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俺達の方針

 隊長からの説明が終わり、会堂かいどうから冒険者がゾロゾロと出て行く、その中に混ざり憂鬱ゆううつな気持ちで俺は表へと出た。

 そんな俺をラナは見つけ、俺の気持ちとは裏腹うらはらに明るく手を振っている。

 俺達は四人で、近くのカフェテラスに入り、隊長から聞いた内容を三人に話した。


 俺から話を聞いたラナは、

「と言うことは、私達が一匹のオークを倒さなくてもオーク六十匹さえやっつければ報酬がもらえるのね。私、断然だんぜんやる気が湧いてきたわ」

 ラナはそう言うとこに目敏めざとい。

「そうかも知れないけど、俺達も冒険者なんだから、勇敢ゆうかんに戦わないと」

 会堂での、他の冒険者が俺に向ける視線を知らないからラナはそう言えるのだ。あの冒険者の目は俺をさげすむ目だった。

 ラナが口にしたことを、他の冒険者は俺を見て思ったに違いない。

 しかし、卑怯ひきょうかも知れないが、そうすればラナやアンナを危険にさらさなくてくなる。俺一人が前面ぜんめんに出て、後ろでセシルにラナとアンナを守ってもらう作戦もあるかも知れない。そもそも、俺はオークと対等に戦えるのだろうか?


 いろいろと考えてしまう。


 俺が辛気臭しんきくさい顔でうつむき考え込んでいると、ラナは、

「なに暗い顔してるのよ。絶好のチャンスよ。もっと喜びましょ」

 目線をラナに移し問う。

「ゴブリンと同じ感覚でオークとも戦えるのか?」

「ゴブリンとは全然違うわよ。体格が冒険者の何倍もあるから、普通、一匹のオークに三人以上の冒険者が連携れんけいをとりながら戦うわね」


 ラナは、オークの特徴を挙げた。


 厚い皮膚は盾のように固い、

 振り下ろすこん棒は家をもこわし、

 傲慢ごうまんで攻撃的な性格の上、

 盾や弓矢が使いこなせる。

 聞くからに強そうだ。今までのゴブリンが雑魚だったと分かる。


 恐怖を感じながらも平然とした顔で、ラナに聞いてみる。

「まともにり合って勝てるのか?」

「コウヘイなら大丈夫よ」

 脳天気にそう答えるラナ。

 ラナが嘘を付いたことはないが信用していいものかどうかは、悩む。


 一匹のオークなら、もしかすれば俺でも倒せるのかも知れない。

 しかし……、再度ラナに聞いてみた。

「今回の任務は、百匹以上いるオークの群にいどむんだから、一匹のオークを倒すのとは勝手かってが違うだろ」

「そうよね。そこが問題なのよ。でも、元々群れないオークが群れてるってことは、凶悪きょうあくな指導者(まもの)が居るってことなの」

「凶悪な指導者(まもの)?」

「それもオークが束になってもかなわないくらい強いね」

「なにいってんだよ。そんな危ない場所行けるわけないだろ」

 今回の遠征隊の参加はキャンセルだ。

「大丈夫よ。指導者(まもの)がわざわざ冒険者の前に出てきたりしないわよ」

「なんで分かるんだよ」

「旧市街地が魔物の重要拠点じゅうようきょてんならいざ知らず、一時的なまり場にしているだけって話でしょ、だったら指導者(まもの)みずから冒険者の前に顔を出したりはしないわよ。指導者(まもの)にとってはオークなんてこまでしかないんだから、オークがればまた魔界から連れてこようと考えるのが魔物よ」

「そういうものなのか?」

「私が言いたいのは、力ずくじゃないとオークが他の魔物の言うことを聞いたり、れて冒険者と戦ったりしないってことが言いたかったの。それにオークは蛮勇ばんゆうかたまりみたいなものだから、少し怒らせれば我を忘れてオークの方から攻撃してきてくれるわよ。だから、オークを怒らせて、群から離せば十分勝てるわ」

 俺はうつむき、また考え込んだ。

『なら、俺がおとりとなればいい。群からオークを一匹おびき出し、安全な場所で待機しているラナ達の場所まで誘導さえできれば、《呪縛魔法》と《稲妻魔法》でオークの身動きを封じて、俺とセシルで仕留めることができる』

 そう頭の中で空想が膨らむ。案外うまくいくかも。


 黙りこむ俺を他所よそに、ラナは、

「セシルの鎧って立派よね。その鎧、オークと戦えるの?」

「はい。戦えると思います」

 ラナは、セシルの鎧を触りながら品定めする。

「これっていくらくらいしたの?」

「値段は分からないですが、母がおこっていましたから、父はかなりのお金を使ったみたいです」

 セシルの鎧は、堅い皮をなめして何層にも樹液で張り合わせた特注品。軽くて固くて丈夫じょうぶ、そのうえ各種かくしゅ精霊の力を宿やどしている。オークと十分戦える。

「たしかに、私達の所持金額すべて使っても買えそうにないわね。ところで剣はどうなの?」

「はい、確かにい剣なのですが、私には重すぎるようです。一刀いっとう振る度に剣に負けるというか、剣の惰性だせいで体が振り回され、どうしてもそのあとの防御が遅れてしまいます」

「剣も高価そうだけど、セシルには肉厚すぎるわね。だったら、剣はなんとかしましょ」

 セシルの剣を品定めするようにじっくりみていたラナは剣を返し、今度は俺の方を向く。


「コウヘイはどう?」

「おれ?俺はゴブリンと戦っている分にはこれで十分だけど、オークとなると……」

 正直分からない。

「コウヘイ逆立ちしてみて」

「はぁ?いきなりなんだよ」

「いいじゃない。ちょっと運動能力をみるだけだから」

 俺は言われるまま、道端に出て、逆立ちをしてみた。

『なんとも体が軽い』

「それで、片手になれる?」

 言われたとおり、逆立ちのまま片手で立った。

「宙返りしてみて」

 無茶な注文をするもんだ。少しためらったが、全身の感覚を信じ、片手で反動をつけて地面を跳ね上がる。ちゅうで一回転し、また片手で地面に立った。

『俺、こんなことができるのか?』

 自分でも知らなかった運動神経だ。

「はははは、コウヘイお猿さんみたいね」

 ラナは、アンナにそう話しかけ、二人で笑う。


 人通りは多くないが、人の目もある。よくよく考えたら俺は滑稽こっけいなことをしているのかもしれない。平静を装い起き上がり、手に付いた土を払って、三人の居る席に戻った。

「うん、コウヘイは今のままが一番いいと思うわ。変に武装してしまうとコウヘイの機敏きびんさがかせなくなるわ」

 力はあるがオークはゴブリンより動きが遅い、オークの攻撃は単調だから俺なら攻撃をかわしながら、戦えるとラナは言う。

「まずは、セシルの剣をなんとかしましょ。その次は、私とアンナちゃんの防具ね」

 そう段取りを決め、俺達は、装備が揃っている通りに向けて歩き出した。


 途中銀行に寄り、宝箱に入れてあった麻袋あさぶくろ十九袋すべてを取り出した。

 一袋六十G、合計千百四十G。俺達の全財産である。重さは水の入ったバケツと同じくらいだろうか、重いと言うラナの代わりに俺が持つことにした。


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