62話 練習の成果?
キラリちゃんに送ってもらったゲームのインストールが完了した。
このゲームは『超鬼ごっこ』という鬼役の先生陣営一人対逃げ役の学生四人で鬼ごっこをする対人戦3Dモデルのゲームだ。
鬼役は耳を澄ますなどの逃げ役に場所を索敵する能力を持ち、逆に逃げ役は落とし穴などの妨害をできる能力を持っている。
更に逃げ役はバリアを使うことができ、マップ場の特定の位置にあるお守りを回収するとバリアが復活し、鬼役のタッチを一度無効にできる。
バリアがない状態でタッチされると、一度目のタッチでは息が上がりやすくなり呼吸音でバレやすくなる。
二度目のタッチでは疲労状態となりその場で座り込んでしまう。
その状態になると鬼役に連れられ、反省部屋に閉じ込められて動けなくなる。
仲間の逃げ役はピッキングで反省部屋の扉を開ければ救出することができるのだが、最大三回捕まると指導室に連れていかれゲームから退場させられてしまう。
そして、逃げ役の勝利条件はただ逃げることではなくマップのどこかにある鍵を集めて部屋を合計五箇所開放し、五箇所目の部屋にある鬼ごっこ終了のボタンがある部屋に行ってそのボタンを押さなければいけないらしい。
このように互いに能力を駆使しながら鬼ごっこをするというのがこのゲームだ。
と、キラリちゃんから説明を受けた。
鬼役や逃げ役にもキャラがいてそれぞれ『個性』という元からある能力が違うので、いろんな戦略が考えられそうだ。
だが、今回はみんなで遊ぼうという企画なので変に考えずに遊ぶことにする。
「最初は私がチュートリアル鬼やっちゃうよ〜」
「いきなり吉良さんですか...」
「造君文句あるの〜?」
「吉良さんゲーム全般凄く上手いじゃないですか、ボコボコにされそうで怖いですよ...」
「大丈夫大丈夫〜、チュートリアル用に優しくするから!」
「絶対私が勝つよ〜」
「ふっふっふ...レヴィちゃん、私から逃げられるかな!」
キラリちゃんの開いた部屋に入り、それぞれキャラクターを選ぶ。
僕は『ガキ大将』を選択した。
足が他キャラより遅いがマップに散りばめられたドングリを拾うことで投擲武器として鬼役を少しの間スタン状態にできるらしい。
レヴィちゃんは鬼がいる方向を東西南北の四方向で把握できる索敵キャラの『ガリ勉』を選んだ。
工作さんは『大工の息子』を選択、偽物の反省室をマップに配置することができその部屋をしようとすると、トラップが作動して疲労状態でダウンし連れて行かれている逃げ役が一段階回復するというキャラ。
きのこさんは『お嬢様』を選んだ。
札束を落とすと札束を中心にフィールドを展開し、そのフィールドに入ると札束に吸い寄せられてしまうという逃げる際に強いキャラだ。
「みんな選び終わったかな〜?
と言ってもこっちからは選んだキャラ見えるんだけどね」
「鬼からは見えるんですね」
「ずるい!」
「今回はチュートリアルって事で鬼がどのキャラか教えてあげるね。
今回は『家庭科教師』を選んだよ、効果は偽物のお守りをマップに配置する能力だね」
「お、俺の鬼バージョンじゃないか!?」
「その通り!
ちなみに偽物のお守りを持っているとバリアが使えないんだけど、偽物か本物かはタッチされてからのお楽しみだよ〜」
「一気にお守りの信頼性無くなったんですけど!?」
「キラリちゃん性格悪いのです...」
「これでも弱い鬼役って言われてるんだって」
「鬼役もいろいろあるんですね...」
「とにかく逃げまくる!」
「さあ、ゲームスタートだよ!」
キラリちゃんの合図と共にゲームが始まり、画面はロードを挟んでマップを映し出す。
マップは『無駄に大きい体育館』、さまざまな道具が散らばった巨大な体育館だ。
キャラが動かせるようになり、僕はアイテムのドングリを集めながら鍵を探していく。
その時心臓の音が大きくなり、曲がり角からキラリちゃんが現れた。
「わぁ!?」
「狐狐ちゃん発見!」
「く、食らえ...!!」
僕は持っていたドングリを咄嗟にキラリちゃんに投げる。
そのドングリは寸分狂わずキラリちゃんの頭に飛んでいく。
エイム練習の成果がこんな所で出ることになるとは思わなかった。
「え、ドングリ投げるの上手いっ!」
「あ、ありがとうございます!」
【エイム良っw】
【エイム練習やってて良かったな】
【これ狐狐ちゃんめっちゃ強いんじゃね?】
【綺麗なヘッドライン】
【うめぇw】
キラリちゃんが数秒スタンし、僕はその間に死角に隠れる。
だがさすがと言うべきか、すぐにまた見つけられ捕まってしまった。
「狐狐ちゃん捕まえた〜!」
「掴まないでください〜...」
「狐狐ちゃん助けにいくからね!」
「キラリさん許さないのです...」
「なんで私にヘイト向いてるの!?」
その後、助けにきた全員を流れる様に薙ぎ倒しキラリちゃんの勝利で終わった。
配信が終わる時間まで鬼役を交代してゲームを楽しんだ。
一緒に遊んでいくうちに自然と心が開けてきた感覚がした。
Monster Live杯、この五人で良い戦績を残したいなと思いながら今日の配信を終えるのだった。




