表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/68

出立(しゅったつ)

 周りの冒険者の多くが、俺達をジロジロと見てくる。

 あまりにも場違ばちがいに映るのだろう。


 豪華ごうかな装備をまとう冒険者達のなかで、俺が身に着けているのは布の服だ。ラナとアンナが着ている《微風のローブ》は底辺の防具。魔導士が見ればそれが分かるに違いない。

 早朝、開門と同時に城門前広場に来た俺は、ここでも会堂かいどうで感じた他の冒険者の冷ややかな感情を感じた。



「あなたがたは、もうパーティーはお決まりですか?」

 不意に声をかけてきた見知らぬ男性に目線が向く。

 細長の体型で、長い髪、衣装いしょうはなやか。剣はたずさえているが冒険者というより貴族のようなよそおいだった。

 セシルの知り合いなのかもしれない。そんな雰囲気がする。

「知り合い?」

 俺の問いかけにセシルは知らないと首を横にった。


 俺達がキョトンとした顔で、その男性を凝視ぎょうししていると、

「これは、唐突とうとつな振る舞いで失礼しました。私は冒険者のアントレアと申します」

 軽く会釈えしゃくをしてくる。アントレアはさらに言葉を重ねる。

「お見受けしたところ、四名しかおられないようですが、パーティーはまだでしょうか?」

「パーティー? メンバーはこの四人だけで他はいないけど?」

 アントレアはしばらく黙った後、おだやかな口調で話しだす。

「通常、オーク一匹いっぴきに、冒険者は最低でも三人で戦いをいどみます。しかし、今回の遠征えんせいではオークの群と戦うわけですから、オークと戦った経験のある冒険者は、オークに囲まれないようにパーティの人数を増やそうと、同じレベルの冒険者を探して共闘きょうとうを申し込んでいるのです。もし、よかったら私を貴方方あなたがたのパーティに加えてはもらえませんか?」

「アントレアさん一人?」

「仲間がいたのですが、今は、わけあって別行動を取っています」

 俺は、ラナをみた。

「いいんじゃない」

 セシルをみた。

「かまいません」

 アンナは、

「いいよ」と明るくこたえた。


 アントレアが差し出す右手に気づき、俺はアントレアと握手あくしゅを交わした。

「それにしても立派な服だな」

「これですか、ただ装飾そうしょくが派手なだけです」

「精霊の力とかは?」

「いいえまったく」

 アントレアは笑う。

 俺には《精霊の力》がさっぱり分からない。ラナなら分かる。

「そうなのか?」

「んーー、そうね。精霊の力を感じないわね」

 アントレアの服をマジマジと見ながら、ラナは答えた。


「でも、なんで俺達に声を掛けだんだ。強そうな冒険者なら他にいくらでもいるだろ?」

「募集のとき、私の横であなた達が申し込みをしてたのですが、その時の実績じっせきらんにゴブリン討伐数、月間五百匹以上と書いていたのが印象深く記憶に残っていました。ゴブリンは、けして強くはない魔物ですが、月間五百匹というのは尋常じんじょうではありません、おそらく前代未聞ぜんだいみもんの数でしょう」

 想像を膨らませてアントレアは聞いてくる。

 弱い冒険者はゴブリンの餌食えじきになり、強い冒険者なら、ゴブリンは近づきません。

 ゴブリンを探すのも一苦労しますし、先にゴブリンに見つからないように気配けはいを消すのも一苦労します。

 索敵能力さくてきのうりょくけているのですか?

 それとも広範囲に有効な魔法をお持ちとか、

 飛ぶように素早い動きができるとか?

 どのような能力をお持ちでしょうか?

 興味津々きょうみしんしんに身を乗り出す。


 アントレアの気の入れように俺は苦笑いを浮かべながらも、素直に、

「んーー、貴婦人きふじん散歩さんぽにみせかけたらゴブリンをだませた」と答え、

 高価そうなトランクを持って森の近くを歩いていたら、ゴブリンの方から寄ってきたことを話した。


 キョトンとした顔で聞いていたアントレアは、

「なるほど、確かにゴブリンは倒すより、戦いに持ち込むまでの方が難しいですから」

 爽快そうかいに笑う。



 城門前広場に、ラッパの音がひびき、遠征隊の兵は規律きりつただしく整列する。

 町人の声援のなか、遠征隊は城外へと進行し始めた。

 間隔かんかくを広く開けた兵の縦列たてれつ平行へいこうして荷馬車が進み、冒険者は、思い思いにその列に付いて歩き出す。

 行進こうしんは徒歩である。一部の兵は馬に乗っているが、兵も冒険者も徒歩で出陣しゅつじんを始めた。



「城としては守りも必要ですから、あまり兵を出したくないとみえます。遠征隊に加わった城兵は、五十というところでしょう。あと、荷馬車は七十。御者ぎょしゃねた土工どこう飯炊めしたき(おばさん)などが合わせて百、そして冒険者四百ですね」

 辺りを見渡したアントレアは目測もくそくで遠征隊全体の規模を、口にした。


 ラナが興味を示す。

「アントレアって、軍のこと詳しそうね」

「詳しいとまでは言えませんが」

「いろいろと教えてもらえる?」

「ええ、私が教えられることでしたら」


 アントレアは憶測おくそくだと断って俺達に状況を説明する。

「遠征隊に加わっている五十人の城兵は、警護けいご監視かんしが任務のはずです。戦いには加わりません。オークと戦うのは、あくまで冒険者四百人です。 オークが城を攻めてきた時、千人の城兵が、城壁を守っても城壁が壊されたのですから、軍としては城兵は使わず冒険者四百人のお手並てな拝見はいけんといったところでしょう」

「今回の戦い、勝てそう?」

「どうでしょうか。 百二十匹のオークが無秩序むちつじょに居るだけなら勝算しょうさんは十分ありますが、攻城こうじょうの時のように我が身を犠牲ぎせいにしてまで命令に忠実なら厄介やっかいですね」


 ラナは思いつくままに、アントレアに質問する。

 アントレアは憶測を交えながら、答える。

 俺は、そんな二人の会話に耳を傾けていた。



 いさましく城門を出たものの、昼過ぎともなると、兵は、たずさえていた剣を荷馬車に置き、防具を外して楽な恰好かっこうになり仲間と無駄話むだばなしをしながら歩く、

 冒険者はもとから自由気ままに歩いている。

 厳格げんかくな姿勢で進行を続けているのは、隊長と騎乗の兵だけになっていた。


「お嬢ちゃん達」

 荷馬車に乗っている飯炊きのおばさんが手招てまねきする。

 それに気づいたアンナは、セシルの顔色を見る。

「うん。行っておいで」

 アンナは喜んで荷馬車に走り寄る。ラナも。

「ありがとう、おば様」

 ラナは、いつもとは違う可愛らしい声を出して、飯炊きのおばさんにお礼をいって荷馬車に乗せてもらった。


『ラナお前は歩けるだろ』心の中でそう叫ぶ。


「えらいね。お兄ちゃん、お姉ちゃんのお手伝いかい?」

「そうなの。私達が魔法で守ってあげないと、お兄ちゃんダメダメなの」

 馬車に乗ったラナは、でたらめな身のうえばなしで、おばさんとの会話をはずませていた。


「なんで、冒険者は馬車に乗せないんだ。帰りケガしていても歩いて帰らないといけないのか?」

 俺が率直そっちょくな気持ちを口にすると、アントレアはみを浮かべながら、

「冒険者はひまができると酒を飲むのですよ。それに、せまい馬車に大勢の冒険者が乗っていると間違いなくケンカを始めます」

 他の冒険者の事は町で見かけるくらいで実際に戦っているとこや素行そこうについては知らない。

「そういうものなのか?」

 他の冒険者を知り、自分の実力を知るためには今回はいい機会になるだろう。そんなことを考えている俺にアントレアは、

「帰りは、食材や材木が減りますし、必要とあらば、備品なども捨てて帰りますから全員乗せて帰れるだけの荷馬車はありますよ」

 軍はそのあたりをわきまえていて、帰りの心配はないと、付け加える。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ