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VRマシン・グリフ王国への道  作者: ai56go
グリフ王国
13/68

森の奥深く

「おはよう」

 アンナの淡々とした声で目が覚めた。

 俺が目を開けると、無表情で俺の顔をのぞき込んでいるアンナがいる。

「ラナお姉ちゃんが早く起きて。っていってるよ」

 そうつたえ、走るように俺の部屋から出て行ってしまった。


 昨日の残りで朝食を軽く済ませ、いつもより早く狩りに出かける。

 狩場かりばまで歩く、道中どうちゅういろいろと作戦を考えてはみたが良いアイデアがない。

「コウヘイをおとりにしてやってみましょ。そして、こっちからは動かないでゴブリンの出方でかたを待つの」

 ラナが苦肉の策として、前回の作戦を少し手直した方法を提案ていあんし、

 俺のうしろに五十メートルほど離れて、ラナ達がついてくる。



 今日始めてのゴブリンを見つけた。


 まだ、二、三百メートルほど離れている。

 俺はずっと立ったまま動かい。十五分ほどにらみ合ったが、戦いにならずゴブリンは森の奥に消えて行ってしまった。


 やはりこの作戦は、うまくいかない。


「ずっと立ったままだとゴブリンにも罠だとわかるんだよ」

「そうみたいね」

 ラナは、そう言ったまま、次の作戦を考えているようだ。

 俺も、作戦を考えるのだが何のアイデアも出ない。そもそもゴブリンの生態せいたいを知らない。

「なんで、ゴブリンは冒険者を襲うんだ?」

「よく知らないけど、冒険者の持ち物が魔物の間で高く売れるとか、冒険者を狩ると魔王に褒められてくらいが上がるとかじゃない?」

 ラナもよく知らないようだが、何にしても、ゴブリン側にも危ない思いをして冒険者を狩るメリットがあると考えて間違いはないだろう。


 俺とラナが、考えあぐねていると、

「あの私に考えがあります」

 と言ったセシルは俺を見て、

「申し訳ないのですが、やはり、コウヘイさんをおとりにしてしまうことになるのですが……」

 と言いづらそうな面持おももちになる。

「うん、なになに」

 俺の意見を聞かずに、ラナは興味きょうみしめす。

 ラナの態度が少々不愉快には思ったが、まあ、俺としてもこのままでいとは思ってない。素直にセシルの作戦に耳を傾ける。


 なかなかいいアイデアかもしれない。


 セシルの考えにしたがい、四人まとまって行動することにした。

「あ、ゴブリン」

 ラナがゆびさす方向に、三匹見える。

 二百メートルほど先に居る。ゴブリンからもこっちが丸見えだろう。


 手はずどおり、まず四人で百米ほどの距離まで近づく、

 そこからラナとアンナを残して、俺とセシルが三十米ほど近づいて止まる。

 攻撃してこようとしないゴブリンを確認してから、さらに俺だけが、三十米ほど進んで止まった。


 ゴブリンは仲間と顔を見合わせながら話し合う仕草しぐさをしている。おそらく俺一人なら勝てると感じても、後ろの三人が気になるのだろう。

 混戦こんせんとなれば、すぐに駆け付けられる。俺が簡単に倒せれるかどうか見極めているのに違いない。

 ゴブリンは数メートル俺に近づき、セシルが動くかどうか確認する。セシルは動かないが、ゴブリンもそれ以上動く様子をみせない。やはり罠を警戒しているようだ。


 このタイミングで、ラナと一緒に居たアンナがセシルのほうにゆっくり歩き出す、ゴブリンのいかつい顔色は変わらないが、多分不思議な光景に映ったに違いない。アンナはセシルを通り越して、俺のもとに歩く、ゴブリンはアンナが魔法使いだと予想し逃げようかと浮き足立つ。しかし、まだ距離があるし、俺のもとにたどり着く前に逃げればいいと間違った判断を誘う。

 アンナはセシルより少し前に進んだところで、稲妻魔法を詠唱えいしょうしながら走りだした。すぐさまゴブリンは逃げ出すが、稲妻に打たれ足が引きつる。

 すかさず俺が走り、ゴブリンに近づく、セシルはアンナを守るように走る、ラナもゴブリン目掛けて走る。

 俺が駆け寄る前に起き上がったゴブリンは、逃げようとするが、そこにアンナの稲妻がゴブリンを襲い、再び転び、起き上がった所を、俺の短剣がゴブリンを襲う。逃げる残りのゴブリンにまた、アンナは稲妻魔法を打つ、俺は、二匹目のゴブリンも倒した。

 残念ながら三匹目には逃げられてしまった。


 俺の元まで駆け寄ってきたアンナに、

「すごいな、アンナ」

「えへへへ」

 褒められて得意そうにアンナが笑う。

 駆け寄ってきたセシルに、

「この分だとノルマの六匹ってすぐじゃないか?」

「そうですね」

 自分の作戦がうまくいったせいか、うれしそうにやわらかい表情をセシルが見せた。



 しばらく歩き、また三匹のゴブリンを見つけた。

 緩急かんきゅうつけたこの作戦は、面白いほどうまくいく。

 はじめゆっくり歩いてゴブリンに近づき、すきあらば襲ってこようと考えるゴブリンに、アンナが不可解な動きを見せる、そして、予想外に長いアンナの稲妻魔法で逃げるゴブリンを足止めする。この作戦はゴブリンをあざむくことができる。

 そしてこの作戦のもっともいいところは、アンナを一人にしないところにある。

 十五メートル以内には必ず誰かが居てアンナを守る。もし、背後からラナが襲われれば、セシルはラナの援護に走り、俺はアンナの保護に向かう、アンナは、一番近い人の後ろに隠れればいい。けして、アンナが十五メートル以上、俺達から離れることがない。


 今回も難無なんなく、ゴブリンを倒した。アンナ、セシル、ラナと俺の元に駆け寄ってくる。

「ほんと、凄いな。この分なら一日六匹と言わず、八匹でも十匹でも狩れそうだ。この調子で次も頼むな」

「はーい」

 と明るく返事をする。

「だめよ。アンナちゃん」

 怖い顔で、ラナが止める。

「アンナちゃん疲れてるでしょ」

「うん。でも、大丈夫」

「ううん。これ以上続けたら、命を削ることになるわ。覚えておいて、魔力を貯めておける量は人それぞれなの。アンナちゃんはまだ小さいから分からないのかもしれないけど、もう、ほとんど魔力が残ってないわ。これ以上は絶対だめ」

「……」

「そんなにしょんぼりしないで、魔力は、木や草や土や空気からだっておぎなえるのよ。一日立てば、また、もとに戻ってるし、アンナちゃんがもっと大きくなれば、もっと多くの魔力をたくわえられるようになるから、ただ、今は無理をしたらだめって言ってるだけだから」


 セシルも知らなかったのだろう。驚いた顔をしている。

 ラナには、俺には見えない護符の力も、見えるようだし、魔法が使える者でないとわからない何かがあるのだろう。


「もう少し、奥に入ってみないか?いや、ほんの少しだよ。あぶなそうだったら引き返せばいいし、狩場の範囲そろそろ広げてもいいんじゃないか?」

 今日は、いつもより早く家を出たし、アンナのおかげで、もう四匹のゴブリンを狩ることができた。必死にゴブリンを探すだけではなく、新しい狩場を見つけようという俺の意見が通った。

「そうね。じゃ、丘一つ先に行ってみましょうか」

 と言いつつ、ラナはセシルを見る。

「私はいいですが、アンナ大丈夫?」

 セシルはアンナを見る。

「うん、魔法使わなければ、ぜんぜん平気」

「よし、じゃぁいくか」

 俺は意気揚々と、先頭を切って森の奥深くに進んだ。



「ぜんぜん雰囲気変わらないな。もう一つ先に行ってみないか?」

「そうね。思ったより安全そうね。次からこの辺りで狩りをしてみるのもいいかもしれないわね」

 更に、もう一つ先の丘にも行ってみることにした。



「この辺りもぜんぜん変わらないじゃないか。なあ、あの丘の頂上まで行ってみないか?」

「んー、あの辺りまで行くとちょっと危険な感じがするんだけど」

「あの丘の頂上まで行けば、向こう側が見えるだろ。ちょっと様子みだよ」

「見るだけよ。もし、ゴブリンとったら引き返すのよ」



 ラナの心配をよそに何事もなく、丘の頂上まで辿たどり着いた。

 見通しのきく場所をみつけ、向こうの遠くを見渡す。

 まだまだ山が続くが、その先のずっと向こうにはあやしげな雲が見える、森の色も暗い。まだまだ先だが、あの辺りから魔物側の世界なのだろう。


「もう、これ以上は危険よ。帰りましょ」

 思った以上に先は遠い、俺達はこんな城の近くで狩りをしていたんだと、自分の小ささに気がついた。


 帰り道ラナは、ゴブリンの痕跡こんせきを調べながら歩く、木にゴブリンの爪あとがないか、動物がおびえていないか、森の空気がよどんでいないか、俺には分からない何かを感じ取れるようだ。

「うん、この辺りなら大丈夫そうね。この辺りまで狩場を広げても問題ないと思うわ」



 その直後、ゴブリンと不意に出くわしてしまった。

 見えているゴブリンは五匹。もう目と鼻の先だ。

 待ち伏せされたのかと警戒けいかいしたが、特に、囲まれている様子はうかがえない。

 ゴブリンは戦う気まんまんだ。


 見た目、いつも戦っているゴブリンと大差がない。

 ラナとアンナは、セシルの後ろに隠れ、

 俺は数歩前に出た。

 一斉に俺に襲い掛かってくる。

 アンナが稲妻魔法を使ったのだろう。二匹のゴブリンがひるみ、三匹のゴブリンがける。俺は二匹のゴブリンを斬り倒す、セシルがころげたゴブリンに斬りかかる、俺もさらに残りのゴブリンに襲いかかる。あっという間に五匹全部倒してしまった。


「アンナ大丈夫」

 セシルが心配する。

「うん、少し魔力が戻ったからぜんぜん平気」

 ラナに目線を向けたがラナも特に心配することはないというような表情をしている。


「なんだ、この辺りのゴブリンも大したことないじゃないか。これからこの辺りで狩りしないか?」

 俺は、正直な感想を口にし、みんなの顔色をうかがった。


 突然、電子音がなる。

 ピッピッピッピッ……

『なんだ?』

 目の前が、ゆがみ、かすれていく。



 聞き覚えのある電子音だと気がついた。

『あぁー、ログアウトか』

 リクライニングシートに座る俺自身に気がついた。


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