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冒険者の会合

 会堂正面扉しょうめんとびら前。

「コウヘイ、気合入れていくのよ。応援してるから」

 元気にラナに見送られ、会堂の中に入った。

 ラナが何を応援してるのか分からないが、俺は他の冒険者にじり、室内のはしの空いている席に着いた。

 いかつい剣士。

 知性を感じる魔術士。

 優雅ゆうがな装いの者。

 影を感じさせる者。

 いろいろなタイプの冒険者が集まっているが、皆それなりに冒険者の身だしなみをととのえている。

 布の服を着ているのは俺一人だけだった。武器も短剣だけしかない。肩身が狭い。

 ちんまり座っていると、

 いかにも上官じょうかんらしき人物が壇上だんじょうに姿を現す。

「冒険者の皆さん。 軍の募集に応えてくれたことに、感謝する」

 その人物は、今回の遠征隊の隊長を名乗り、今回の作戦を説明し始める。


 この会堂には、およそ八十人のリーダーかくの冒険者が集まっている。全員真剣に隊長の話を聞いている。まあ、自分たちの命が掛かっているんだ遊び半分で応募したやつなど居ないだろう。


 隊長の話が終わり、冒険者に問いかける。

「何か質問はないだろうか?」

 ある冒険者が質問を投げかける。

「オーク百二十匹っていうのは間違いないのか?」

「今も斥候せっこうが常に監視している。変化があれば随時ずいじ、皆さんに状況を知らせるだろう」


「もし、六十匹もオークが居なかったらどうなるんだ」

「その場合、オークから旧市街地を奪還だっかんすることで任務達成とする」


「逆に、百二十匹と言わず、多くの魔物が居て、手が付けられない状況だったらどうなるんだよ」

「軍は以前から監視を続けているからそういうことは考えにくいが、もし、その場合でも、オーク六十匹が任務達成の条件となる」

「冗談じゃないぞ。『手が付けられない状況』って言ってんだから、その場合は条件を変えないとおかしいだろ」

 数人の冒険者たちがヤジり始める。

「まあ、待て!」

 隊長は、両手で冒険者に静まるようにとジェスチャーしながら、ヤジる冒険者が静かになるのを気長きながに待った。

 そして、

「今回、途中退役は自由だ。手に負えないと感じた冒険者は好きな時に辞めてもらって構わない。 報酬を支払う条件はオーク討伐六十匹だから、一匹でも欠けた場合、報酬は一ゴールドも支払われない。が、倒したオークの宝石は倒した冒険者の物になる。その上、食事と野営地の準備は軍が行い、夜間の警備も兵にやらせる、当然無料だ。冒険者は、ひたすらオークを倒すことだけを考えればいいのだよ。ケガをすれば軍の治療が受けられる。 トータルで考えれば、けして悪い条件ではないはずだが」

 納得したのか、声を挙げようとする冒険者はない。しばらくの静寂せいじゃくが続く。


「もし、あともう少しで六十匹ってときに期間の三週間が過ぎた場合は?」

「その場合、遠征隊は引き上げるが、冒険者はそのまま駆除を続けてもらっても構わない。その場合、食事の準備や夜間の警備は、冒険者たちでやってもらうことになる。軍は視察兵を数名残して引き上げるが、任務を達成すれば、軍から報酬が支払われる」


「四百人からの冒険者集めて、報酬ほうしゅう一人四十Pは、少し気前が良すぎるんじゃぁないか?何か裏でもあるのか?」

「四ヶ月ほど前になるが城がオークに襲撃された、その出来事を目撃した冒険者も多いと思う。城を攻めてきた百二十匹程度のオークでは、我々の城はビクともせず、終始我々が優位であると思われた戦況だったが、ゴーレム一匹の出現で大きく状況が悪化し、城壁を破壊されてしまった。城壁が突破されたと多くの人が感じただろう。だがなぜか、あのときオークは進撃をめた。ゴーレムもどこかに行ってしまった。もし、あのあと、オークが城内に入り暴れていたら被害は拡大していただろう。それを考え、今回の報酬金額となったのだ」


 また、静寂せいじゃくのときが流れる。

 もう冒険者たちから質問が出ない。


 頭の中で、隊長の話をまとめる。

 不穏な動きを見せるオークを、なにか事件を起こす前に、先にたたいておこうというのが今回の依頼内容で、特にオークの殲滅せんめつは考えなくていい。自分の能力でオークと戦えばいい。軍がサポートできるのは三週間というだけで、そのまま残ってオーク狩りを続けてもいい。

 俺にとってはいことくめにした思えない。

 他の冒険者たちは何を考えているのだろうか?


報酬ほうしゅう四十Pって言うのはいいが、みんな同じ報酬額って言うのが納得いかんなぁ」

 隊長への質問というよりは、独り言のような発言だった。

「そうだな」と別の冒険者が相槌あいづちを打つ。

「何もしなくても報酬もらえるのはおかしいだろ」

 同調どうちょうする声が、会堂に漏れる。


 会堂に漏れる冒険者たちの愚痴ぐちに、隊長が答える。

「今回の募集は資格を問わなかったということで、さまざまな実力の冒険者がいるだろう。が、今回の任務は遠征隊全体でのチームプレイが欠かせないと考える。何かと冒険者はワンマンプレーに走りたがる。こうあせり思わぬトラブルになるやも知れない。今回は、協力し合って任務に当たってもらいたい」


 誰もめんと向かって隊長に異議いぎは言わないが、会堂のどこからともなく声が聞こえてくる。

「それなら、他のヤツにオーク倒させて、自分は逃げまわっていたっていいってことだろ」

「なんで実力も分からないヤツと共闘しないといけないんだ?」


 時折ときおり、他の冒険者の厳しい視線を感じる。

 これはラナにまかせなくてよかった。


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