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VRマシン・グリフ王国への道  作者: ai56go
変化するラナ
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悪夢じゃない、それが現実

 ピッピッピッと電子音が鳴る。

 『聞き覚えのある音』と気付き、『ハッ』と目を開けた。

 目の前には照明しょうめいの落とされた薄暗い白い天井が見えた。

 秋葉原グリフロードビルのリクライニングシートの上、……だと気づいた。


 俺はすべてを思い出している。

『なんでこんな事に? いや、知っていて今の状況を選んだのだ。……無理なのか!』

 無念むねんさがみ上げてくる。


『最悪だ……』



 リクライニングシートでジッとしたまま後悔こうかいしている俺を心配して、スタッフがドア開ける。

 スタッフと目が合い何も言わずリクライニングシートから降り、休憩室の方へと歩いた。


 歯がゆい気持ちで一杯だ。


 俺は知っていた。

 ラナが人形のようになることを、ログインする前から知っていた。


  -----


 二ヶ月ほど前になる。

 そう、《グリフ王国》の世界で、明日アントレアが帰ってくる、明日から《魔物の洞窟》を攻略するという夜。俺はログアウトしていた。

 次の予約日はやはり二ヶ月待たないといけない。もどかしい気持ちで平凡な現実を送っていた。



『伸びないなぁ』

 自宅のパソコンの前で伸びない俺のブログのPVページビュー数をにらみ、ため息をつく。

 週に一、二度は新しい記事を書いているのだが、一桁ひとけた二桁ふたけたのPV数がならぶ。


 『グリフ王国』で検索すると、

 当然、俺のブログが検索結果上位じょういあらわれることなどなかった。

 ガッカリはするが当然とうぜんだと納得なっとくもする。


 気を取り直して、《グリフ王国》での出来事できごとをブログに書く。


 アンナを助けに神殿に入ろうか、どうしようか、本気ほんきで悩んだこと。

 アンナを助け出し、そして、ラナ達と本当ほんとうに喜んだこと、嬉しくて涙が出たこと。

 その出来事を今でも大事に思っていること。


 恥ずかしもなくブログに書いた。

 底辺だとか、ゲーム相手にキモいとか思われてもいい、俺の素直すなおな気持ちだ。

 (顔も名前も出していないブログなのだから)


 そして、やはりラナが一番大事だと思う気持ちから、アンナとセシルと別れた。

 段々と強い魔物と戦わないといけなくなる。三人同時に守れる自信がない。なにより二人は農園を再建する方が幸せに暮らせるはずだ。ゲームのキャラだと分かってはいるがアンナもセシルも幸せになってほしい。


 ホブゴブリンと戦った出来事をブログに書く。

 《アントレア・シティ》に向かう道中、ゴブリンの大群に待ち伏せされホブゴブリンに一騎討ちの戦いをいどまれた。紙一重かみひとえでホブゴブリンの剣をける。体中からだじゅうの血液が沸騰ふっとうしたかのように俺は興奮した。なかなかすきを見せない《ホブゴブリンの盾》にはまいったが、わずかなチャンスを見逃さず俺はホブゴブリンに勝った。この戦いで俺自身の強さを知った。オークなんかに負ける気がしない。次の《魔物の洞窟》攻略が楽しみだ。


 そんなことを書いた。


 その程度のブログだった。

 のだが、翌日、思った以上の反響はんきょうにビックリしてしまった。


 俺の気持ち云々(うんぬん)ではなく、読書は、《ホブゴブリンの盾》に興味をしめした。

 俺は、ピピ(精霊の力ビジュアル)を発見したことをすごい事のように書いていたが、それは神殿の三階(サキュバスの部屋)にはいれば高い確率で手にれられる一般的なアイテムだということを、返事欄へんじらんの書き込みで知った。

 返事欄にピピを連れて冒険をしているプレーヤーが書き込んでいるが、今のところ、ピピには能力のうりょく見当みあたらず、ただのマスコットらしいと知った。


 そんなことより《アントレア・シティ》へ向かう旅路で、ホブゴブリンと出会ったことに読者はおどろいていた。

 見知みしらぬ読者と返事欄へんじらんを使い、やり取りしているうちに、本来、森の奥深くで攻略するはずの《ホブゴブリンのとりで》を攻略せずに、《遠征隊》でサキュバスを追い払えば、発生するイベントであろうと見当けんとうをつけ、見知らぬ読者と納得なっとくした。そして《ホブゴブリンの盾》はまだ誰も手に入れていない、 俺だけが手に入れたアイテムだと知った。


 返事欄には、まだ《ホブゴブリンのとりで》を発見していないプレーヤーが、俺がった作戦を真似まねたい、詳しく知りたいという書き込みが多く目立つ。


 《ホブゴブリンの盾》の性能せいのうが知りたいという書き込みも目立つ。が、手に入れてから魔物とまだ戦っていない。今度調べると書き込み約束した。

 他にも、いろいろと質問が書き込まれ、それに答えた。

 返事欄を使って読者同士が会話をしたりもしている。


 PVページビュー数と、返事欄の書き込みがうなぎ登りに増え、いつしか『グリフロード』で検索すれば、検索結果のトップページに俺のブログが表示されるほど有名になった。


 《グリフロード》のおかけで、現実世界でも有名人になった気分だ。まあ、俺のブログを見る人が増え、読者にじり会話しているだけだが、それでも有名人になったような気分だ、今までの生活にないはなやいだ気分だ。


 魔物を倒し、ラナと喜び、仲間とわいわいがやがやとさわぐ、《グリフ王国》は実に爽快そうかいだ。ただなんを言えば戦闘シーンがリアル過ぎることだろうか。


 次にログインすればアントレアが帰ってくる、《魔物の洞窟》の攻略が始まる。《ホブゴブリンの盾》の性能もたしかめられる。またブログに書き込む話題が増える。次の予約日が待ち遠しい。


 ウキウキした気持ちでいっぱいだった。

 ブログの事も、ラナとの冒険の事も、期待で胸が一杯だった。


 それが、今《グリフロード》からログアウトされ最悪な気持ちでいる。


 きっかけは十二時間ほど前のことだった。そう、昨日の昼の三時頃。


 日曜日ということもあって、昼過ぎまで布団ふとんでゴロゴロと過ごしていた。朝食をねた食事をとり、パソコンの電源を入れた。


 俺のブログが検索結果のトップページにあり、ほくそんでいたのかもしれない。

 そんな俺の目に、『グリフ王国はクソゲーだ』というタイトルがうつる。


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