第六十二話
「くそぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「無理だよ! もう間に合わないんだよ!」
「耐えろ、耐えるんだミーニャ! その年齢でおもらしはやばい、やばすぎるぞ!」
グダグダ言う前に結論から言おう。
この部屋を脱出するのは諦めた。
現在、容れ物を探している最中である。
「どこかにいい感じの容器はないのかよ!? この部屋管理してるのお前だろ!?」
「わ、わからないよ……覚えてないんだよ!」
「くっ!」
「おにいちゃ……す、すこし出ちゃ――」
「気のせいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!」
俺は発掘作業を進めながらミーニャへと叫ぶ。
「錯覚だミーニャ!」
「さ、錯覚……?」
「そう、錯覚だ! そして今はただ無心になるように努力するんだ!」
「やってみる……っ」
まずい、ミーニャは本格的に限界だ。
早く容器を探さなければ、大惨事が発生してしまう。
さすがに妹にそんな修羅場を経験させるのは酷なので、必至に頑張っているのだが。
「見つからない、見つからないだと!?」
どうしてこれだけガラクタが散乱していて、目的のものが見つからない。
いやまぁ散乱していたら見つからないものかもしれないが、俺が言いたいのはそういうことではなく、これだけあるのだから、容れ物の一つや二つは確実にあるだろうという事でだな。
「お兄ちゃん……や、やっぱりもう――」
ミーニャの悲痛な声が聞こえてたその時。
「っ!」
見つけた!
ついに俺はそれを見つけた――二リットルくらい入りそうな大きさの壺。
一体何に使うのかはわからないが、もうこれ以上探している時間はない。
「ミーニャ、これを使え!」
「耳塞いで向こう向いてて……早く!」
俺はミーニャに壺を渡し、指示通りに反対を向くのだった。
これで全て解決した。
あとは、リンとリゼットを待てばいい。
それで全て収まると思っていた……少なくともこの時は。




