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VRマシン・グリフ王国への道  作者: ai56go
変化するラナ
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新しい町へ

 アンナとセシルが見送るなか、木こり小屋をあとにした。

 今生こんしょうの別れかのようにアンナは悲しむが、ラナは、

「馬車で十日程度の場所に行くだけじゃない、その気になれば、いつだって会えるわ」

 きしめる。


 少ない日用品にちようひんを大きなトランクにめ、城門へと向かった。

 ゴブリンをだますために買ったトランクがこんな形で役立つとは思わなかった。


 城門前には、二頭立ての幌馬車ほろばしゃが停車している、御者台ぎょしゃだいには、アントレアの姿が。

 手綱たづなを握るアントレア。

「必ず来てくれると信じていました。さあ、乗ってください」

 手を差し出し、俺達を幌馬車へと、引っ張り上げた。



 ゴトゴトと幌馬車に揺られながら、たわいも無い話をした。



 さしずめ話すことが無くなった。

退屈たいくつでしょうが、十日ほどの旅路たびじです。魔物は出ませんから慰安いあん旅行と思いゆっくりくつろいでください」

 無言になった車内へアントレアがそう言うと、また、無言のときが流れる。


 幌馬車に揺られながら後方の景色をぼんやりと眺める、何の変哲へんてつもない森の道の風景を。

 アンナとセシルが居ないとこんなに静かなのか。

 ラナとアンナがしゃべっている日常があたり前だと身にみついていた。



 日が暮れると、幌馬車をめ野宿をする。

 燻製肉くんせいにくとジャガイモでスープを作る。ラナは料理が得意だ。

 アントレアは美味しいと言いながら食べるが、木こり小屋で毎日のように食べていた俺には普通の味でしかない。いつも塩味なので飽きがくる。『……甘辛い物が食べたい』

 眠気ねむけおそわれる。


 「ご婦人ふじんと寝室をともにするのは、無作法ぶさほうですから」とアントレアは、道端にテントをる。

 アントレア一人、冷たい土の上に寝かせるのは申し訳ない、俺もテントで寝ることにした。

 ラナは幌馬車の中で寝た。


 変化のとぼしい、長閑のどかな八日間であった。


 変わった事といえば、俺が馬車をあやつれるようになったことだろうか。

 夜の警備と、幌馬車の運転は三人が交代ですることに決め、道中どうちゅうなんなく進んだ。


  -----


 夜の警備。アントレアは一人で、焚き火のばんをしている。

「アントレアさん変わります」

「あ、もう月があんな位置に」

 丸い月が西の空の高い位置にある。

 アントレアの横に腰掛ける。

「あとどれくらいかなぁ?」

「今日と明日、野宿すれば町につきます」


 唐突とうとつに、気になっていたことを聞いた。

「ジュリオたちのバーティーなんだけど、リーダーって、アントレアさんじゃないのか?」

 驚くこと無く、

「……はい。隠すつもりはなかったのですが、あなたを見たとき、直感が走りまして……、『魔王を倒せる勇者』だと」

「……」

「衝動的にロベルトにパーティーをまかせて、私一人コウヘイさん達のパーティーに加わったのですが。 今でも私の目に狂いはなかったと確信しています」

 自身に満ちた顔を見せる。

『いったい、俺のどこにそんな力があるのだろうか? ラナもアントレアも、そしてセシルまでもが俺をおだてる』

 それとは別に、もう一つ気がかりだったことがある。


「なら、ロベルトに『指導者に近づくな』って言ってのもアントレアさんだよな」

 意地悪いじわるな質問ではあるが、はっきり聞いておきたいことでもある。

 しばしのをおき、

「幹部クラスの魔物があの神殿に居たのなら、間違いなく死闘になったでしょう。私があの遠征隊に参加したのは、強い冒険者を見つけるためです。 私にはやるべきことがあります。一時の感情に左右されては事はげられません。……こう言う考え方はお嫌いですか?」

 平然へいぜんと答えた。


「……わかんないや」


「私は明日に備えて、一休みさせてもらいます」

 微笑ほほえみを残し、アントレアはテントの中に入っていく。


 一人になった俺は、焚き火のほのおを眺めながら華々(はなばな)しい未来に思いをせた。

『もし、世界が救えるのなら救ってみたい』

 そんなことを考えた。

 英雄として町人からたたえられる人生も悪くはない。


 まだ見ぬ《魔物の洞窟》、魔王との決戦、そして平和な国。

『今日は眠れそうにないや』

 幾分いくぶんか気持ちが高ぶっている。

 このまま、夜明けまで起きていたい気分だ。


 ラナにわること無く見張りを続けた。



 香ばしい燻製くんせい肉の焼けるにおいが鼻をくすぐる。

 そらが白みはじめた頃からウトウトとして、少し寝てしまったようだ。

「おはよう。コウヘイ。もう、起こしてくれたらよかったのに」

 焚き火で燻製肉を焼いているラナが感謝するようにやさしく話しかけてきた。



 朝は、ラナが手綱たづなにぎり、

 昼はアントレア、そして夜にかけて俺が幌馬車の手綱たづなを握った。


 俺のあやつる馬は快調かいちょうける。最初のように暴れたり、止まったりしなくなった。運転しながら景色を楽しむ余裕さえできた。


 森の中にゴブリンのかげがチラリ。

「ゴブリンが居たぞ」

 ほろの内からアントレアが顔を出す。

「変ですね。このあたりにはゴブリンは居ないはずですが? まあ、数が多いですからはぐれ者のゴブリンが放浪ほうろうしているのでしょう。きっと」


 そのゴブリンが俺達を追いかけてくる。

「仲間にでもなりたいのか?」

「ご冗談を。ゴブリンが冒険者のパーティーにくわわるなど、ありえませんよ」

 アントレアが笑う。


 厄介事やっかいごとはゴメンだと馬をかせ、追ってくるゴブリンを引き離す。

 しばらく進むと、今度は別のゴブリンが道の真ん中に立っている。

「今度は、自殺志願か?」

 度重たびかさなるゴブリンの出没にアントレアもまゆをひそめる。

「馬を傷つけられては、困りますから一旦いったん止まってください」


 幌馬車を停めた。

 幌馬車から降り、『近づけば逃げるだろう』と安易あんいな考えで、威嚇いかくをしながら道の真ん中に立っているゴブリンに近寄る。

 当然、用心ようじんかさない。


 そのゴブリンが雄叫おたけびを上げた。


 森の中から、多くのガサつきが起こり、何かが近づいてくる。

 続々と現れるゴブリン、道の遠く先までゴブリンが現れ、俺達を囲んだ。


『何匹居るんだ?』

 何十匹っていうものではない、三百匹ほどのゴブリンに囲まれてしまった。

 森の中にもゴブリンの姿が見える。

 逃げ場がない。


「コウヘイさん馬車に戻ってください」

 ゴブリンが、せまってくる。

「突っ切るのか?」

「さすがに、この数では、馬が持ちません」

 戦うにしても、この数だ。いくら弱いと言っても、一斉に襲われればふせぎようがない。


『ピピ?』

 アントレアのかたに《ビジュアル》が居る。


 近づいてきたゴブリンが一斉に飛びかかって来た。

 俺は身構みがまえた。が、ゴブリンは透明な何かにぶつかり、顔を張り付かせ、透明な平面へいめんをズルズルと滑り落ちる。


「真空を操る《ビジュアル》です」

 キョトンとした俺に、アントレアが得意げな顔を見せた。


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