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VRマシン・グリフ王国への道  作者: ai56go
変化するラナ
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ラナの居ない現実

 よいくち、帰りの電車内。

 徹夜明てつやあけのからだのまま一日働き、やっと帰れる。気力をしぼり電車にられる。


 考えてみれば、つまらない日常生活のなか、ラナのことだけを考え暮らしてきた。

 ラナの笑顔、ラナの優しさ、ラナの温もり。

 ラナに会えることを生きがいに暮らしてきた。


 だれかに裏切られたような怒りをおぼえ、怒りの矛先ほこさきを探す。


 いや『ラナはゲームのキャラクターなんだ』。そんな当たり前のこと今更いまさら考えることでもない。

 不条理ふじょうりな怒りを否定する。


 ラナとどんなにしたしくなったところで、ゲームのキャラクターなんだ、心がかよい合うことなどないんだ。

 俺を残し人形のようになったラナ。俺のいる世界には、親友とか、仲間とか、そう呼べる人が居ないんだと今更いまさらながらさみしさが一段と増す。


 早く帰ってたいという欲求のなか、ほぼ無自覚むじかくに、そんなつまらない自問自答を繰り返していた。



 気力でアパートに着くと、スーツを脱ぎ捨て、倒れるかのようにベットにうつ伏せになり、そのまま眠った。


  -----


 俺の趣味は、ゲームとアニメくらい。わかいときのような情熱は無い、単に惰性だせいで趣味にしていた気がする。

 しかし、今は《グリフ王国》がある、ラナが居る。《グリフ王国》の出来事を思い出し、俺の気持ちをブログに書く、そしてそのブログが人気になった。今までに無かったはなやいだ気分だった。

 ……つい最近までは。


 今では、それが悩みのタネとなっている。ブログに書くことが思いつかない。


 結局、何もしていない。

 約束していた《ホブゴブリンの盾》の性能せいのうも調べてない。

 それ以上に、あんなみじめな出来事を、いくら顔を出してないとは言えブログに書くのはいやだ。


 ラナの態度がおかしい、あれじゃぁちっとも楽しくない。

 なんで、店員キャラが無愛想ぶあいそうになるんだ?客が買う気になるようなセールストークしないんだ?

 そんなことくらいしか思いつかない。書いてて愚痴ぐちになる。《グリフ王国》の批判ひはんになる。

 何度となく書きなおした。


 《IgC》が人形のようになるといった話題を書き、今はその確認かくにんと、アントレアが言っていた武道大会が本当にあるのか調べている。まだ《魔物の洞窟》は攻略してない。《ホブゴブリンの盾》の性能は今度調べる。そんなことをブログに書いた。

 文章が言い訳いいわけぽくなって書いてて楽しくない。



 数日後のこと。

 《グリフロード》運営会社が、かねてより計画していた残虐ざんぎゃくシーンの無いシナリオを完成させた。


 早速インターネットで確認かくにん


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 前作《グリフ王国》に続き、《グリフロード》に新しい二つのシナリオが登場しました。


『家族で宇宙開拓かいたく

 時は4500年、人類は繁栄はんえいきわめ、多くの惑星へとうつんでいた。

 あなた(プレーヤー)とパートナー《IgC》は、銀河の外れ、小さな星に近づきコールドスリープから目覚める。

 この星を開拓して食料を生産するためだ。大きなビジネスチャンスをつかむため、あなたとパートナー《IgC》親子で手をとり未知なるこの星におとずれた。


 この星の近くにはほかの星がない、宇宙の孤島ことう。探査もほとんど行われていない。

 何が居るかからない、何があるかからない、未知の星。


 パートナー《IgC》とその仲間と共に、この星の開拓かいたくと新しい惑星の発見・探索たんさくを繰り広げるロールプレイング型開拓シミュレーション。


 ※昆虫の形をした敵を電子ビーム等で攻撃するシーンがありますが、流血や部位損傷ぶいそんしょうの表現はありません。


  -----


『社会人サクセスストーリー』

 あなた(プレーヤー)は一介いっかいのサラリーマン。それに引き換えパートナー《IgC》は大企業の御令嬢ごれいじょう御曹司おんぞうし)。

 二人は、同じ高校に通い、子供時代を一緒に過ごした幼馴染。


 何気なにげに入社したあなたの会社が、なんと、パートナー《IgC》の会社だった。その上、こともあろうか上司じょうしはパートナー《IgC》。

 何事なにごとにもやる気がとぼしいあなた、やることなすこと中途半端。万事ばんじ一番じゃなければ気が済まないパートナー《IgC》、全てが完璧。

 そんな二人が新しいビジネスを奪い合う羽目はめに。のがれられない運命。

 あなたとパートナー《IgC》は、あら頂点ちょうてんをめざす。

 しかしには多くの敵(こいがたき)が?!


 ラブコメ風サクセスストーリー。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 世論せろんを意識して、ほのぼのとしたシナリオにしたのだろうが、それでも家族とか、社会人とか、ゲームのタイトル名としてはどうかと思う単語に違和感をおぼえる。学園とか、少年とか、ふさわしい単語が思いつかなかったのだろうか?。十八歳未満のプレーを禁止しているせいなのか?


 《グリフ王国》は爆発的なヒットを飛ばしたが、人気に比例ひれいするかのように批判ひはんの声も多い、とくに剣での戦闘が凶悪犯罪を助長じょちょうしているとサービス開始当初とうしょから問題視もんだいしされ続けてきた。

 たしかに《グリフ王国》愛好家のブログでも、戦闘が苦手という意見をそこそこ目にする。俺もその一人だ。

 ディスプレイに映った敵キャラをマウスでクリックしたり、ディスプレイ下段げだんの魔法アイコンを選び、目まぐるしくはなやかにいろどられたテクスチャーをながめながら敵と戦うのは面白いが、魔物とはいえ、コンピュータの演算えんざんとはいえ、自分の手で相手を殺すのは、俺にはいていない。


 ほのぼのとした雰囲気をアピールしつつ、リアル過ぎる《グリフ王国》の反省点をまえ、よりゲームらしく非現実なシナリオにしたことをアピールしているのだろうが、やはり、このタイトル名はどうかと思う。


 それでも、あらすじを読むとまあまあ楽しそうにも思える。

 なにより残虐ざんぎゃくシーンがないというこのシナリオの方が俺には向いているのかもしれない。


 しかし、新しい二つのシナリオは《グリフ王国》とは別物べつもの。新しくパートナー《IgC》を作成してプレーしないといけない。

『新しいシナリオではラナに会えない』

 ……。


『多くの敵(こいがたき)? 《社会人サクセスストーリー》はハーレムものかぁ』

 興味が湧くが、そこにはラナがいない。


 《グリフ王国》は魔物と戦うシナリオだ。ラナと楽しく暮らすようには作られていない。


 ……考えがまとまらない。

 まあ、あせって決める必要もない、次の《グリフロード》の予約日までには、まだ日にちがある。それまでに決めればいい。


  -----


 忙しい……、いや忙しいと感じる日々がだらだらと過ぎていく。


 仕事に追われる合間あいま合間あいま

 寝ているときも、起きているときもラナの事しか考えられない。


 初めて出会った日のラナの笑顔。

 城郭都市じょうかくとしで過ごしたラナの笑顔。

 アンナを取り返して一緒に喜ぶラナ。

 ホブゴブリンを倒し俺をめるラナ。


 嬉しかったこと、楽しかったこと、思い出。


 今は、《魔物の洞窟》に行かずにどうやってラナを元気づけるか、そればかり考えている。


 ラナと湖畔こはんで暮らしたい。アンナ達と農園で楽しく過ごしたい。そんなことばかり考えてしまう。



 一ヶ月以上ブログを更新していない。さすがになにか書かないとマズい。せっかくPVページビュー数が増えたのに、このままだと誰も見ないプログに戻ってしまう。


 かと言って愚痴ぐちのようなブログを書いても意味がないだろう。なにより俺自身が面白くない。


 あたまなやます。


 がむしゃらに楽しんできた《グリフ王国》だが、ゲームとしての特徴をつかんできた。なにか解決策がないか考える。

 考えてみれば、ラナは冒険の事以外にも、新しいことには興味をしめす。

 こんなことをしたいと考えながらログインすれば、ある程度の気持ちは《グリフ王国》の世界に持ち込める。

 《グリフ王国》の世界だとどうしても思考力が低下する。現実世界に戻ってから気づくことが多々たたある。

 《グリフ王国》の世界に居ると、どうしても行き当たりばったりの行動になってしまう。


 できるかどうかわからないが、《グリフ王国》の世界でいろいろやってみようと思う。

 考えた挙句あげく結論けつろんだ。


 湖にボートを浮かべよう。

 釣りをしよう。

 ペットを飼ってもいい。大きな犬。ラナが犬とたわむれる姿をながめるのもいいかもしれない。

 《アントレア・シティ》の周りには魔物が居ないんだ、アンナとセシルを呼んで、四人で暮らしてもいい。(どうやってさそおうか?)

 アンナとボール遊びをしてもいい。

 四人でどこかキャンプに行ってもいい。キャンプファイヤーをしよう。

 そうだ、甘いものを食べよう。アイスクリームを食べよう。ケーキを食べよう。(甘いものとかあるのだろうか?)


 俺は、夢のようなことを考え、ラナと楽しく暮らす空想をブログに書いた。本当にそんなことができるのだろうか?と感じながらもやりたいことを書いたブログに書いた。そんなことしか書くことがないのだ。


 考えてみると《グリフ王国》の世界で見たことがない物が多いことに、あらめて気づく。



 たんにブログに書く内容が欲しくて、思いつくままに書いた。

 根拠こんきょなど無い、自分自身半信半疑はんしんはんぎだ。

 それでも、何ができて、何ができないか、やってみる価値はある。


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