第百四十五話
『お兄ちゃんはまだ色々とわからない事が多いだろうから、ミーニャが色々と教えてあげるんだよ!』
『あぁ、助かるよ』
『褒められたんだよ!』
という会話をしたのが一週間前。
そして現在。
「いらっしゃいませ!」
「あれ? 今日は珍しい人が店番をしているね」
俺の店?へとやってきたのは、たまに道ですれ違う優しそうなおばさんだ。
「はい、実は最近――」
この店は私が経営する事になりました。と、そう言いきる前に、おばさんは言わなくてもわかるという顔で。
「仕事を探しているって聞いたけど、ついにミーニャちゃんのところで働き始めたんだね?」
「え、いや……」
「照れなくていいんだよ。妹さんの力を借りるのはお兄さんとしては、少し恥ずかしいかもしれないけど、しっかり働いている事には違いないんだから」
「あ、ありがとう……ございます」
そう。
そうなのだ。
一週間前から現在まで、客の反応がどうもおかしい。
具体的に何がおかしいのかと言うと、一言で明確に答えられる。
「ここ俺の店じゃないの!?」
俺はリゼットに店番を任せ、店の外まで駆けていき看板を見る――そこにかかれた店舗名は『ミーニャ魔法用品店』である。
俺の名前はどこにも書かれていない。
「うん、どう考えてもこれ……ミーニャの店だよな」
しかもこの前、ミーニャとした会話の内容が中々にカオスだ。
『はいこれ!』
『何だこれ?』
『お給料なんだよ!』
働いて三日で給料って早くないか!?
みたいなどうでもいい事は、この際放っておく。
俺が気になったのは一点。
給料。
奴は給料と言ったのだ。
「…………」
あれ、おかしいな。
俺って本当にこの店の主なのか?




