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VRマシン・グリフ王国への道  作者: ai56go
グリフ王国
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ブログを始める

 インターネット上には、《グリフ王国》に関するブログが山ほどある。

 多くのユーザが興奮冷めやらぬ想いをブログで表現していた。


 あるブログでは、《グリフ王国》を楽しむというより、攻略方法や、シナリオ展開をまとめ、何か研究しているような書き方をしている。


 別のブログでは、《グリフ王国》に人生をささげるとタイトルをつけ、私生活を書いてある。会社が終わると、その足で《グリフロード》ビルに向かい、毎日のようにキャンセル待ちに並び、運良うんよく空きが取れれば、消費者金融で借金をして《グリフ王国》をしているとゲーム廃人ぶりを自慢気じまんげに書いてある。


 インターネット検索で上位にくるのは、こういった内容で、人とは少し変わったことを書いてあるブログである。


 大抵たいていのブログは、作者ブロガーが思ったことを闇雲やみくもに書いただけのただの公開日記でしかない。俺がブログを書いても、そういったたぐいのブログにしかならないと理解しているが、俺はブログを始めることにした。


 俺が体験したこと、思ったことを何かの形で表現したいという衝動しょうどうおさえられなかった。


   -----


 ラナは赤髪、ブルーのひとみ、かわいくて華奢きゃしゃに見えるが、性格が大雑把おおざっぱ暴飲暴食ぼういんぼうしょくする。

 ラナの身長は俺の胸くらいだから、百四十センチくらいだろうか?そもそも、《グリフ王国》での俺の身長がわからないし、自分の顔も知らない。特に違和感がないので、今の俺と同じ身長くらいのキャラだとは思う。

 そういえば《グリフ王国》で鏡を見たことがない。防具屋ぼうぐやの試着室でも鏡がなかった。

 今度、水面すいめんに映して自分の顔を見てみよう。


 アンナは、ラナと同じくらいの身長で可愛い小学生くらいだろうか?なんにでも興味を持つ。

 セシルは、おだやかで品がある。けど近づきがたい。


 なんだか、最近この三人に、のけ者にされている気がするが、と入力してBackSpaceバックスペースキーで削除し、俺のブログをインターネットに公開した。



 こんなブログでも、学生や地方で《グリフロード》ビルに来れないやつが見てくれるのか、日に数十件のアクセスがある。


 そして、コメントをくれるやつがいる。

『チラシの裏にでも書いてろ』

『ゲーム相手にキモいんだよ』

『キモい』

『底辺www』

 誹謗ひぼうするコメントがならび、落ち込む。が、

 俺のブログだ。俺が何を書こうと勝手だろ。

 俺は自分が思ったことを書いた。


 どうせ、俺の名前も顔も出さないんだ。

・ラナの寝顔にドキッとしたこと。

・ラナの手か柔らかかったこと。

・ゴブリンを倒してラナと喜んだこと。

 《グリフ王国》が俺の人生に生きがいをくれたと。


 誹謗ひぼうするコメント以外に、

『グリフ王国はマジ第二の人生』

『詳細よろ』

『地方マジ悲惨。俺もやりてー』

 のコメントがあり、嬉しくなった。


 予約日が来るのが待ち遠しい。その気持ちをブログで発散させる。


   -----


 ある日、インターネットをしていると、

 VRマシン(グリフロード)の元となっている医療機器に詳しい人のブログを見つけた。


 《グリフロード》は、プレーヤーが考えているより多くの情報を常に読み取っている。とある。


 手足のどの筋肉を動かそうとしているのか、顔の筋肉でどのような表情を作ろうとしているのか、舌、のどくちびる、目、何を話そうとして何を見ようとしているのか。様々(さまざま)な筋肉の情報を《グリフロード》は、常に読み取っている。

 そして、プレーヤーの感情もすべて読み取っている。顔の表情からではなく、脳から直接、鮮明に読み取っている。プレーヤーが《IgC》に見せなかった感情も《グリフロード》には筒抜つつぬけになっている。


 読んでいて気持ちのいものではなかった。

 俺がアンナのほおを触りたかったが我慢したことも、攻城戦でラナに抱きつかれてドキッとしたことも、全て《グリフロード》に筒抜けだったのだから。まあ、その情報が人に見られなければ、気にする必要もないのだろうが、《グリフロード》に蓄えられた個人情報はどのように扱われているのだろうか?


 興味深いブログだと、続きを読む。


 《グリフ王国》では、ときの流れが不規則に進み、《グリフ王国》内で一晩寝たとしても、現実世界では、ほんの一瞬しか経過しない。激しい戦闘を数十分続けたとしても、現実世界では数秒しか経過していないだろう。

 脳は時間に対してシビアではない。物の動く速さ、体感や疲労感、天体の変化などから相対的にときを感じる。

 《グリフロード》は、手足や皮膚の感覚を遮断して、脳に直接、手足や皮膚の感覚を送信しているから、実際の時間経過よりも、脳に多くの時間を感じされることができる、無意識に行う日常生活の動作なら、実際より千倍程度の時間の流れを感じさせることができる。

 一回のゲーム(一時間)で、《グリフ王国》の世界では四十日前後の月日が進むだろう。

 と書かれている。


 そして、

 《グリフロード》は、プレーヤーが意識していない情報は脳に送らない。

 もし、宿から城門まで歩いたとしても、実際には《グリフロード》は宿と城門の情報と、道筋の所々(ところどころ)の情報しか脳に送らない、その情報をもとに脳が勝手かって辻褄つじつまが合うように補正ほせいしている。その証拠に、城内の地図が書けないプレーヤーは多いはずだ。


 《グリフ王国》の世界に居るとき、プレーヤーが現実世界のことを考えたり、矛盾むじゅうに気づくことがあるだろう。その場合でも、《グリフロード》が、脳の記憶を改竄かいざんしたり、プレーヤーの行動をあやつったりは絶対しない。もし、そんなことをしたら犯罪になる。

 だから、プレーヤーの意識が、《グリフ王国》の世界から抜けだそうとした場合、《グリフロード》は、意識レベルをコントロールして回避しているものと考えられる。

 より深い睡眠状態を作り、その上で、《グリフ王国》の世界での出来事を脳内に送る、プレーヤーにそれを自分の過去の記憶と勘違いさせる。


 運営会社は、《グリフロード》は洗脳マシンではないと広報こうほうし、プレーヤー自身の意思や考えで《グリフ王国》内を行動しているとうたってはいるが、上記の説明のように、今までのゲーム機とは異なる部分が多く、プレーヤーの人格に影響を及ばさないという保証はどこにもない。くれぐれも異常を感じたらゲームを中断することをおすすめする。


 《グリフ王国》を第二の人生というプレーヤーも居るようだが、脳に送られる情報が、どれほどリアルでも、《グリフ王国》は一人用のゲームでしかない。

 《グリフ王国》という世界が実在するのではない。

 《IgC》はプレーヤーのためだけに行動し、まだ見ぬ《IgC》はプレーヤーが来るまで、食事も息もせずひたすら同じ状態でっている。

 プレーヤーが訪れたことのない町は、何一つ変化することなく同じ状態を維持いじしている。プレーヤーが関わっている範囲の出来事しか《グリフ王国》のときは流れない。


 そんな、ただのゲームに、一時間六万円という大金を使って、無駄に自分の時間を消費し、その上、健康被害の危険性まである。脳に大量の電磁波を送る《グリフロード》は、後遺症が残る深刻なダメージを脳に与えるかもしれない。

 そんなものを、第二の人生というのは馬鹿げていると私は思う。


 としるめくくっていた。


 《グリフロード》に反対する人のブログだったのかもしない。


 インターネットで『グリフロード 危険』と入力して検索すると、多くのサイトが表示された。

 俺が思っている以上に、《グリフロード》を危険視きけんしする人は多いようだ。


 俺は、それらのウェブサイトを見ようとは思わない。

 見た結果、本当に危険だったとしても、何も変わらない。

 《グリフ王国》をやめることは絶対にない。


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