表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に行ったら妹ができた  作者: 紅葉コウヨウ
第二章 とりあえず働いてみる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/155

第二十四話

引きこもりを部屋から出す。

 それは当人にとっても、その周りに居る人にとってもとても良い事のはずだ――もちろん引きこもりが絶対悪だと言うつもりはない、なにせどうしようもない理由があって引きこもっている人も居るかもしれないから。


 だがこいつは違う。


 調べたわけはない。

誰から聞いたわけでもない。

 だがそれでもわかるのだ。


「お兄さん、お兄さんは鬼畜です」


 床に付くほど長く白い髪に相応しい、白と青を基調として作られた巫女服。さらにその上からどこか幻想的な純白のローブを羽織り、頭に生える狐耳に寄り添させるかのように小さな白銀の冠をちょこんと乗せているこいつ。


 俺の服の裾を掴んでトボトボ歩いているこいつ。

 振り返ると、ひたすらにジト眼を向けてくるこいつ。


「お兄さん、お兄さんは鬼畜です」


 さっきから同じ事しか言ってい来ないこいつの名前はリン――この城の城主であるマオの妹であり、一応時期魔王後継者でもあるらしい。


「お兄さんは――」


「何回同じ事言うんだよ、お前は!」


「相変わらずいいツッコミですね、お兄さん。自分にツッコミを入れてくれる人は居なかったので、とても嬉しいです」


「あぁそう、マオの奴はお前のこと甘やかしてそうだしな」


 それと俺は断じてツッコミ属性を持ちあわせているわけではない。

 よって「いいツッコミ」などと言われても、何も嬉しくない――俺がこうもツッコミを入れたくなるのは、こいつだけなのだから。


「時にお兄さん、今はどこに向かっているんですか? あとゲアラブアの天日干しをもう一つ下さい」


「ん」


 服の裾をくいくいとひっぱってくるリンにゲアラブアの天日干しを渡すと、小さい両手でキャッチしてあむあむと食べ始める。

 さすがマオと同じ狐っ娘なだけあって、その姿はとても可愛らしい。おもわず足を止めてしばらく眺めて居たくなるほどだ。


 だがしかし、俺はそんな気持ちをグッと堪えて、質問の答えを返す。


「とりあえず外に出てみよう」


「…………」


 途端に固まるリン。


 なんだろう、この魂の抜けた様な目は。

 まるで感情の一切が抜け落ちた亡者のような瞳で歩くこいつは何なのだろう。

 そんなに外に出るのが嫌なのだろうか――いや、待てよ。

 まさかこいつ。


「お前ってさ、ひょっとして雷が苦手だから外に出たくないの?」


 可能性はある。

 なんせ姉であるマオがああも雷を怖がって――


「いえ、自分はマオ姉さんと違って雷を怖いとは思いません。自分はただ自分の部屋から出るのが……ひいては外という広大な場所に出るのが非常に面倒くさいだけです」


「あぁ、そう」


 俺の予想は全くの大外れ、こいつはただの引きこもりだ。

 おまけに外どころか部屋からも出たくない、完全な引きこもりだ。


「まぁせっかく着替えたんだ。今日は俺の言う通りにしてもらうぞ」


「言う通りに……自分はお兄さんに言われるがままに脱がされ、着替えさせられ、次はいったいどんな――」


「変な言い方すんな!」


「!」


 またも尻尾をピンと伸ばして、プルプル震えだすリン。

 どうせこうなるなら、おかしなことを言わなければいいのに。

 と、俺は心の中で溜息を吐きながら、目的地目指して歩を進めるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ