85話　自分の強み

「ふぅ...」

昨日休んだ分もノートにまとめ終わり、今日の配信の準備をする。

渡さんから借りたノートは傷付けないよう、丁寧にカバンに入れておく。

今日の配信は質問に答えながら雑談をしようと思っていたが、何か新しいことに挑戦しようかなという気持ちが出てきた。

(苦手なものを克服していきたいな...)

そう思いながら配信の準備を進める。

配信前に少し声を出して喉を慣らしておく。

歌と同様に声の出し方が悪いのか、話し続けていると喉がちょっとずつ痛くなってきてしまう。

(こういう所も改善していこ)

@九尾狐狐　Monster Live三期生

今日の雑談配信はいろんな質問に答えようと思います

気になる事があるココ友の皆さんは質問を考えて来て下さいね！

#狐狐ライブ

【雑談】なんでも答える質問配信！【九尾狐狐】配信待機中

告知していた配信時間になり、待機画面を切り替える。

オープニングが流れ終わった後、僕のモデルとコメント欄が見える画面が映った。

「皆さんここにちは〜」

【ここにちは！】

【ここにちは〜】

【ここにちは！！！】

【なんでも答えてくれると聞いて】

【質問考えて来た！】

「質問なんでも答えますよ、配信に乗せられないような質問はスルーしますけど」

すると、コメント欄が一気に質問で埋まっていく。

流れが速くなりすぎて質問が一つも見えない...

こんなにも僕に聞きたい事があるんだと思うと、どこか嬉しい気持ちがある。

「かなりの量の質問があるので、少しずつ答えていきますね。

質問したい人はコメントの最初に質問と書いてくれると助かります」

【了解！】

【質問、狐狐ちゃんの同人誌描いてもいいですか！？】

【はーい】

【いきなりヤベェ質問あるんだがw】

【初っ端顔面ストレートの質問だな】

「今質問コメントを見ていっているんですけど、こういう質問意外とありますね...

サクッと答えると僕のことは自由に描いてください。

というか僕を描いていただけるだけで嬉しいので、描く方は許可とか取らなくて大丈夫ですよ。

流石にMonster Liveを悪く見せるような描き方は許せませんけどね」

【狐狐ちゃんらしいな】

【というか狐狐ちゃんえっち系大丈夫なんかw】

【可愛い子なのにそっち方面まで許してくれるとか最高すぎる】

【あんまり狐狐ちゃんをえっちな目で見たことない】

「僕もずっと見てる側でしたからね、どんな姿でも推しは可愛いんですよ...」

【狐狐ちゃん同人誌見てるのか...？】

【今思うとセンシティブアートのタグ作ってくれてるし、最初から公認じゃん】

【俺たまに狐狐ちゃんのセンシティブアート見てるけど、めっちゃエッだぞw】

「待ってください。

このままだとこのトークで配信終わってしまうので、この続きはまたの機会に」

コメント欄までそっち系の話になり始めてしまったので、一旦落ち着かせる。

こういった話が苦手な人もいると思うので、僕は急いで次の質問を拾う。

「次！狐狐ちゃんのMonster Liveトークを聞きたいです。

...めちゃくちゃ語っちゃうのでまたの機会に」

【俺も早口トークめっちゃ好きw】

【好きなものをみんなに広めたい子供みたいな感じで話すよな】

【それが可愛いんよ...】

「次！狐狐ちゃんが好きな食べ物はなんですか？

僕は餅入りの最中が大好きですね、縁側で食べたいです...」

【和菓子好きか〜いいね〜】

【ロリババアが頭に浮かんだw】

【縁側で最中食べる狐狐ちゃんのファンアート待ってる】

【狐狐ちゃん最中好き解釈一致】

【縁側座って日差しに目を細めてほしいw】

【飲み物は緑茶？】

「よくわかりましたね！

最中と緑茶のコンビは最強ですよ！？」

【狐狐ちゃんの声大きくなったw】

【よほど最中好きなんだな】

【流石狐の妖怪】

【尻尾に最中の欠片付いてて欲しいw】

【大きい尻尾九本もあったら箒みたいになっちゃうでしょ...w】

その後もいろんな質問に答えていき、見ている人も質問を絶やさないように送ってくれた。

配信時間も終わりに近づき、僕は逆に見ているみんなに質問も投げかける。

「皆さんに質問したいんですけど、Monster Liveって新しいプロジェクト始まってるじゃないですか。

僕も何か新しいことにチャレンジしたいんですけど、何をしていいか分からないんですよね...

何か助言をいただきたいです...！」

【狐狐ちゃんが新しいことに挑戦しようとしている...】

【自分がやりたいことすればいいんじゃないかな】

【今できていなくて、できるようになりたいこととかは？】

「逆にできない事が多すぎて、何から手をつければいいのか...」

【とりあえず自信をもって行動できるようにしたら？】

【そもそも大勢に見られながら話せるようになってる時点で超成長してるぞ】

【初配信の自分見て元気出して】

「初配信の話はやめてください...

撮り直したいですよ...」

【俺は初配信大好きだぞ】

【俺も好き】

【あれは保護欲掻き立てられるよな】

【演技じゃなくてガチなんだもんw】

コメントで初配信のことをいじられる。

嫌な気持ちにはならないが、ただ恥ずかしい...

確かにそう考えれば僕自身成長はできていると思う。

人と話すだけで倒れそうになっていた僕が、今じゃ画面越しとはいえ大勢の前で話せているのだ。

でも、それでようやく周りの人のスタートラインに立てたと思えるレベルだ。

他のMonster Liveのみんなはそれぞれに強みがある。

そのことを考えてしまうと劣等感を感じてしまう。

「Monster Liveのみんなは強みを持ってて、僕には何があるのかなって...」

【あらら、ネガティブな狐狐ちゃん出て来ちゃった】

【そこまで気にしなくても俺らは応援してる】

【狐狐ちゃんの強みは周りにはない保護欲を掻き立てる可愛さだぞ！】

気付くとネガティブな発言をしてしまっていた。

マネージャーさんからはあんまりネガティブにならないでくださいと言われていたのに...

こう思うと更にネガティブな考えになってしまう。

そんな時、一つのコメントに視線が吸い寄せられた。

【狐狐ちゃんはMonster Live愛だったら誰にも負けないだろ】

誰にも負けない、そんな自信を持てるものが僕にもあった。

そう思うと悩んでいたことが一気に晴れる感覚がした。