第四十九話
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫ですか、お兄様?」
「なかなか鬼畜ですね」
最後のはともかくとして、三人が心配してくれる声に俺は頷く。
「だ、大丈夫……基本的にお前ら軽いし」
では現在の俺の状況を説明しよう。
現在。
俺は背中にリゼットを、前にミーニャを、そして頭と首辺りにリンを引っ付けて立っている。
なかなか物理法則を超越した立ち方なので、色々とすごい俺でなければ出来ないだろう。
出来ないだろうけど、そんな通常では出来ないだろう罰ゲームが普通に書いてあるこのボードゲーム……本当に作った奴の正気を疑う。
だが今回は一概にそうとは言えないかもしれない。
なんせ、マスに書いてあったのは『このマスに次回以降止まった人は、最初にこのマスに止まった人におぶられなければならない。なお、効果は最初に止まった人がサイコロで三を出すまで続く』。
考えていなかったのだろう。
製作者もこの状況は流石に考えて居なかったのだろう。
「お兄さん、あまり動かないでください」
「リンちゃん、我慢だよ!」
「そうです、お兄様が一番つらいはずなのですから」
まさか俺の後に、立て続けに全員がこのマスに止まるとは思わなかったのだろう。
「頑張って三を出すんだよ!」
「ダメですよ、さっきから六しか出さないじゃないですか。どうせまた六です」
「こういう状況でなければ、六しか出さない事は素晴らしいことです!」
「自分はこういう状況での事を言っているんですよ」
「えへへ、楽しいね!」
文字通り俺を挟んで楽しげに話す三人。
「…………」
三人が楽しそうにしているのは嬉しいのだが、現状俺は全く楽しくない。
むしろつらい。
何でゲームやって筋トレしないといけないのだろう。
「お兄様、頑張ってください!」
「ミーニャはこのままでもいいけどね!」
「わ、私も別にこのままでも!」
「リンちゃんは?」
「……鬼畜です」
「だって!」
いや、そんな嬉しそうに言われても困る……だが、いずれにしろ俺がする事は一つの様だ。
それすなわち、次で絶対に三を出す。
「…………」
頼んだぞ、俺を解放してくれ。
サイコロに意思を託し、俺は――。




