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カスタムソルジャーGT  作者: バームクーヘン
第1章 ニュージェネレーション
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第2話 翼を継ぐ者

「な、何でお前が……」


ここにいるのか。ファイトをしなければならないのか。

ゴンフレラは色々と文句を言おうとしたが言葉に出来ず、やがて観念したのかうなだれた。


「仕方ねぇ……お前と勝負しよう」


「お、待ってました!!」


セイカはゴンフレラの返答を聞くと、嬉々としてGキューブの前に立った。

ゴンフレラもセイカの対面に移動する。


「言っておくが、もし俺が勝ったらその時はヨルと」

「あー、やめやめ」


ゴンフレラが勢いを付けてセイカに条件を突きつけようとしていたが、セイカはそれを面倒そうにして断る。


「そうやってさ、喧嘩とか取引にカスタムソルジャーを使うのやめようぜ。オレはさ、こいつで遊びたいだけなんだ」


そう言って、セイカは自分の機体を取り出した。



コスモギャラクシー。

セイカだけが持つ特別な機体だ。

黒を基調としたボディに大胆に白を投入したデザイン。その華やかさは名の通り宇宙を思わせる物だった。

どうやってこの機体を手に入れたのか。それを尋ねても、セイカははぐらかすばかりで誰にも明かさない。


対して、ゴンフレラの機体はギガコング。

圧倒的なパワーを備え持つ大型のゴリラ型の機体だ。


「行くぞ!」


二人は自分の機体をGキューブの中に向かわせ、ファイトを始めた。

フィールドは河原。穏やかな川が流れる普通のジオラマだ。


ギガコングは真っ直ぐにコスモギャラクシーに向かい、拳を振り下ろした。

コスモギャラクシーは繰り出される拳をかわし、背中に背負っていビームブーメランを手に取る。

そして、ギガコングに接近すると足首をビームブーメランで切り裂いた。


ギガコングは体を回転させてコスモギャラクシーを吹き飛ばそうとする。

コスモギャラクシーはジャンプして回転をかわすと、またビームブーメランを剣のようにして、ギガコングの頭を切り付けた。

これはセイカの癖のようなもので、彼女はブーメランを正規の使い方で使ったことは殆ど無い。


「くそっ、相変わらず滅茶苦茶な戦い方しやがって」


ギガコングは絶えず猛攻を続けるが、コスモギャラクシーは軽やかにかわし続ける。

痺れを切らしたギガコングは、両手を組んで地面を叩き崩す。

地面が砕け、瓦礫によってコスモギャラクシーの動きが止まる。



「良し! 貰った!!」


ゴンフレラは勝利を確信し、ギガコングを突撃させる。

しかし、セイカは動じない。


コスモギャラクシーは近距離にも関わらず、ビームブーメランを投げつけた。

ブーメランはギガコングの顔面に命中し、ギガコングはバランスを崩して転倒する。


「し、しまった!」


「行くぜ!」


コスモギャラクシーは空中のブーメランを両手でキャッチすると、真ん中から真っ二つに分離させた。

そして、自身の両腕に装着する。装着したブーメランがブースターの役割を果たし、コスモギャラクシーは加速してギガコングを殴る。

更に、左手のブーメランでボディを切り裂き、全身を回転して竜巻の様になってギガコングを連続で切り刻む。


「くっそぉ!!」


コスモギャラクシーは休み無く連続でギガコングを殴り続ける。

その怒涛のラッシュに、ゴンフレラは気後れする。

セイカのファイトには、言葉では言い表せられない迫力、プレッシャーを感じるのだ。


(何なんだ……本当に、こいつは一体)


ゴンフレラの不安も他所に、セイカの攻撃は続く。

ギガコングのダメージはどんどん蓄積し、限界が近づいてくる。

何とかしなければ、ゴンフレラはそう思い、必殺技を使う。


「必殺アクション!!」


スペリオルアクション《ギガインパクト》


ギガコングの両手に赤いエネルギーが蓄積し、フィールドが激しく揺れる。

ギガコングの瞳が目の前の獲物を仕留めるかの如く、鋭く輝く。

しかし、コスモギャラクシーは、セイカは一歩も引かない。


「必殺アクション!」


スペリオルアクション《ストライクスターズ》


コスモギャラクシーの右手が眩しく輝き、装着されたブーメランの刀身が伸びる。そして、二人の拳がぶつかり合う。

しかしギガコングの力の方が強く、徐々にコスモギャラクシーが押し負けていく。

そして、コスモギャラクシーは吹き飛ばされてしまう。



「ああっ!」


子供たちはセイカが負けたと思い、ざわめく。

しかし、ヨルは動じず、顔に笑みを宿す。


「いや、トリガーは入った」


吹き飛ばされたコスモギャラクシーが空中で体勢を整える。


「し、しまった!」


「本命、行くぜ!!」


スペリオルアクション《ノヴァ・ストライク》


コスモギャラクシーの前に刺々しい形の二つのビームブーメランが十字架の様に重なって現れ、それぞれが時計回りと反時計回りに逆回転する。

コスモギャラクシーが二つのブーメランが重なった点をぶん殴ると、まるで彗星のような輝きを纏ってギガコングに直進する。

ギガコングが動く暇もなく、胸に直撃した。


爆煙がバッと広がり、煙がモクモクと上がっていく。

ゴンフレラはへなへなと倒れ、Gキューブにもたれ込んだ。


煙が晴れ、コスモギャラクシーとギガコングの姿が明るみに出る。

そして、ギガコングは力なく倒れ、全身から光を弾き飛ばした。

ダウンフェイズ…………ギガコングの敗北だ。



「ちくしょー! 何でいつも勝てねーんだよー!!」


ゴンフレラはギガコングを回収すると、泣きながら逃げ去って行った。


「第一打を触れさせてから発動する二弾技……アイツの必勝パターンだな」


ヨルはやれやれ、と溜息をつき、セイカに話しかけた。


「しかしまぁ、お前も好きだな、本当に」



「ああ、カスタムソルジャーは楽しいからな」


そう言ってセイカはニッと笑う。

そんなセイカに、ヨルは前々から気になっていたことを尋ねた。


「しかし、何でお前はカスタムソルジャーで[遊ぶ]って事にこだわるんだ? こんなに好きなのに、給食の残り物争奪とか、何か賭け事が入ると全然関わらないのは何でだ?」


「お前も変なこと聞くなぁ」


セイカはヨルを呆れたように溜息をつく。

そして、当たり前のように言った。


「だってカスタムソルジャーは玩具で、遊びだぜ? 競技ならともかく、喧嘩とかでやるもんじゃねーよ」



ヨルはセイカの言い分があまりにも意外だったので、面食らった。

セイカは普段からハチャメチャな言動が多いため、そんな真面目なことを言うとは思わなかったのだ。


「何でそんなこと思うんだ?」


ヨルが尋ねると、セイカはコスモソルジャーを肩に乗せて立ち去りながら答えた。


「オレにコイツをくれた人が言ってたんだよ。オレの、憧れさ」


立ち去っていくセイカの背中をヨルはじっと見つめた。

その背中には、大きな翼があるような、そんな気がした。

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