66話 第一回ML杯①
合計五回戦行う今回のイベント。
その一戦目が始まった。
僕達はひとまず生き残ることを考え、マップの端へ降りる。
アイテムは少ないが移動しながら集めれば問題は無いだろう。
「レヴィちゃん回復アイテム持ってる?」
「持ってるよ!」
「こっちにソウルあるのです」
「俺もらって良いですか?」
「どうぞです」
みんなの報告が飛び交う。
僕はというと緊張でガチガチに体が固まっていた。
僕が失敗してチームが負けてしまったらどうしよう、そんな考えばかりが頭に浮かぶ。
「狐狐ちゃん!敵いたよ!」
「え...!?」
キラリちゃんの声で我に帰る。
画面を見ると正面にある二階建ての建物に人影が見えた。
わざわざアイテムが少ない場所を選んだというのに、同じ考えをしたパーティーがいたようだ。
みんなも集めた装備を構えて戦闘に備える。
僕が戦いやすい建物に移動しようと動き始めた時、相手の持つ遠距離武器の銃弾が僕のすぐ隣を通って行った。
「う、撃ってきた!」
「やっぱりバレてたか...!」
「迎え撃とう!」
「狐狐さんは移動してて大丈夫ですからね」
「私達に任せるのです」
「ご、ごめん...!」
静かだったフィールドが一つの銃声を合図に戦場と化す。
僕は何発か食らいながらもなんとか建物内に避難して回復アイテムで受けたダメージを回復する。
その間にキラリちゃんが一人をダウンさせ、復活させようとダウンした仲間の元に近付いた相手にかなりのダメージを与えていた。
「狐狐ちゃん回復したら詰めよう!」
「了解なのです」
「わ、わかった...!」
「相手が回復する前に決め切るよ!」
「スキル使ってここにいる敵を攻撃しに行きます」
チーターのソウルを持つ工作さんが別の建物に潜む相手チームの一人を倒しに行く。
残りの四人でその隣の家にいる敵を倒す作戦で僕達は動き始めた。
窓から爆弾を投げ入れ、出入り口からは僕達が突入する。
相手チームはもうどうしようもないだろう。
そんな時だった。
「まずい別パーティーだ!」
キラリちゃんが気付く頃にはきのこさんがダウンさせられていた。
ログを見るとニコさんのパーティーだ。
遮蔽物が少ない場所にいる僕達に向かって銃弾が大量に放たれる。
「私のことは気にせず逃げるのです!」
「ニコさんが来るのは聞いてないぞ!?」
「よりにもよってニコさんのパーティーが来るなんて...」
「と、とりあえず建物内に入りました...」
僕達は避難している間に、ニコさんのパーティーが僕達が相手していたパーティーとの距離を詰める。
そのパーティーはリンさんのパーティーだった。
リンさん達は僕とニコさんのパーティーに挟まれて身動きが取れず、全員が倒されてしまった。
右上にログが流れ、そこにはニコさんのパーティーメンバーの名前が並ぶ。
「やば...」
「私達がダメージ与えてたとはいえ一瞬か...」
「こ、怖過ぎるのです...」
「とりあえず回復しよ!」
「私はもう大丈夫、狐狐ちゃん結構撃たれてなかった?」
「回復アイテムもうないです...」
「私のアイテム分けてあげる」
キラリちゃんが回復アイテムを分けてくれるが、やはり雀の涙ほどだった。
ただでさえアイテムが少ないエリアに降りたのだ、回復アイテムが充実するはずがない。
そうこうしているうちにニコさんのパーティーが僕達がいる建物に突入してくる。
凄まじい足音とスキル発動音が聞こえた。
「来るよ!」
キラリちゃんの声とほぼ同時にニコさんのパーティーが全方位から攻撃を仕掛けてくる。
窓からは爆弾、扉からはニコさん達。
僕達がリンさんパーティーにしようとしていた作戦をそっくりそのまま返された気分だった。
「ごめん!ダウンした!」
「俺ももうやばい!」
「一人はやったのです...!
けどダウンしたのです...」
一気に崩壊していく、僕もどうすることも出来ずに撃ち倒されてしまった。
やがて残ったのはキラリちゃんだけとなる。
「なんの...!これしき...!!」
建物内を上下左右に移動しながら三人を相手する。
画面は酔いそうなほどに動き、素人目には何がどうなっているのか分からなかった。
この時キラリちゃんは『ダメージはないが味方にも弾が当たる』というシステムと狭い室内を活かし、相手のエイムをずらしながら撃たれる弾の数を最小限にしていた。
キラリちゃんの作戦は上手くいっていたが、数秒後にはニコさんに対応され倒されてしまい、僕達のキャラがアイテムボックスとなって戦線離脱した。
画面はニコさんのパーティーメンバーの視点が映る。
「うわぁ...強いなぁ...」
「一戦目はすぐやられちゃったね...」
「ですね、でも相手が悪かったと思いますよこれは...」
「それはそうなのです」
「ニコさんのパーティー強かったなぁ...」
【ナイストライ!】
【ニコさんパーティーつっよ...w】
【ナイストライ】
【まだ初戦だから次や】
コメントでも励ましのコメントが目立つ。
僕達は他のパーティーの戦いを見ながら、雑談をして気持ちを落ち着かせる。
コメントにもある通り初戦で緊張していたのかもしれない。
僕達は次の戦いに向けて作戦を立てるのだった。




