第八十四話
「大変なことに気が付いた」
「大変なことって何よ?」
「…………」
「無視しないでよね!」
とりあえず、朝起きたら俺の部屋にエリスが居た事はあえてスルーするとしてだ。
俺は今日とんでもないことに気が付いてしまった。
そのとんでもないこととは即ち……。
「俺、働いてないじゃん!」
俺はニートから脱却するために仕事を探そうとしていた。
結果として、俺は一度クビになったマオの城でまた働くことになったのだが。
「何にもしてないじゃん!」
マオからそれなりにお金を貰っているため、正確にはニートではないのかもしれない。
ないのかもしれないのだが……。
「果たして何もせずにお金だけもらう存在を、働いていると言うのだろうか」
「言わないわね。そういうのを確か……ヒモ?」
「くっ」
その通りだ。
エリスの言う通りなのだ。
これではマオのヒモではないか。
ヒモとニート。
どちらがいいだろうか?
いや、そんな事を考えている場合ではない。
結論からいえばどちらもダメだ。
ヒモもニートもどっちもダメに決まっている。
「でもさ、あんたの仕事ってあたしの傍に居る事でしょ? じゃあ一応働いてるんじゃないの?」
「確かに働いている事にはなるだろうけどさ」
どうせやるなら、もっと遣り甲斐のある仕事をしたいというか何というか。
「なんか今、凄くバカにされた気がするんだけど」
「はぁ……」
「何の溜息よ! それに無視しないでよね!」
俺は横でギャアギャア騒いでいるエリスを無視し、マオにしっかりとした仕事を貰うべくその場を後にするのだった。
「思えば、リンの世話とかばかりで結局俺はしっかりとした仕事をしたことがない気がする。今回はそういう反省も含めて、妥協せずにマオと話をしよう」




