21話 新衣装会議...!
昨日の盛り上がりが嘘のような朝を迎えた。
外から聞こえる鳥の鳴き声、ロマンチックな起き方をしちゃったな...なんて思いながら日課になっているエゴサをする。
自分のタグで検索すると可愛らしい絵がずらっと表示された。
ココ友の皆さんは神か...?
(お礼になるか分からないけどいいねさせてもらおう)
かつて視聴者だった僕も応援イラストを描こうとしたが、画力も無く推しに見せる自信がなかった。
だが、実際もらう立場になると絵の上手さなんて関係ない、描いてもらえるだけでものすごく嬉しいのだ。
一通りいいねを押させてもらったらもう一つのタグを検索する。
そう、センシティブなイラストだ...
性格のせいか僕が受けになっている絵が多い、というか狐狐受けの絵しかない。
流石にセンシティブイラストをいいねするのはやめておくが、心の中でお礼を言っておく。
そしてこっそりパソコンの秘蔵ファイルに保存した...
「今日は配信ないの?」
「夜にお疲れ様会的な配信をしようと思ってる」
「やった、見るわね!」
「う、うん...」
朝ご飯をお母さんと食べている時に配信の話になった。
今やお母さんも僕の配信を待つ視聴者になっている、というより親バカなのだろう。
自分の母親ではあるが、溺愛されているのが身に染みる。
「お母さんは今日の用事は?」
「今日もお仕事!家でできるお仕事だからね、でも私自身楽しんでるし新しいお仕事来て張り切ってるの!」
「そうなんだ、無理しないでね」
「うん、ありがとう」
「ごちそうさまでした、お皿洗っておくよ」
「あら、いいの?」
「これくらい任せて」
お母さんと自分の皿とコップを台所に運ぶ、僕は身長が低いので土台を使わないといけない。
しかも手も小さいのでスポンジが大きく感じる。
だが、今までずっと手伝ってきたのでこの体の扱いも慣れ、スムーズに皿洗いを済ませた。
お母さんはすでに仕事場である自室に戻り、僕も皿を乾燥機に入れて自室に戻る。
配信の準備をしようといつも通り、話そうと思う話題を箇条書きして壁に貼っておく。
今まで何度か雑談配信をしてきたが、何を話せばいいか分からなくなった時に壁に貼ったメモが大活躍するのだ。
今日もMonster Live大運動会のことや先輩のことなどメモっていく。
いつかはメモしなくても落ち着いて話せるようになりたいな...
メモを書き終え、いろんなVtuberの配信を見る。
自分も配信する側になると他の配信者の話し方など細かいところに目が行きがちになる。
だからといって楽しめなくなった訳ではなく、自分と違うところやその人の良さに気付くことができ、新たな視点で楽しむことができるようになった。
最近はMonster Live以外にも個人勢配信者もチェックしている。
お昼ご飯を食べ終わって食器の片付けも済ませた頃、マネージャーから連絡が入った。
『こんにちは。
もうすぐチャンネル登録者が五万人を突破しそうですね。
ご存知とは思いますが新衣装の件で連絡させていただきました。
お時間よろしいですか?』
『はい、大丈夫です』
『では通話部屋でお待ちしています』
その連絡で僕は心躍った、新衣装といえばVtuberのビッグイベントの一つ。
Monster Liveはチャンネル登録者五万人で新衣装がプレゼントされるシステムだ。
推しであるルドラさんは初期衣装が騎士団のようなカッコイイ系だったが、チャンネル登録者五万人記念の新衣装はオフスタイルということでワンピース姿の可愛い系だった。
僕はもちろん、その他ファン達はギャップに萌えたことだろう...
僕はシャベルを起動し通話部屋に向かう。
既にマネージャーが待機している通話部屋に入室する。
「狐狐さん、こんにちは」
「はい、こんにちは」
「チャンネル登録者五万人目前ですね!」
「そうですね、ありがたいことに...」
「早速本題に入りますが、新衣装何か希望はありますか?」
「新衣装...何が良いんですかね...」
「そうですね、もしかしたら3D化した時にその衣装が実装される可能性もあるのでファンの喜びそうな衣装が良いかもしれませんね。
もちろん狐狐さんが着たい衣装が一番ですけど」
「僕が着たい衣装ですか...」
改めて自分のモデルを見る。
今の衣装は上下真っ黒...白髪美少女のケモ耳...
頭の中でいろんなVtuberの衣装を思い浮かべ、このモデルに似合いそうなものを探す。
というか今が全身真っ黒だから何着てもギャップは発生するんじゃないか...?
僕は視点を変えてみて視聴者側だったらこの子にどんな衣装を着てほしいか考える。
「やっぱり可愛い系の衣装を着させてみたいですね...」
「狐狐さんもそう思いますか」
「もしかしてマネージャーさんも...?」
「実は可愛い服を着てるところを見たいなと思っていました」
「可愛い服と言ってもどんな服がいいんでしょう...」
僕はずっと男っぽい服しか着てこなかったので、可愛い服を全然知らない。
どうしようかなと無言になって悩んでいるとマネージャーが話を切り出した。
「実はセブン先生にお任せすることもできます」
「お任せ...ですか...」
「案はラフ画で送られると思うので、着たくない衣装を勝手に実装するようなことはないですよ」
「で、ではおまかせでお願いします...!」
「分かりました、そのように話を通しておきます」
「お願いします...!」
そう言って新衣装の話を終え、通話部屋から退出する。
一度冒険しようと思いお任せで頼むことにした。
もちろん冒険したいからという理由だけでなく、セブン先生がどんな衣装を作るのかがものすごく気になってしまったのだ。
(楽しみだな...)
僕は自然と笑みをこぼしながら今日の配信の準備をする。




