俺が手本を見せてやる! これが十三番目の!
「ふっ、終わった」
「それは自分が終わっているの終わったなのか、もう手遅れだから終わったの終わったなのか、ウンコを漏らしたから終わったの終わったなのか教えろ」
「三番だ」
「エンガチョー!」
「戸橋! そのエンガチョーじゃ中村の穢れは祓えない!」
「何! 難しいと言われる四番の印でも駄目なのか!」
「ああ! 俺が手本を見せてやる!」
今日は金曜日。中村はバイトがあるので罵り合った後に直ぐに帰った。因みにアルバイトは工事現場。色々受けて受かったのがこれだけという…
一応、中村がアイドルコンサートの為にアルバイトをしているのは俺、源は知っている。
「戸橋、テスト明けで気が緩んだらリア充共はカラオケ行こうだなんだ言っているらしいぞ」
「そのリア充側を自ら蹴っている奴が何言ってんだ? それにその情報は先週に言うべきだったな。情報が古いぞ」
源は乙女ゲームに出てきそうな線の細いイケメン。更にメガネをしているので、本性を知らない女子から人気だった。
それでも告白されて断っているのは不思議でならない。好きな人が居ると言っていたが、どうやら本当みたいだ。
「という事で日曜日にアトメイトに行こう。男二人決め顔で行けば真剣男祭の限定グッズが貰えるんだ」
「あー…日曜日の午後からなら良いぞ。因みに女二人とかだと?」
「感謝する。女二人だと…ユーリローリーの限定グッズかな。それは仕方ないから諦める」
源は左腕を前に、平定のポーズ。
「では、また日曜日に」
モブ背景と化した源は帰っていった。
二人が帰り、教室の前の廊下で一人佇む。源がモブ背景化したという事は…
バッ! っと、勢い良く振り向く。
「ゾンビ、源君帰った?」
しかし誰も居なかった。
「さっ、帰ろう」
「おい、無視するなゾンビのくせに」
「どうした太田。モブ背景化に気付かないとはまだまだだな」
「戸橋君、週末空いてる?」
「あー、今埋まったばっかだな」
土曜日は倉田と出掛ける。日曜日、午前中は姉達の相手をしてから源とアトメイト。予定は埋まっているな。
源は早々に帰ったので、タイタンはつまらない表情をして部活に行った。
「そっかぁ…残念だなぁ…お出掛けしたかったなぁ…」
「日曜日にアトメイト行くけど興味無いだろ?」
「誰と?」
「サイコパス」
「ふーん…じゃあ友達一人連れて行くから、四人でアトメイト行こ?」
「あれ? 太田は良いのか?」
「うん、まぁ、部活だからね」
よく解らないが、一応サイコに聞いてみると言って話を終わる。吉野も帰るというので一緒に学校を出ようとしたところで…
「あっ、泰人君。テストどうだった?」
出入り口で琴美さんが現れた。周りを見るが、一人か。
「…」
「まぁいつも通りです。琴美さんは明日来ます?」
「うん! 行くよー。泰人君は出掛けるんだっけ? いつ帰ってくるの?」
「予定は夕方です。なので会わないかもしれませんが…」
「ん? 夕方なら会うじゃない。ねっ!」
「…あっ、はい」
もちろん泊まりよ! と顔に書いてある。俺の精神力が試される日になりそうだ。
「で? となりの可愛い子は彼女?」
「違います。こんな可愛い子が彼女な訳無いじゃないですか。いわばゾンビと歩いてくれる神ですね」
「ふぉふ…かわ…」
「へぇー…そうなんだぁ。名前は? 私、棚橋琴美」
「…吉野真由美です」
「真由美ちゃん、週末の泰人君見た事ある?」
「は、はい! あります!」
「なるほど…また明日ねー」
ニヤニヤしながら去っていった。あーあ…土曜日にいじられる未来が見えたな。
「…可愛い人だったね」
「あぁ、確かに琴美さんは可愛い人だね」
「…明日って?」
「家に来るんだよ。姉ちゃんの友達だからね」
「…家」
曇り空を見ながら家まで歩いて行くが、吉野は隣で黙っている。眉間にシワが寄った状態…いやいや、一緒に歩きたくないなら離れれば良いのに…
事件現場近くを通り、住宅街を歩いて行く。
「琴美さんは彼氏居るの?」
「居るよ。同じ三年生だって」
「そ、そっか。来るのは琴美さんだけ?」
「…もう1人来る筈だよ」
「その人は? 彼氏居るの?」
「…居ないよ」
「…ふーん」
女子のふーん…って怖いな。普通のふーんなのか、探るふーんなのか、イライラのふーんなのか…
「もっと…可愛いくならなきゃな…」
「ん? どした?」
「なんでもないよ」




