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前世がコミュ障男な僕がVtuberになれますか?  作者: カムカム
7章 コミュ障、同期の新衣装!?
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77話 自分の事

気が付くと昔まで見慣れていた光景が目に入った。

...前世の世界だ。


どうやら僕は前世住んでいた家の映像を見ているようで、目の前には幼い頃の自分がいた。

紙に学校から持ち帰ったクレヨンで絵を描いている。

歪んだ字で「おかあさん」と書かれ、紙の中心には子供らしい絵が描かれていた。


「できたっ!」


完成したのか、小さい僕はお母さんの元へ絵を見せにいく。

寝ているお母さんを揺らして起こし、絵を両手で広げる。


「お母さん!見て!」


「...ん?」


「どお?」


「うん、ありがとう...。

でもクレヨンの無駄遣いはやめてね...」


「あ、うん...ごめんなさい...」


僕の描いた絵を受け取ったお母さんは絵を机に置くと、また眠り始めてしまった。

小さい僕は散らかったクレヨンを箱に仕舞ってカバンに片付ける。

小さい僕の顔は悲しい顔をしていた。


その場面を見届けると、視界は光に包まれる。

次に見える時には小学生になっていた。


「○○君が鬼ね!」


「うん分かった!」


少し大きくなった僕が鬼役になって鬼ごっこが始まる。

だが、運動が苦手な僕は誰にタッチできることもなく数分が経つ。

足の速い同級生が息を切らした僕に近づいてくる。


「○○君足遅いから鬼ごっこつまらない!

俺が鬼役になってやる〜!」


「あはは、お前鬼になったら誰も逃げれないよ!」


「でも○○君が鬼よりは楽しいと思うけど」


「じゃあ一回やってみる?」


「おう!○○君は一回休みな!」


そう言われ未だ息の整わない僕は木陰に座り込み、笑いながら鬼ごっこするみんなを眺めていた。




その後も、中学生高校生社会人と昔の場面が映像として流れていく。

どれも僕が何かすると良くない方向に働いてしまう。

目を背けたかったが、なぜか視線を動かせなかった。


(嫌なことばっかり思い出しちゃったな...)


僕は泣きそうだったが、涙は流れなかった。

これが夢なら早く目が覚めてほしい。

前世の嫌な思い出だけを見せるなんて、僕をそんなにいじめたいのか...


すると、最初の場面まで映像が戻された。

もう一度絵を描く僕が映される。


(なんでまた...)


だが、ただ巻き戻されただけではなかった。

その先の映像が見える。


「○○...ごめんね、ママ疲れてて...」


お母さんは寝室で寝てしまった僕にそう呟くと、リビングに戻る。

机に置かれた僕の絵を手に取り、大事そうにクリアファイルに入れた。

その絵はお母さんの部屋の毎日視界に入る壁に飾られていた。


お母さんは少しでも家にお金を入れようとお父さんと共働きしていたのだ。

家事に加え慣れない仕事、疲労困憊だったのだろう。

そっけない返事をしてしまったが、本当はとても嬉しかったのだ。


だが、僕の思い違いでお母さんに嫌われていると感じてしまった。

そこから両親との間にも少し壁ができてしまう。




そして小学生の頃の映像に移った。

僕が木陰で休んでいる場面、足の速い子が映像に映る。


「なんで○○君と鬼を変わったの?」


「だって○○君苦しそうな顔してたから」


当たり前のようにそう答えた。

友達もそうなんだと反応すると、すぐに鬼ごっこに戻っていく。


僕はこの後のことを思い出した。

休み時間が終わり、教室に戻ろうとした時倒れてしまったんだ。

保健室で休み、その日は早退した。

軽い熱中症のようだったが、これ以上炎天下の中遊んでいたらもっと酷いことになっていたらしい。


足の速い子は僕の異変に気付いて代わってくれたのに、僕は冗談混じりの言葉を鵜呑みにして友達の輪から外されたと思い込んでしまった。

その時から、友達との関わり方も分からなくなっていった。


中学生の時も高校生の時も社会人になっても、僕は自分の思い違いで勝手に他人と距離を置いてしまっていた。


(全部、僕が悪かったんだ...)


気付けなかった悔しさ、自分の情けなさに顔を俯けた。




気が付くと今の僕の部屋の天井が見えた。

やっぱり夢だったようだ。

でも、はっきりと内容を覚えている。

僕は急いでお母さんの元に向かった。


扉を開けた音、階段を下りる音で分かったのかリビングに行くとお母さんと目が合う。

お母さんの目は赤く腫れていた。


「歩...」


「お母さん、ごめんなさい!!」


「え...」


「僕の勝手な思い違いでお母さんに迷惑かけちゃって...」


「お母さんだって、はっきり言えば良かったって...ごめんね...」


「そんなことない!

僕はすぐ自分の考えだけで行動して、周りの状況見なくて...それで...」


お母さんは僕の頭に手を乗せる。


「歩は大丈夫だよ。

そう思っていれば変われるから。

歩がなんでも頑張れることは知ってるから」


「お母さん...」


「配信で見ている人を飽きさせないように話題を付箋に書いて壁に貼ったり、コラボ相手のことを事前に調べたり、配信するゲームを練習したり。

歩はちゃんと頑張ってるから、大丈夫」


そう言われ、何か引っ掛かっていた心が軽くなった気がした。

僕は頑張っているんだ、僕は成長できているんだ。

自然と自信が湧いてきた。


「改めて言うね。

お母さんはMonster Live専属のイラストレーターとして歩を応募したんじゃなくて、一人のお母さんとして応募したの。


今こうやって配信できているのは歩の努力の証、みんなが応援してくれるのも歩が一生懸命だから応援してくれたり、お金を投げてくれたりするの」


「うん...」


「ふふ、泣かないの。

なんてったってお母さんが九尾狐狐の一番最初のファンなんだもん、ずっと応援してるよ」


「ありがとう...」


僕はお母さんに抱きつく。

温かい感触に心が落ち着く。

それだけでなく、これからもっと配信を頑張ろうと静かに心が燃え上がるのだった。

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