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カスタムソルジャーGT  作者: バームクーヘン
第1章 ニュージェネレーション
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第6話 イエロー・アイ

スカイカップから一週間。セイカはぼんやりと海を眺めていた。

海を見ていると、自然とあの少女と機体のことを思い出す。


その度にセイカの表情は暗く沈んだものとなるのだった。




気分が晴れないまま足を進め、適当に町をぶらつく。


あの日のことが振り切れずにいた。

別に勝てなかったことが悔しいのではない。


ただ、あの時、あのファイトを楽しいと思えなかったことが心残りだった。

どんな相手でも、ファイトをすれば楽しめると思っていたが、自分はあの時、確かに恐怖していた。


レインを恐ろしいと思い、心からあのファイトを楽しむことが出来なかった。



「セイカちゃーん!」


その時、子供達がセイカを呼び止めた。

どうやら無意識の内に河川敷に来ていたようだ。


「どうした、お前ら」


「あのね、とっても強い子が現れたの!」


「私達の仇をとってー」


どうやらセイカに代理で戦って貰いたいようだ。



「いや、でも」


今はカスタムファイトしたい気分ではない。

乗り気ではないが子供達に押されてGキューブまで連れてこられた。


ちびっこ達の機体がダウンフェイズし、五体同時に倒れた。

子供達はショックで泣き出し始めた。


「やったぁ! また勝った!」


子供達を負かした女の子はバンザイをして喜んだ。


「……お前は?」


セイカは少女の名前を尋ね、少女は自分の名前を告げた。


「私? 私は、アヤだよ!」


アヤはセイカに向かってニコッと微笑んだ。

黄色い瞳が真っ直ぐセイカを見つめる。


「貴女も、アヤとファイトしてくれる?」


「いや、その……分かった」


断ろうとも思ったが、子供達の目に負けてやることにした。

そして、二人はそれぞれ自分の機体をジオラマに向かわせた。



「コスモギャラクシー!」


「マジシャンズ・ブラスター!」


二つの機体が同時にフィールドに降り立つ。


アヤの機体のマジシャンズ・ブラスターは白いボディに赤いローブを纏った魔導師型の機体だ。

今回のフィールドは砂漠ジオラマ。

寂れた神殿と広大な砂漠が広がる足場の悪いフィールドだ。


セイカはマジシャンズ・ブラスターを見つめた。

(見たことのない機体……)

それだけならただのワンオフ機ということで納得いくのだが、それだけではない何かを感じる。


「……行くぞ」


コスモギャラクシーがブーメランを持ってマジシャンズ・ブラスターに接近する。

マジシャンズ・ブラスターは先端に透明に輝く水晶が付いた杖を振りかぶり、コスモギャラクシーを迎え撃つ。


杖とビームブーメランがぶつかり合い、激しく火花が散る。

杖の先端でコスモギャラクシーを突き飛ばし、杖から電撃を放つ。

コスモギャラクシーは電撃をブーメランでなぎ払い、左手からビームを発射した。

マジシャンズ・ブラスターは自身の周囲に風を発生させ、バリアにして防ぐ。そして、杖を地面に叩きつけて火柱を出してコスモギャラクシーを襲う。


コスモギャラクシーは横に飛んでかわすも、風を纏って突っ込んで来たマジシャンズ・ブラスターに突き飛ばされる。

続けて雷を放とうとするが、コスモギャラクシーは吹っ飛ばされながらも右手からビームを放ち、マジシャンズ・ブラスターを転倒させる。


体勢を整えると、ジャンプしてビームブーメランを振り下ろした。

寸前で回避され、砂漠にブーメランが叩きつけられたことにより砂が舞い散る。

マジシャンズ・ブラスターはローブを翻して砂が目隠しになる前に振り払う。


「貰った!!」


その瞬間、砂の中からコスモギャラクシーが飛び出し、ビームブーメランでマジシャンズ・ブラスターの腹を殴り飛ばした。あの一瞬の内に砂の中に潜っていたのだ。

アヤは飛び跳ねそうな勢いで喜んだ。


「凄い凄い!貴女、とっても強いのね!!」


「お、おう」



セイカは突然話しかけられたのでびっくりする。

アヤは顔に笑みを浮かべたままPCDの操作に戻る。


「私も頑張るよー」


マジシャンズ・ブラスターが次の瞬間、風に乗り、もの凄い速度でコスモギャラクシーに接近する。


「!!」


セイカは驚いた。

マジシャンズ・ブラスターは今までとは比べ物にならない速さで杖を叩きつけてくる。

しかも若干だが先端の水晶に属性が加えられており、殴られる度に損傷が酷くなってくる。

相手のスピードに付いていくため、コスモギャラクシーはビームブーメランを分割し、二刀流で迎え撃つ。



「おい、どうなってるんだ?」


ヨルがやって来て、子供たちに現在の状況を尋ねた。

子供たちはアヤがとにかく強くて、セイカと戦っていると伝えた。

ヨルはセイカと戦っているアヤをジッと見つめた。


(あいつの顔……何だか、何処かで見たことあるような……)

ヨルはアヤの顔に既視感を覚えたが、詳しく思い出せないでいた。


そして、セイカもアヤにどこか既視感を覚えていた。

今まで、何回か見たことあるような雰囲気をしているのだ。


(これは、あの人や……そう、)


「じゃあ、アヤも全力全開だよ!!」


(レインと、同じ……)


その瞬間、アヤの瞳が虹色に輝いた。

セイカはレインと同じ力を感じ、息を飲む。



ここからは、今までとはまるで違う強さだった。

コスモギャラクシーの攻撃を完全に見切り、逆に自身の攻撃は必ず当ててくる。


電気を放ったかと思えば、次の瞬間には炎を纏い、一発殴ると今度は周囲に竜巻を発生させてコスモギャラクシーを切り刻む。

そして、空中に浮かんだコスモギャラクシーに向かって強力なトルネードを放つ。風が砂漠の砂をえぐりながら襲いかかる。


コスモギャラクシーは両手からビームを放ち、その反動で竜巻を回避する。

しかし、着地した瞬間砂に足を取られた。


「っ、さっきので!」


先ほどの竜巻のせいで砂が巻き込まれ、コスモギャラクシーの着地した足場が崩れやすくなっていたのだ。

動きの止まったコスモギャラクシーに向けて、マジシャンズ・ブラスターは炎雷風の三つの属性魔法を放った。

三つの攻撃は同時に命中し、コスモギャラクシーは大きく吹き飛ぶ。


「特殊モード!」


《スカイハイモード》


マジシャンズ・ブラスターの体が鮮やかなマゼンタに輝き、続けてコスモギャラクシーに襲いかかる。

杖で突かれた瞬間、コスモギャラクシーは物凄い勢いで吹き飛んでしまった。


「凄い攻撃力だな……」


ヨルはマジシャンズ・ブラスターのパワーに圧倒された。

恐らく、スカイハイモードの真骨頂はあの驚異的な攻撃力の増加なのだろう。


セイカは、長期戦は不利と考え勝負を決めに掛かる。


「必殺アクション!」


スペリオルアクション《ストライクスターズ》


コスモギャラクシーの右手が赤く輝き、マジシャンズ・ブラスターに殴りかかる。

マジシャンズ・ブラスターは正面から迎え撃ち、思い切り杖で殴りつけた。

バチバチと激しい火花をあげ、コスモギャラクシー勢いよく吹き飛ばされた。


「そんなっ」


「ダメだよ、必殺アクションはこう使わないと!」


スペリオルアクション《マグナブラスター》


マジシャンズ・ブラスターは右目を左手で覆い、瞳を輝かせると手を振り払ってローブをはためかせる。

そして、杖を両手で持って天に掲げる。

右手に持ち替えると後ろに杖を引き、力を込めると思い切り突き出した。

炎と風の二つのエネルギーが放たれ、同時に襲いかかる。


必殺アクションをまともに喰らい、コスモギャラクシーは地面に倒れた。

ダウンフェイズを迎え、コスモギャラクシーの全身から光が弾け飛ぶ。



「勝った勝った!!」


アヤはピョンピョン飛び跳ねて喜ぶ。

セイカはアヤに気になることを尋ねた。


「アヤ、お前、苗字はなんて言うんだ?」





「…? アヤはね、翼アヤだよ」


予感が当たり、セイカは衝撃を受けた。


「じゃあ、お前の親は……」


「やっと見つけた……アヤー!」


その瞬間、誰かがアヤのことを呼んだ。

アヤはパァッと笑顔になるとその声の主の元へ走っていく。


「パパー、ママー!」


セイカは心臓が飛び出るかと思った。

アヤの、翼アヤの両親がいるということは……

恐る恐る、振り返った。


視界に写ったのは三人。

アヤと、その母親であろう黒髪の女性。

そして、もう一人は……



「久しぶりだね……早速だけど、強くなりたいよね?」


その声は少年の様に高く澄み切った声だった。

背は年にそぐわない低さで、とても父親とは思えない容姿だ。

しかし、その雰囲気は見るものを圧倒し、同時に強く惹きつける何かがあった。



「はい……………ヤマトさん」




ヨルは目の前の状況が理解出来なかった。

そこにいるのは、カスタムソルジャー界で知らないものは誰ひとりとしていない、正しく世界最強のファイター。


「翼ヤマト……」

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