第九十四話
「ぶひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!」
「ぶもぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
…………。
………………。
……………………。
なんだ……これは。
俺がリゼットの後を追って通路を進んでいくと、やがて見えてきたのは一つ景色。
相も変らず肌色成分多目のリゼットを囲んで、オーク達が猛り狂ったように吠えている。
ぶひぶひぶもぶも、両手を上げたりして踊り狂っている。
「…………」
なんだろう。
俺は知らない間に、やばい宗教団体の会合にでも参加してしまったのだろうか。
「ぶもぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
やばい。
俺が今いるこの場所は……俺が見ているこの景色は、人間の本質に「やばい」と――ただただ「やばい」と、そう訴えかけてくる何かがある。
あるのは熱狂ともいえる何か……そう。
エロに対する情熱だ。
「明らかにリゼットを見て発情してるよな、こいつら。本当にこんなので意思疎通が出来るのかよ?」
まぁ意思疎通が図れなかったとしても、最悪こいつらに言葉を伝えられればそれでいいのだが。
俺はそんなことを思いながら、全力で「やばい」と訴えかけてくる脳内命令を無視してリゼットを取り囲むオーク達に近づいて行く。
「お、お兄様!」
すると早速俺に気が付いたリゼットが、まるで何かにすがる様な目でこちらを見つめてくる――おそらくその眼は、俺にオークを追い払ってくれと訴えているのだろうが。
「…………」
許せ、リゼット。
今日の俺はとことんまでクソ野郎に徹するぞ。
「じゃあ事前に言っていた通り、対話してみてくれ」
俺は内心決意を固め、そんな言葉をリゼットへと投げかけるのだった。




