第七十四話
「ぶほっ!?」
開始早々ぶっこまれた。
さて、先ほどまで寝ていたせいで『開始早々』という意味の分からない表現を使ってしまったが、ぶっこまれたものは確かだ。
「いつまで寝てんのよ、このバカ!」
柔かいソファーの上で目を覚ましたら、眼の前にエリスが立っていた。
そのエリスは無い胸――虚乳の上で両腕を組み、まるでゴミでも見るかのような眼で、こちらを見おろしている。
さて、ここでぶっこまれたものについてだが……簡潔に言うと、腹ドンされた。
簡潔に言わないと、寝て居る所に腹をドンっと足で蹴られた。
全く……理不尽系ヒロインが苦手な奴が増えてきている現在、こんな暴挙に及ぶとは中々に凄い奴だ。
もっとも、この世界でそんな理論は通用しないのだろうが。
「ぐえっ!?」
こ、こいつ正気か!?
まさかの第二撃目にもだえていると、エリスが言う。
「あたしの事を待たせたら許さないんだからね、勘違いしないでよね!」
勘違い。
うん、勘違いか……なるほど。
「勘違いすることねぇええええええええええええええええええええええっ!」
勘違いする要素などあっただろうか、いやない。
絶対にない、断じてない。
「お前それ、言いたかっただけだろ!? どれだけキャラ作るのに必死なんだよ!?」
「うっさい!」
「ぐほっ!?」
こ、こいつ……ま、また……。
「いいから早く準備しなさいよね!」
どれだけ凶暴なのだこいつ。
すぐに攻撃してきやがって。
「ん、あれ?」
と、そこで俺はとある事に気が付く。
エリスの服装が先ほどまで着ていた服――全裸に布スタイルではなくなっていたのだ。
今彼女が着ている服は黒い薄手のワンピースという、元の世界でも通用しそうなシンプルな物だったが……。
「…………」
「何じろじろ見てんのよ!」
うん。
こいつの悪魔という設定も相成ってか……ものすごく痴女っぽい。
ファーストコンタクトも全裸出現だったし……あ、なんか痴女にしか見えなくなってきた。
「あんた、今すごい失礼なこと考えてるでしょ!」
「ぐげっ!?」
と、再び腹に蹴りが叩き込まれ、俺が変な声を出してしまうのと、
「いつまで待たせるのじゃ!」
マオが部屋の扉を勢いよく開けるのは同時だった。




