第四十七話
「なにこれ?」
「遊戯施設だよ?」
「いや、これなに?」
「ゲームだよ!」
なるほど、これがこの世界のゲームなわけか。
「ただのでかいボードゲームじゃねぇか!」
何なのだ一体。
この世界にはゲームと言えばボードゲーム、遊戯施設といえばでかいボードゲーム。
そんな暗黙の了解でもあるのか?
俺が思わず突っ込んでしまったのは、遊戯施設に入った瞬間見えてきたもの。
即ち学校の体育館二個分くらいの大きさのボードゲーム。
おまけにマスの一つ一つがとても大きく……って、何だか凄く嫌な予感がしてきた。
「なぁこれ、駒は?」
「駒!」
「…………」
俺は無邪気に俺を指さしてくるミーニャを見て思う。
やはりそうだったかと。
このボードゲームの大きさ、そして俺の事を駒と言ったミーニャ。
ようするにこのボードゲームは、漫画や映画でよくある自分自身が駒になってプレイするタイムのものだと。
うん、もう嫌な予感どころか確信がある。
絶対にろくなことにならない確信がある。
そしてふと思う、何だか最近こんな予感や確信に捕らわれてばかりだと。
「はぁ……」
「お兄ちゃん、最近溜息おおいよ!」
誰のせいだよ、誰の!
とは合えて言わないでおこう。
まぁ実際、俺の溜息の原因はミーニャだけではなく、
「お兄さん、降ろしてください、鬼畜です。今すぐ部屋に戻してください、犯罪です」
と、尻尾で俺の顔をびちびちと叩いてくれるリンにもあるわけだし。
「はぁ……」
俺が再びの溜息を吐くと、
「お兄様、疲れているのならリン様は私が預かりましょうか?」
うん、割とまともなのはリゼットだけだよ。
本当に。
「いや、いいよ。預かるも何も、こいつも参加させるから」
「え、リンちゃんもやるの? やった!」
「やりませんよ、お兄さんに無理やり連れてこられて、鬼畜な事をされそうになっているだけです」
「リン様、そう言わないで、せっかくなのでやりましょう!」
「……鬼畜です」
ボソっとそう言ったリンは、のそのそと俺の体を伝って床へと降り立つ。
なんだかこいつが二足歩行しているのを、久しぶりに見た気がする。
「やる気になったのか?」
「お兄さんがどうしてもと言うなら……別に」
いつもはどうしてもって言ってもダメな癖に、やはり旅行だけあってこいつもテンション上がっているのだろうか。
「ルール説明はあとでするから、取りあえずスタートマスの上に行くんだよ!」
見計らったかのようなミーニャの声。
俺たちはそれに従って、スタートマスへと歩を進める。




