表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/68

不満

 瓦礫がれきの撤去を初めて五日が過ぎた。

 八割ほど進んだといってもまだまだ瓦礫がれきは多い、それに今まで以上にオークがく手をはばむ。

「あそこ」

 ラナの一言で、兵が、最前線に居る警護けいごの冒険者と瓦礫がれきを除く冒険者に大声を掛ける。

「おーい、一度引け」

 瓦礫を除いていた俺は、その声に反応して、後方にがった。


 ラナが指差した屋根を、《稲妻魔法》でアンナが攻撃する。

 姿は見えないが、アンナが攻撃した屋根からガタガタと音をたて反対側の道にドスンと大きな何かが落ちる物音が聞こえた。


「いやぁ、ラナさんのおかげで作業がはかどります」

 兵は、オークを発見したラナに感謝の気持ちを伝える。

「いいえ、私よりアンナちゃんが凄いのよ。こんなに離れていても《稲妻魔法》がとどくんだから」

 警護の兵の中にまじわり、ラナ、アンナ、セシルが、オークを見つけるにんいていた。

 ラナの表情は、なんとも生き生きしている。


『なんで、俺を呼ばないんだ』

 戦闘にならなくてもオークを相手にしているんだ、同じパーティーなんだから俺がラナ達を守るのがすじじゃないのか?

 そんな鬱憤うっぷんが溜まってくる。


 土木作業をしながら、離れたラナ達の様子を見ていることしか俺にはできない。

 他の冒険者に混じり土木作業をする俺のすぐ前には、警護の冒険者が瓦礫の上に立ちあやしいとこは無いかと探索たんさくしている。俺より十メートルほど後方に、ラナを含む兵が周りを警戒している。

 アンナは時折、警護の冒険者よりもさらに先の建物に向かって《稲妻魔法》を発している。オークが隠れていそうな場所をあらかじめつぶしているのだろう。


「ラナさん達には感謝しています。ケガの治療をお願いしているのに、その上、危険な警護の任までしてもらってるのですから」 

「危険なんて思わないわ、だって兵隊さんが守ってくてるんですから、安心だわ」

 明るいラナの声。

 俺の存在意義を否定するような発言に聞こえる。


 兵の生き生きとした話し声が時折ときおり聞こえてくる。

「ラナさんなら、いくらでも仕事があるはずですが、」

「え、軍が発行する冒険者資格持ってないのですか?」

 そんな言葉が、耳に入ってくる。


 ラナは、上級の治癒魔法が使える。

 アンナの魔法は、魔物にダメージは与えられないが、一瞬だけ完全に身動きが取れなく出来できる。

 俺が、ラナやアンナを守っていたのではなく、俺と居るからラナとアンナの才能が生かせなかったのかもしれない。

「どうしたのですか?かない顔をして」

「なあー、ラナとアンナどう思う?」

「どうとは?」

 よく考えていなかった。『俺は何が聞きたいんだ?』「……。他の魔道士と比べて実力がうえかってことなんだけど」

「ああ、そういうことですか。ラナさんは間違いなく上級の魔道士ですし、アンナさんはまだ幼いから何とも言えませんが才能は十分あります」

「俺なんかとパーティーを組んでるより、他の冒険者……、んー、例えばこの前の《大風のマント》を使ってたジュリオみたいなすごいパーティーに入った方がいと思うか?」

「何をいいますか。 コウヘイさんは恐らくですがジュリオよりも優秀ですよ」

 真面目な顔でそう言うアントレアに、一瞬思考が停止したが、

『女々しく相談したところで始まらない』

「アントレアさんに相談してよかった」

 とまじめに受け取った素振そぶりで笑い、気持ちを切り替え、作業を続けた。



 その夜。

 しゅわしゅわ酒を飲みながら、ラナが上機嫌でいる。

「労働のあとの一杯はたまらないわね」


「それはようございましたね」

 不機嫌にしゅわしゅわ酒をがぶ飲みする俺。


「なに怒ってんの?」

 ラナと兵が昼間、楽しそうに話してたのがなんとも腹立たしい。が口には出さない。

「いや別に」

 そっぽを向く。

「コウヘイさんは、昼間ラナさん達が兵となごやかな雰囲気だったのが不服ふふくみたいですよ」

 そうバラすアントレアを俺はにらんだが、アントレアは、

「わだかまりは早めに取り除いた方がいですよ」

 と笑顔を見せる。


「何も兵となんかなごんでいないわよ」

「いや、和んでた。『兵の皆さんが守ってくれるから安心です』とか嬉しそうに言ってただろ」

「そんなこと言ってたかしら私?」

 しらばくれてるのか、ラナはとぼけた顔をする。腹立はらだたしい。

「間違いなく、言ってた!」


 ラナは怒り出す。

「言ったかどうかは忘れたけど、コウヘイ、社交辞令しゃこうじれいって言葉しらないの?私の方からお願いして兵隊さんと一緒にいるんだからお世辞せじの一つや二つは言うでしょ」

救護きゅうご班なんだから、軍隊の魔道士と一緒にテントに居ればいいだろ。わざわざ、警護の兵と一緒にいなくても」

「コウヘイは、あのテントの中を知らないからそんな事が言えるのよ。とてもれたもんじゃぁないわよ。ねえ、セシルもアンナちゃんもそう思うでしょ」

「はい、私もあそこは、ちょっと無理ですね」

 セシルはそう言い、アンナは無言で落ち込んだ顔をした。


「どういうことだ?」


「まず、テントがせまいの、その狭いテントで六人の魔道士が顔を付きあわせて向かいあって座ってるのよ。その時点で異様な光景でしょ。 その上、無表情で何もしゃべらないのよ。話しかけると『勤務中は私語禁止です』っていうし、私とアンナちゃんがしゃべっていてもしかるわけでもなく、聞いている様子もなく何考えてるかまったくわからないわ」

「うん。あのおじさん達怖い」

物静ものしずかなのは嫌いではないのですが、あの雰囲気は物静かとも違いますね」

「セシルなんか『私は、ラナさんの警護ですから、表で警備しています』ってテントの外に出て行っちゃうのよ。こんなとこまでオークが来るわけがないのによ」

 その光景を見てないから何とも言えないが、三人ともいやがってるのだから、よほど異様な光景なのだろう。

 黙り込むしかない俺に、ラナが話を続ける。

「それで、気分転換に三人で散歩してたら、兵に『ラナさん達は救護きゅうごの任務中ですからテントで休んでいて下さい』って、散歩もさせてくれないの。それで、私の目がいのと、アンナちゃんの魔法の射程範囲が広いのを理由に警護けいごの兵にぜてもらってんだから」

 だから、『兵に愛想を振りまいていた』というラナの言い分いいぶんも分かる。

 納得なっとくはできるが何ともムシャクシャする。俺はしゅわしゅわ酒を一気飲みした。


「わだかまりは取れたようですね。 ここ数日の単純労働で気が滅入めいっているのでしょう、気分転換になるかどうか分かりませんが《魔物の洞窟どうくつ》の話をしようと思うのですが、いかかです?」

「いいわね」

 ラナは興味を示す。


 《魔物の洞窟》は、城から馬車で十日ほど行った場所にあるというのは前にお話ししたと思います。

 その場所は、石炭の採掘を生業なりわいにしている小さな村があるだけの辺境へんきょうでした、城から遠く、運送費が高く付くので大規模な採掘は行われていませんでした。ある日鉱夫こうふが、ドワーフが掘ったとみられる通路を発見したのです。かなり古いもののようでドワーフの姿はなく、迷路のように入り組んだ通路だけが存在していました。

 その通路を進んで見ると微量びりょうですが、どうぎんなどの鉱石こうせきを発見したようです。


 村に戻り、鉱夫たちを集め、喜んで坑道こうどうを下へ下へと掘り進めていたのですが、ある日、岩を砕いたツルハシが、新しい空間を発見したのです。その空間はとても広く、村がすっぽり入るくらいの広さで天井はビックリするくらい高く、そして何よりも驚いたのが光苔ひかりこけで洞窟が満たされてあり、満月の夜よりも周りは明るかったそうです。

 まるで人工的に作られたドームのような構造だと思いながらも、鉱夫たちはその空間に入ろうとしたそうですが、得体えたいの知れない動く物体に気づき、身を隠したそうです。


 動く物体は、ゴブリンやオークでした。

 ツルハシでドームを広げ、土砂を運び、光苔ひかりこけ栽培さいばいする作業をしていたということでした。

 そこは、まぎれもなく魔物軍の重要拠点として整備されていたのです。

 口が乾いたのかアントレアは話を中断して、しゅわしゅわ酒をゴクリと飲む。


 興味を示してラナが聞く。

「私達がそのドームに気付いたことは、魔物は知ってるの?」

「はい、幾度いくどとなく多くの冒険者たちが死闘を繰り広げていますから、今では、ドームの半分は人間側の領地になっています」

「軍隊は?」

「軍は他の戦地が忙しく手が回らないと言い、さして重要な土地ではないから、奪われたら奪い返すと言っています」


 ふと頭に『何でアントレアはそんなに詳しいんだろうか?』そんなことが、浮かんだ。

 ウトウトと眠たくなり、目をこする。うさらしにガブ飲みしたせいだろうか?


 いつものことだがアンナは先に寝ている。

 なんだか毛布が恋しい。


「すみません、長話ながばなししてしまって。 明日は神殿にたどり着くはずです。いざ戦いになったときに寝不足で力がでないと困りますから、今日はもう寝ましょうか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ