第四十四話
その後。
いくら食べても、ドラ○もんよろしくポンポンとどこからか大量の肉を取りだすミーニャと、見かけによらずかなりの大食いで、あればあるだけ際限な食べ続けるリゼットが織りなす狂気の宴は終わりを告げた。
俺はと言うと、
「ふぅ、食った食った」
「お兄ちゃん全然食べてないよ!」
「ミーニャ様の言う通りです。お兄様ももう少し食べた方がよろしいのでは?」
「え、でももうお肉ないよ?」
「私が取ってきます!」
「…………」
肉が、ない?
つまり俺たち(主にリゼット)はおそらく巨大であったろう龍の肉を一人で全部食べたというのだろうか。
俄かに信じられない。
「お兄ちゃん食べるなら狩ってくるよ?」
「いや、そんな買物するようなノリで物騒なこと言わないでくれ」
それに俺はもうお腹が本当にいっぱいなのだ。
にしても自分ではかなり食べたつもりなのだが、客観的に見るとそんなに食べられなかったみたいだな。
一応言っておくが、俺はモンスターの龍とか豚さんの肉が食べたくないわけではないし、バーベキューが嫌いなわけでもない。
むしろ前者は美味しく、後者は大好きな部類に入るため、ただ単に俺の胃袋が先に音を上げてしまっただけの話だ。
というかそれ以前に、俺は普通に食べたぞ。
一般の成人男性くらい――ただ比較対象であるこの二人が凄いだけだ。
「いや、待てよ……」
と、俺は見晴らしのいいバーベキュー場から広がる絶景を目に収めながら考える。
もともとこの世界の人間は胃袋が大きいのではないだろうか。
「考えられないことじゃないよな」
まぁその辺は考え出したらきりがないし、あまり深く考えるのはよしておこう。
そうしよう。
「あんまりリンを一人にしておくのも可哀想だから、片付けをしたら一旦帰るか?」
「もう帰ってしまうのですか?」
「ほら、せっかく温泉街に来たんだしさ」
そこまで言うと、リゼットは俺が言いたい事を悟ったのか、パっと表情明るくして言う。
「ウジュンマセンオンの食べ歩きをするんですね!」
「あ、うん……まぁ」
確かあの温泉まんじゅうみたいな奴だよな、それも検討しておこう。
俺としてはせっかくなので、温泉巡りでもしようと思ったのだが――それとリゼットは、あれだけ食った後で、よく食べ物の話題で盛り上がれるな。
でも待てよ、そういえばよくよく考えてみるとリンが外に出たがらなそうなので、何だかんだでミーニャの言っていたこの世界のゲームで遊んだり、料理に舌鼓をうったりになるかもしれない。
まぁ旅館にだって温泉はあるのだし、それはそれでいいか。




