第六十五話
「…………」
「…………」
「…………」
横たわる三人分の無言。
だって仕方がないではないか、意味がわからないのだから。
現在この場所に居るのは俺、ミーニャ、そして突然現れたこの――
「じろじろ見ないでよね、変態!」
やたら口の悪い茶髪ツインテールの貧乳娘。
喋るたびに八重歯が見え隠れしていて、なんだか持てる凶暴性を全面に押し出している感じがする。
何はともあれ、いつまでもミーニャと二人で茫然とこの貧乳娘を見ているわけには
いかない。
まずは話してみよう。
俺はアイコンタクトでミーニャに、俺の意思を伝達した後言う。
「えっと、お前誰?」
「ふん、ようやく話したかと思ったらそれ? 偉そうなのよ! 人に何か尋ねるんだったら、まず自分の名前を名乗りなさいよね!」
む、確かに。
相変わらず口は悪いが、言っていることは至極まともだ。
「俺の名前は――」
「ミーニャはミーニャだよ!」
「…………」
何だろう。
俺はこの世界で名前を名乗ってはいけない……そんなルールでもあるのだろうか。
もしくは、この世界の神が俺に名前を名乗らせないように、不思議な力を使っているのだろうか。
「何よあんた? こいつとの会話に急に割り込んでこないでよね!」
「それはごめんね……でも少し聞きたい事があるんだよ」
「ふ、ふん! 別にあたしに話しかけちゃダメなわけじゃないんだからね!」
……どっちだよ。
こいつ、言っていることが矛盾しているぞ。
「それで何? あたしに聞きたい事があるんでしょ?」
言って、貧乳娘は俺から視線を外すとミーニャへと向きなおる。
「えっと、ひょっとしてなんだけど……」
偉そうに貧乳の前で手を組む貧乳娘に対し、ミーニャはゆっくりと……しかし、まるで何かの確信でもあるかのように問いかける。
「ひょっとして悪魔さん?」
「あんたバカじゃないの!? 召喚者の癖に今頃気が付いたの?」
そして貧乳娘は無い胸――虚乳をそらし、腰に手を当てて高らかに宣言する。
「あたしの名前はエリス、ルシフパパの一人娘……とっても偉いんだからね!」




