第三十二話
五秒でわかる二章まとめ
雇主の妹の引きこもり体質を多少改善する
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雇主に感謝される
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何だかクビになる
「あぅ~~~~……」
「お兄ちゃん、どうして炬燵で丸くなってるの?」
「あうぅ……」
「お兄ちゃん、一昨日からそれしか言ってないよ?」
「無駄ですよ、ミーニャさん。お兄さんは自分の同族と化したのです」
「え! じゃあお兄ちゃんも引きこもりに!?」
「その通りです」
「そんなの困るよ!」
「困られても困ります、もう決まったことですから」
黒髪ツーサイドアップにもろ魔法使いな恰好が光る妹兼魔女っ娘のミーニャと、長い白髪に青い瞳、そして青と白を基調とした巫女服を着た狐っ娘であるリンたち二人のいつまでも続く会話を背景に、俺はひたすら思考の闇にどっぷりとつかっていた。
あの日から今日でいったい何日が経ったのだろう――確かミーニャが一昨日とかなんとか言っていた気がするが、よく聞いていなかったのでわからない。
でもどうしてこうなったのだろう。
元の世界では俺は間違いなく勝ち組だった。
なのに今はどうだ……声に出して言うのはアレだが、それなりに大切と思える人たちが出来はしたが、キャリアはどんどん下がって行っている気がする。
最初はこの世界でも頂点目指すと決めて必至に職探した結果、魔王の城で働くというよくよく考えると、かなり上位の部類に入るであろう仕事にありつくことが出来た。
仕事の内容は正直たいしてやりがいがない割には手のかかるものだったが、それでも俺は満足していた。
この調子でどんどん上に行こう。
最終的には魔王にとって代わるのもいいかもしれない――と、実はそんな野心も抱いていたりした。
「あぁ……」
でもそれも全て水の泡。
だってもうクビになったから。
仕事を始めて数日でクビになったから。
特に悪い事してないのにクビになったから。
むしろ感謝されながらクビになったから。
ありえない。
この俺がクビだと?
再び無職のニートに戻ってしまっただと?
ありえない。
認めたくない。
でもいくらそう思ったところで、俺の今はクビになって絶賛傷心中の無職――おまけに職探しもしてないから、完全無欠のニートなわけだ。
「ふ、ふふ……ふははは……」
「お、お兄ちゃん?」
「ふはははははははっ! あ~~~~~~ははははははははははははっ!」
「お兄さんが壊れました、怖いです」
もう笑うしかない。
とりあえず一通り笑ってから、次の事を考え始めよう。




