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VRマシン・グリフ王国への道  作者: ai56go
グリフ王国
20/68

新調

「ノルマ六匹だろ」

「最低一日六匹よ。六匹狩ったらいいってわけじゃないでしょ」

 ラナの感情はわかりやすい、すぐに顔に出る。ラナはにらむように俺の目を見ている。

 最近、狩りも順調だし、木こり小屋の生活にもれた。しかし……、いや、だからなのだろう。最近ラナと意見が分かれるようになった。


 黙りこむ俺に、ラナは追い打ちをかける。なぐさめるような口調で、

「それにもう、爆弾もってないわよ。あれはたまたまだったの」

 俺が怖気おじけづいたと誤解しているようだ。

 以前、森の奥深くで、ゴブリンが投げた爆弾に、俺は当たり瀕死ひんしの重傷を負った。それまでは、ラナが森の奥深くに行くことをいやがり、俺が森の奥深くへとさそっていた。それが今では真逆になってしまった。

 俺は怖気おじけづいて森の奥深くに行きたがらないのではない。ラナやアンナが危ないと思うから森の奥深くに行きたくないだけだ。

 俺はムスッとした顔をしたが、口に出して言い訳がましく説明したところで誤解が解けるわけではないだろう。別の言い分いいぶんを探す。

「でも、宿暮らしめたから、生活はできるし、お金も貯まってきているだろ」

「生活出来るだけじゃぁだめなの」

 また、表情をけわしくしたラナは、装備をそろえるために、今以上の収入が必要だと意見する。


 こんなピリピリした雰囲気のなか、木こり小屋の台所のテーブルで、俺達四人は夕食を取っていた。


 黙りこむ俺とラナの雰囲気は最悪である。

 苦肉の策を、セシルが口にする。

「どうでしょう。丘一つ先とは言わないまでも、もう少し森の奥に行ってみませんか?」

「それしか、無いわね」

 ラナのトゲトゲしい口調。目線は他所よそにあるが俺に言っているのだろう。

「今でも、丘一つ分、先の場所で狩りしているだろ。あれ以上は危険だって」

「でも、他にないでしょ」

 ムキになる俺に、ラナもムキに言い返す。


 また、言い争いになりそうな話の流れに、セシルが話に割り込む。

「コウヘイさんはどうして、森の奥に行きたがらないのですか?」

 どのように説明しようかと考え、黙り込んでいると、ラナが、

「コウヘイならあの程度の爆弾大丈夫だよ。私が保証するわ」

「俺じゃなく、ラナにあたったらどうなんだ?」

「私、私はそうね。この服だし、ちょっとまずいかもしれないけど、でも、セシルなら鎧に物理防御属性もあるみたいだら、私とアンナちゃんにさえ当たらなければ……」

 ラナは話の流れを修正する。

「だいたい、あの爆弾は例外中の例外よ。町の紹介所でも聞いてみたけど、ゴブリンが爆弾を持ってたなんて誰も知らなかったし、この森でゴブリンが爆弾を使ったって話は、先にも後にも、あの一件だけよ」


「爆弾が無かったとしても、もし、三十匹のゴブリンに囲まれたらどうするんだよ」

 俺は突拍子とっぴょうしもない話題を出したが、ラナは、

「三十匹は大群ね。十五匹くらいまでなら、アンナちゃんの稲妻魔法を効率よく使えば、なんとか勝てるだろうけど、それ以上になれば、逃げるべきね」

 ラナはまじまじと考えて、何かに気づく、

「って、もしも話でしょ。三十匹のゴブリンがたむろしていることなんでないわよ。そもそもこの森にいるゴブリンははぐれものなんだから、たむろしていても、せいぜい十匹までよ」

「もしかすると、ゴブリンの砦があって指揮系統の整っているゴブリンのむれがあるかもしれないだろ」

 理由はわからないが、俺はそんな予感がする。あの丘の先は危ないと感じる。

 ラナは否定しきれなくなったのか、

「あの丘の先に、ホブゴブリンが統括とうかつする砦があれば、三十匹以上のゴブリンがむれていてもおかしくないわね」

 と元気なく答える。


 セシルも言葉が見つからないのだろう、黙り込んだ俺とラナに何も言わない。

 アンナは、三人の会話を聞いている。

 四人は黙々と食事を進める。


 しばらくして、ラナが話題を変え、

「セシル、農園の再建ってどれくらいかかるの?」

「そうですね。目標金額は百プラチナです」

「百プラチナ!?大金ね」

「父が農園を始めた時の資金が百プラチナだったのですが……。そうですね、今は父の土地がありますから、八十プラチナほどあれば、なんとか農園の再開はできると思います」

「それでも大金ね」

 辛気臭くなるラナとセシル。

 そんな二人に、場の空気を読まず、率直そっちょくに聞いてみた。

「百プラチナってどれくらいの価値があるんだ?」

 

「そうね。城内でも郊外なら、小さな家が買えるわね。あと、一頭立ての荷馬車なら二十台くらいは買えるはずよ」

 正直、価値が分からん。

「その資金を貯めるのに、今のままだとどれくらいかかるんだ?」

 セシルは、テーブルに指で数字を書きながら計算し、

「そうですね。……三年くらいでしょうか」

 と、答えを出し、物思いにふけるように、

「早ければ、早いに越したことはないのですが……」

 独り言をつぶやいた。ハッとわれかえり、

「いえ、コウヘイさんとラナさんには感謝しています。私とアンナだけではもっとかるでしょうから」 

 慌てて、そう言葉を付け足した。


 ラナがうらめしそうに俺を見る。

 セシルも無言で俺を見る。

「「……」」

 この沈黙はえられない。

「わ、分かったよ。この先の丘の方に行くよ」

 二人の表情がやわらぐが、俺は、

「ただし、ラナとアンナの防具を揃えること」

 と付け加え、しぶしぶ納得なっとくした。



 翌日。

 冒険者の装備品そうびひんそろっている通りに来た。

 この辺りの店は、どこも立派な造りになっている。よほどもうかるのだろう。


「コウヘイは心配し過ぎなんだから」

「用心に越したことはないだろ」

 昨日からラナは、「コウヘイとセシルに守られているから、私もアンナちゃんも今のままの装備で大丈夫!」と言い張るが、どうしても漠然ばくぜんとした不安にさいなまれる。

 俺は、ラナとアンナを、ゴブリンの石オノや短剣から守ることを優先した。

 物理攻撃の防御ぼうぎょならよろいが一番かしら。とラナに言われ、《防具の店》に入った。


 【= 防具の店 =】


「んー、私やアンナちゃんに合うよろいは無いわね」

 一通り店内を見て回ってラナがそう言う。そこに中年太りしたふくよかな顔の店員が近寄ってくる。


 俺がゴブリン狩りで使う鎧を探していることを店員に話すと、

「そうですか、ゴブリンとの戦闘をお考えでしたら、魔法防御の無い標準型の鎧がおすすめです。魔法防御が無い分お値段もお安くなっておりますし」

 店員は笑顔で手を揉みながら、ラナやアンナの体型に合わた特注品の鎧を作ることを提言ていげんしてくる。

 セールストークを真剣に聞き入る俺に、何も言わずラナは少し離れて冷ややかな目線を向けている。

 店員がすすめる鎧は、ゴブリンの攻撃なら短剣や爪での攻撃はもちろん、粉砕力のあるきばや破壊力のある石オノでの攻撃も防げるという。まさに俺の求めていた防具だ。

 俺はよろこんで店員に値段を聞いてみた。


 とても今の所持金額で買える金額ではなかった。


 店を出ると、ラナが文句を口にする。

「あんなセールストークに引っかからないでよ。ゴブリンと戦うために特注品の鎧なんて誰も作るわけないでしょ。それに私とアンナちゃんが、前衛ぜんえいに出ることなんてないんだから、後々(あとあと)のことを考えれば魔法での攻撃を警戒するべきなんだから、魔法が防御できない鎧作ったってお金の無駄よ」


 【= 服の店 =】


「今の所持金額で買えるとしたら、この《微風そよかぜのローブ》ね」

 百四十ゴールド

「これなら俺が受けたみたいな爆弾でも大丈夫なのか?」

「コウヘイが受けたみたいな爆弾は無理ね」

「なら、石オノは大丈夫なのか?」

「威力を弱めるだけだから、石オノで頭を叩かれたらまず、助からないし、腕を叩かれれば骨折するわよ」

「ぜんぜんダメじゃないか」

「百四十Gぽっちならこんなもんよ。それでも、短剣やゴブリンの爪なら、ある程度はふせげるわ」


 あまりにも頼りない防具であるが、無いよりはマシと考え、ため息混じりに、

「じゃ、それ二つにするか」

「二つも買えないわよ」

「え、」

「二つ買うお金なんてないわよ。一つだけ、アンナちゃんの分だけよ」

「「……」」

「じゃまたにするか」

 俺は買うのをやめた。

「えー、どうしてよ」

「もうすこし、お金貯めて、出直して来よう」

「そんなの時間のムダよ、今日はアンナちゃんの分を買って、またお金が貯まったら私の分を買えばいいじゃない」

 頼りない防具で、あまり乗り気ではなかった上に、ラナの分が買えないとなると、ますます乗り気になれない。

 《微風そよかぜのロープ》の次にい防具をラナに聞くと《突風とっぷうのローブ》があるのだが、価格が三百四十Gと跳ね上がるし、その《突風とっぷうのローブ》でも石オノで叩かれると大怪我をするという。

 遅かれ早かれ、俺達が買える物は、この《微風そよかぜのローブ》しかない。

 それなら、今日はアンナの分だけでも買って帰ろうかと思うのだが、りがつかない。


 考えあぐねた。

 何となく店内を見渡すと、ディスプレイされてあるフォーマルな子供服が目に入る。

 「……そうだ、あれを買おう」


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