91話 狐コ好き第一回①
今日は記念すべき第一回配信日...
狐狐のココ好きVtuberという企画の第一歩となる配信だ。
今回出演してくれるVtuberさんは二人。
第0回の反省を踏まえ、出演者は二人としてその二人について詳しく話そうという形に変更された。
理由は話が盛り上がり、尺が足りなくなるからである。
三人や四人などの人数になると一人に対する時間が少なくなり、中途半端な紹介になってしまう可能性があるということで、毎回二人のゲストを呼ぶ配信で決定された。
今回出演してくれるゲストは、椿さんとローバーさんだ。
僕は事前に調べた二人のデータを見返す。
一人目の椿さん。
とあるゲームのプロ選手としてチームに所属していたが、そのゲームがサービスを終了しプロを引退、現在はVtuberとなって活動している。
名前に似合った和風で美少女なモデル、だが声はめちゃくちゃイケボだ。
本人曰く、可愛いものになってみたかったとのこと。
プロ時代から応援しているファンも新しいVtuberの形だ、と応援してくれている。
元プロということだけあってゲームセンスはピカイチ、暴言やネガティブな発言が無く見ていて誰しもが楽しくなるような配信をしている方だ。
ちなみに、プロ時代の名前は『Tubak1』らしい。
二人目のローバーさん。
この方は椿さんのパートナー的存在だ。
椿さんと一緒に同じゲームのプロとして同じチームに所属。
成り行きは椿さんと一緒だ。
ローバーさんは落ち着いたダンディな声をしているのだが、あり得ないくらいふざけるというギャップがある。
いつもは椿さんが大騒ぎして盛り上げるのだが、ローバーさんがふざけて椿さんが突っ込む流れがファンの中では定番になっている。
モデルはストリートでラップを披露していそうな、派手な男性モデル。
被っているキャップには『_』とアンダーバーが書かれている。
というのも、ローバーさんのプロ時代の名前が『_』だからだ。
アンダーバー→低い棒→low bar→ローバーらしい。
僕は二人の配信を見たのだが、常に笑い声に溢れコメント欄も温かい雰囲気で包まれていた。
調べているうちに僕もファンの一人になってしまっている。
(もうそろそろ集合時間か...)
時計を確認し、今回のコラボ用に作った通話部屋を見る。
二人はまだ来ていなかった。
(いや、ここは主催者の僕が最初に入って待っておいた方が良いのかな...)
通話部屋に一人で入室する。
今までMonster Liveのみんなとコラボする時は必ず誰かが入っていることを確認してから入っていたので、一人の通話部屋がものすごく寂しく感じた。
待ち時間にモデルを確認しようとしていると、入室音が聞こえた。
心臓が一瞬でギュッとなり、若干パニック気味になるが、落ち着いて対応する。
どうやら椿さんが来たようだ。
「は、はじめまして!」
「......」
「えっと...改めまして九尾狐狐と申します...!
ほ、本日はよ、よろしくお願いします...!」
「......」
「あ、あのぉ...」
「......」
頑張って話したせいで呼吸が乱れる。
最近、自分の話せないという本能に逆らうことで初対面の人とでも話せることができるようになっていた。
だが、流石に無視されるのは慣れていない。
頑張ったのにという気持ちと悲しさで視界がぼやけてくる。
「あ...あのぉ...き、聞こえてますか...?」
「あーあー、すんません!
スピーカーの出力が間違ってたみたいで」
「そ、そうだったんですね...」
「ちょっ!?な、なんで泣いてるんです!?」
「は、話しかけても返事がなくて...」
そこでもう一度入室音が聞こえた。
ローバーさんが来たみたいだ。
「あ、ローバーさん、はじめまして...
今日はよろしくお願いします...!」
「はじめまして、なんで泣いてるんですか?
またこいつなんかやりましたか...
やっぱなぁ...」
「おいちょっと待ってくれ、説明させてくれんか?」
「初対面の女の子泣かすのはもう言い逃れできんよ」
「ち、違うんです...
椿さんはスピーカーの出力を間違ってただけで...
僕が勝手に無視されたと勘違いしてしまって...」
「大丈夫っすよ狐狐さん、悪いの全部こいつなんで」
「だから説明をさせてくれんか!?」
「ふふっ...」
アーカイブや切り抜きで見た二人のやりとり、僕は思わず笑ってしまった。
このテンポのいいプロレスが二人が人気である秘訣なのだろうか。
「よかった〜、狐狐さん笑ってくれた〜...
まじでもうVtuber界から消されるかと思った」
「け、消さないですよ...」
「というか顔合わせなのに俺自己紹介してないんだけど」
「お前自己紹介もしてなかったのかよ...
あ、ローバーと言います。
今日はコラボしていただきありがとうございます」
「俺は椿です!
狐狐さんのめっちゃファンです!
今日はよろしくお願いしま〜す!」
「はい、僕は九尾狐狐です、今日はよろしくお願いしますね。
僕もお二方の配信を見てファンになりましたよ」
「おい聞いたかロバ君!
俺と狐狐さん相思相愛っぽいな!」
「愛はないやろな」
「スゥ...ないよな〜...」
「あ、僕のことは好きに呼んでいいですよ」
「じゃあ狐狐ちゃんでいいですか?
ずっとちゃんで呼びたかったんですよ!」
「はい、大丈夫です!」
「じゃあ俺もいいっすか?」
「もちろんです!」
「狐狐ちゃん...」
「はい、なんでしょう?」
「呼んだだけ...」
「お前それはキモ過ぎるって、ライン踏み越えてるだろ」
「キモかったかぁ...」
「いえ、イケボでカッコよかったですよ」
「はぅあ!?イケボ言われたで俺!」
「狐狐ちゃんほんとごめんなさい、こいつ距離の詰め方がえぐいんすよ...」
「だ、大丈夫ですよ、僕から距離詰めるの苦手なのでこのくらいでもありがたいくらいです」
そうこう話しているうちに配信開始時間となる。
二人との間の距離感も近くなったと思う。
配信待機場を作り、その時を待つのだった。
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