第八十八話
「という訳なんだけどさ、何とかできない?」
一昨日、俺がオークと無駄な一日を過ごし、その翌日にはオークに謎のボディランゲージを試み、エリスから大爆笑された翌日の今日。
俺は久しぶりというほどではないが、マイホームに帰ってきていた。
念のために言っておくが、俺は決して辛い仕事に心折れて帰ってきた訳ではない。あくまで一時帰宅である。
それはそうと、もうこの世界に来てからしばらく経つが、この家をマイホームと認識するのに違和感はなくなったな。と、俺が別の事を考えていると、先ほどまで俺の話を聞いていたミーニャが言う。
「オークと会話する方法?」
「あぁ、あいつら全くこちらの話を聞かない……というか」
「理解してないんでしょ?」
そう、聞いていないというより、全く理解していないのだ。
ここでふと気になる事がある。
あいつらの主ことマオは、いったいどのようにしてオーク達とコミュニケーションを取っているのだろうか。
「…………」
謎だ。
それこそ永遠の謎だろう。
そもそもマオは、あのオーク達をどのようにしてあの城まで引っ張ってきたのだろうか。
言葉は通じないし、昨日実際にやって理解したがボディランゲージもあまり効果を成さない。
「……ふむ」
となると何か魔法でも使ったのだろう。
やはり便利だな、魔法。
以前も思ったが、いずれ魔法を習うのもいいかもしれない――もし可能ならばだが。
「何が『ふむ』なの?」
「あぁいや悪い、独り言だ。それで何か解決策ってありそうか?」
「オークとコミュニケーションを取る方法……それならお師匠さまに聞けば――」
「あいつは今駄目だ」
あいつは今、城の中を逃げ廻っているエリスを捕まえるのに全精力を費やしているはずだ。
「ん~、まぁオークとコミュニケーション取る方法に心辺りが無いわけじゃないけど……」
「教えてくれ、今すぐに!」
「あんまりオススメはしないけど、お兄ちゃんが頼むなら喜んでだよ!」




