第五十七話
そして迎える傷心旅行二日目。
「ってか、え?」
「どうしたのお兄ちゃん?」
朝の食事の席で、俺と並んで座っていたミーニャが俺に反応して話しかけてくる。
「いや、一泊二日じゃないの?」
「そうなの?」
「そうなってっていうか……」
まぁいいや、別に何泊しようともこちらは痛くもかゆくもない。
なんせ俺は、なんせ俺はニートなのだから。
そう、俺はニート。
家に帰っても何もする事がない。
唯一する事があるとすれば、炬燵で丸まっているリンと一緒に遊ぶくらい。
「くっ、殺せ!」
「お兄ちゃん、それ男の人がやってもあんまり萌えないよ」
「別に萌えさせようと思ってるわけじゃねぇよ!」
「やっぱり『くっ殺』プレイは……リゼットちゃんとかが似合うよ!」
「無視すんなよ!」
とか言いつつも、俺は脳裏に魔物に襲われてリゼットが自分の肩を抱き寄せ「くっ、殺せ」とか言っている場面を想像してしまい、自分がどんどん変態に近づいている事を感じて肩を落とすのだった。
だいたいリゼットは「くっ、殺せ」とか言わないだろ。
あいつの口調と性格から考えても、「くっ、殺してください」とかのはずだ。
って、
「バカか俺は!」
どうしてこんなことをいつまでも真面目に考えて居るんだ。
いかん、いかんぞ。
俺はこんなキャラ出なかったはずだ。
なのにどんどんおかしくなってきてい――
「大丈夫ですよ、お兄さん。お兄さんはバカではありません」
声が聞こえる。
俺の向かいでゲアラブアのから揚げを、恍惚とした表情で食べているお狐様の声が。
「お兄さんは鬼畜ですから、バカでは――」
「うるさいわ!」
「っ!」
プルプル震えるリン。
相変わらずの反応だけど、こいつはいい加減に耐性をつけるべきだと思う。
「仲がよろしいですね、お二人は……あ、口元が汚れていますよ」
言って、リンの口元についた食べかすをナプキンで優しく拭きとるリネット。
「…………」
はたしてどちらが仲がいいのやら。
何はともあれ、こうして二日目は始まりを告げたのだった。




