第五十二話
「自分の声まね……似て居ましたか?」
そこに居たのは相も変わらず浮かんでいるリンだった。
…………。
………………。
……………………。
「結局お前かよ! 何がしたいんだよお前は!」
「いえ、お兄さんはマオ姉さんにご執心みたいですから、喜ぶかなと……」
「別にご執心じゃないからな! 俺はただ狐っ娘が好きなだけだからな!」
「!」
「!?」
なんだか普段と変わった様子のリン。
プカプカ浮かんだまま彼女は両手で目を抑えると言う。
「告白されました……恥ずかしいです」
「…………」
やっぱり駄目だこいつ。
具体的に何がダメとは言わないが、色々とダメな気がする。
「でもお兄さん、お兄さんと自分が付き合うのは不味いですよ……何だか鬼畜な気配がします」
なるほど。
だがしかし、本当に鬼畜なのはお前の頭の中だと思うのだがどうだろう。
「なんだかバカにされている気がします、鬼畜です」
「わかってるなら、アホな発言やめろよな」
「酷いです、そんな気持ちで告白したんですか?」
「だから――」
だからしてない。
そう言いかけたその時、女湯へと続く扉がガラガラと開かれ、ミーニャとリゼットが入ってくる。
「ぶっ!」
さすがにこれはまずい。
そう思った俺は瞬時にターンし、今まで背中を預けていた岩と睨めっこを開始したのだが、背後ではとんでもないことが……というのも、
「聞いてください、ミーニャさん……リゼットさん」
「あ、お兄ちゃん……と、リンちゃん? どうしたの?」
「自分、さっきお兄さんに純粋無垢な狐心と体を弄ばれ、凌辱の限りを尽くされました」
「なっ!?」
驚くリゼットの声。
あぁ、これは面倒くさい事になりそうだ。




