会社にもわからない。


 同時に、重大発表としてAPI|(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)とコンバートアプリを公開したことが記載きさいされている。

 読んでみると、公開されたAPIは強力なもので、例えば、魔王城に瞬間移動しゅんかんいどうできる魔法や、魔王を一撃で倒せる武器、すべての攻撃を防げる防具など、ゲームバランスを無視した物が作れたり、太陽を二つにしたり、地形や気候きこうを変えたり、どんな模様もようの服でも、どんな形状の家具でも自由に作成できたりするものだと記載きさいされてある。そして、究極きゅうきょくとしてプレーヤー自身がシナリオを好きに作れ、プレーヤー自身が《IgC》の性格を自由に定義ていぎできる。と運営会社は主張しゅちょうしてある。


 公開されたAPIはおもに、他社へサードパーティ製品の開発を推奨すいしょうする物のようだが、利用者は限定げんていされていない、自分で作って自分の《グリフ王国》の世界にアップロードするのなら、何の制限せいげんもない。


 まあ当然だが、シナリオを作るとなれば発想力が必要になるし、《IgC》の性格をいちから定義ていぎするとなれば高い技術力が必要になる。手の込んだ模様の服を作ろうとすれば、CG(コンピュータグラフックス)ソフトを使って手が込んだ作業をする必要がある。公開されたAPIは誰もが簡単に好きなものが作れるというような代物しろものではなさそうだった。


 そして、公開されたもう一つのほうコンバートアプリは、インターネット上にあふれるフリー素材を自由に《グリフ王国》にアップロードできるアプリだった。

 俺が希望していたものだ。


 ラナが人形のようになるのは、シナリオからはずれたからではない、ラナが楽しめることが《グリフ王国》の世界に無いからだ。そう俺は確信かくしんしている。


退屈たいくつなんだ、ラナは《グリフ王国》の世界が』


 早速、コンピュータプログラミングを勉強することにした。


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