第百二十八話
「なぁ……よければ教えてもらいたんだが」
「何よ!」
「あぁ、えーとだな」
俺はこんな状況にも関わらず、元気に隣を歩いているエリスに対し言葉を続ける。
「当初は炬燵をどうすればいいのかって事だったよな?」
「そうね。あんたが炬燵が小さいとかいうから、それをどうするかって話だったわ!」
「だよな、そーだよな」
なのに俺は今、いったい何をしているのだろう。
まぁだんだんと俺の行動が主軸からずれていくのは、毎度のことなのでさして驚かなくなってきだけどさ。
半ば何かの境地ともいえる俺の心境だが。
それでもやはり思ってしまう。
「もはや炬燵と関係ねぇよ!」
そう、現在俺とエリスは炬燵とは全く関係ない事をしている最中だ――すなわち、凍り付いた家を溶かすために出かけたミーニャとリゼットを探すため、彼女達が差がしているマジックアイテムのある場所に向かっている。
うん。
頭の中で文章にして整理してみたが、やはり読むのが面倒くさそうな文章になったな。
正直な話をすると、どうせ放っておいても二人は帰ってくるわけなので、自宅の前で待機しているなり、俺たちもマオの城に向かうのでもよかったのだが。
「さすがに任せっきりにするのもなんだしな……」
認めることは不本意だが、家がああなった原因の一つには、俺が取った行動――リンが入った炬燵の温度を、マックスにするように命令したってのがある可能性がある。
「はぁ……本当にどうしてこうなったのか」
と、俺がそこまで考えたところで何やら視線を感じたので、感じた方を見てみると。
「…………」
ウワァとでも言いたそうな顔で、こちらを見ているエリスと眼が合う。
「何だよその眼は。何でこっち見てるんだよ?」
「べ、別にあんたの事なんて見てないんだからね! 勘違いしないでよね!」
今度は「ふんっ!」と明確に言葉にしてそっぽを向いてから、彼女は続けて言う。
「ただちょっとドン引きしてただけよ。だってあんた、独り言多いんだもん!」
「ちょっとドン引き……な」
まぁドン引きするのは結構だが、そりゃあ独り言も多くなる。
これだけ心労が溜まれば独り言も多くなるさ。
「はぁ……」
「爺さんみたいね、もっとしっかりしなさいよね!」
「しっかりはしてるよ。それに爺さんバカにすんな」
こんな益体もないやり取りを普段んの調子で続けつつ、俺たちは二人が向かった場所に向かうのだった。




