第四十八話
出た眼は六。
進んだマスに書いてある文字は、俺の読み間違いでなければ――
振出しに戻る。
「……うん」
本日三度目の振りだしに戻る。
「……クソゲー」
どれだけ振りだしに戻るが序盤に集中しているのだろう。
振出しに戻るはゲームのスパイスとして入れておくのはいいと思う――マス目の一個くらいがそういうマスならば、いい具合に一位をハラハラさせるエッセンスになるだろう。
だがしかし、これは絶対に違う。
どんなものでも入れ過ぎればクソになる。
例えば砂糖でも適量入れれば料理を引き立てる素材になるが、とにかくあるだけ全投入すればどうなるだろう?
考えるまでもない、そして聞くまでもなかったかもしれない。
そんなものは料理ではない。
料理の形をした何か、いわゆるダークマターというものだろう。
結局俺は何が言いたいのかというと。
「……まじでクソゲー」
振りだしに戻るというスパイスを入れまくったこのゲームは、先ほどの例よろしくダークマターと化してしまっている。
それに俺がクソゲーだと断じているのには、他の要因もたくさんある。
せっかくなのでその要因の一つを上げてみよう。
と、俺はさっそく新たなマスに進んだリゼットを見る。
「こ、こんな感じでしょうか?」
「うまいです。自分ではまねできません……色々な意味で」
するとそこではちょうど近くのマスに止まっているリンと会話しながら、ロボットダンスのような動きをしているリゼットが居た――おそらく止まったマスに、その場で何秒間ロボットダンスをしろたのと書いてあったのだろう。
まぁそれはいい、それ自体に文句はない。
文句があるのは、全てのマスにそのようなことが書いてあるのだ――確か一番酷いので、裸になって旅館一周というのがあった……運がいい事に誰も止まっていないが。
すなわち、このボードゲームは進めば進む程に新しい罰ゲームが課せられていく斬新なシステムなのだ。
とんでもないマゾゲー。
罰ゲームマスしかないボードゲームなど初めてだ。
まぁさすがは、
「クソゲー」
「クソゲーじゃないよ!」
と、何度目かになるクソゲー発言をしていたら、俺と同じく振りだしに戻ってきたミーニャが話しかけてくる。
「いや、クソゲーだろこれ。紛う事なきクソゲーだろ」
「そんな事ないよ! 至る所に作成者の楽しんでもらおうとするアイデアが散りばめられてて、すごく面白いよ!」
「……楽しんでもらおうとするアイデア、ね」
「そうだよ!」
うん、確かに感じる。
ただし、至る所に散りばめられた作成者の悪意をだが。
「…………」
つまらない、ものすごくつまらないが……ひょっとしたら皆は楽しんでいるかもしれないので、せめて最後まで続けてみよう。
そうしたらご飯食べたり、温泉に浸かったりしよう。
「よし」
俺はこの苦行を最後までやり抜いて見せる。




