第七十七話
「ぐっ……」
体が重い。
ここはどこだ。
俺はどうなったのだ。
確か俺は廊下を歩き出そうとしたら……そう、突如床に引き込まれて行ったのだ。
「っ」
突拍子もない事態が自分の身に起きたのだという事を認識して、俺の頭がようやく本格的に覚醒し始める。
となれば、最初に考える事は決まっている。
まずは自分の体が無事かどうか確認しなければならない。
何をするにもそれからだ。
「っ!?」
だがそこで愕然とする。
体が動かないだと!?
しかも今更気が付いたが、眼の前が真っ暗で何も見えない――いや、この感覚は真っ暗で何も見えないというより、瞼が閉じたまま動かないと言った方が正しいかもしれない。
というかこれ……。
「っ! っ!?」
口も動かない。
動かそうとしても、何だかもごもごするだけで全然動かない。
「…………」
まずい。
なんだか焦ってきた。
忘れがちだが、ここは一応魔王の住む城なのだ。
とくれば、同じく忘れがちだが異世界から召喚された俺を捕まえて解剖しようとするやからが居ないとも限らないわけで……よし。
とりあえず全力で抵抗してみよう。
案外全力で動かそうとすれば、何とかなるかもしれない。
「――――!」
うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!
「お、お兄さん……っ!?」
ん、今何か聞こえた気がする。
聞こえた気がするのだが、突如バキンという音と共に俺の体が動きだした興奮のせいで、直前に聞こえた声らしきものは気にならなくなるのだった。




