153話 3D狐狐ちゃん②
Monster Liveからメッセージが届く。
添付されていたのはモデルのファイルだった。
丁寧に解凍の仕方や配信ソフトに実装するやり方がマニュアルとして付いている。
(つ...遂に来ちゃった...)
自分の3Dモデルが手元に届いたという驚きと嬉しさで思わず手が止まる。
微かに震える手を抑えながら、僕はモデルを配信ソフトに実装していく。
どこに保存したか分かりやすいようにフォルダも作った。
準備は整った...
僕は体の関節部分にバンドを巻き、電源を入れる。
パソコンの画面には僕の部屋の3Dモデルが映り、モデルのローディングが行われている。
そして、モデルが姿を現した。
「わぁ...」
思わず声が漏れる。
僕がいるのだ、この画面の中に...
右腕を上げれば画面の中の狐狐も腕を上げる。
僕が一回転すれば同じように回る。
体が隠れてしまいそうな大きい9本の白い尻尾、頭の上に見える狐耳とちょんまげが体の動きに合わせてふわふわと揺れる。
表現はカメラで認識して反映しているらしい。
僕は初めて2Dのモデルを動かした時と同じように色んな動きを試した。
ドッキリ当日、僕が重大発表として告知しみんなを招待した。
僕の3D化を知るのは運営とマネージャーさんだけだ。
バレないように気を付けながら、三期生の通話部屋に入室する。
奈女々ちゃんはまだだけど、鳴子ちゃんとドクロちゃんは既に入室していた。
「...こんばんは〜」
「狐狐ちゃん!重大発表って...大丈夫なの...?」
「狐狐ちゃん、心配...」
「だ、大丈夫...!い、引退とか、えっと...そういうのじゃないし...!」
「また体調崩した...?」
「あ、あれから体調には気をつけてるし...!うん、大丈夫だよ...?」
人生初のドッキリに心臓が今までにないくらい跳ねるように動く。
どうにかバレないように振る舞うが、質問されるたびにバレそうになってしまう。
そんな時、奈女々ちゃんが入室してきた。
「狐狐ちゃん大丈夫〜!?」
「あ、奈女々ちゃん...大丈夫だよ...!」
「困ったら養ってあげるからね!」
「なんでそうなるのよ...」
「狐狐ちゃんのお母さんはセブンママ、いやらしい話だけど食うには困らない」
「そ、それもそうか〜...とりあえず大丈夫なんだよね?」
「う、うん...!大丈夫だって...!
ほ、ほら...!配信始めるよ...!」
僕は逃げるようにして配信を始めるのだった。
【重大発表】九尾狐狐、重大発表します【九尾狐狐/鬼野鳴子/赤桶奈女々/ガシャ=ド=クロ】配信中
@九尾狐狐 Monster Live三期生
今日の配信では三期生のみんなに見守られながら、重大発表をします。
本当に重大発表なのできてくださいね
#狐狐ライブ
配信待機中からコメントの流れは止まることを知らない。
流石に心配する声が多いので心を少し痛めながら、早めに配信を始める。
「皆さん、ここにちは」
重大発表という事で少しテンション低めの挨拶をする。
こうした方がドッキリ感が出るだろう。
【ここにちは】
【引退とかないよな...?】
【心配でしかない...】
【今日仕事手に付かなかったし...】
【俺もめっちゃ凡ミスしてしまったわw】
マネージャーさんからは自由に発表して良いと背中を押されたので、思いっきり発表する。
僕は何も言わずに自室の3Dモデルを配信に映した。
「タイトルにもある通り、重大発表があります!」
テンションを一気に上げてコメントの反応を待った。
僕の部屋が3D化している事で察したのか、コメント欄の速度が目に追えないほどになる。
【マ?マ?】
【嘘でしょ!?マジで!?】
【やばいやばいyばいあy!!!!】
【お前ら落ち着け!落ち着けぇええ!!】
僕は楽しくなってしまい、カメラ外から手だけを配信に映るように伸ばした。
ちなみにコメントはパソコンから離れていても見られるようにスマホで確認している。
配信に僕の手が映り、また一段とコメントが加速した。
【うわぁああ!!!】
【生きててよかった...】
【おめでたすぎる...】
【もう泣きそうw】
流石に焦らし過ぎるのも申し訳ないので、発表しながら姿を現す事にする。
「ということで...!
僕、九尾狐狐は3D化しました〜!」
喜びを表現しようとジャンプしながらカメラの前に登場...しようとした...
足元には興奮のあまり片付け忘れていた説明書が置かれ、まだ寒いからと部屋に敷いてあるカーペットはふかふかのタイプである。
つまり、圧倒的に滑る。
配信画面では両手両足を目一杯伸ばした僕が画面外から現れたと思った矢先、思いっきり転んだ。
カーペットで衝撃が緩和されるが、鈍い痛みが右半身を襲う。
「「「狐狐ちゃん!?」」」
【えぇええ!?】
【狐狐ちゃん大丈夫か!?】
【なんというか...狐狐ちゃんらしいというか...】
【喜びの表現がまんま狐狐ちゃん...】
「うぐ...痛い...」
なんとかよろよろと立ちあがろうとしたら、部屋の扉が開かれる。
お母さんが心配そうにこちらを見ていた。
手には保冷剤を布で包んだものが握られていた。
「あ、ありがとう...」
「冷やしてね...」
【セブンママ声入ってるw】
【これはお母さん】
【流石w配信見てるなこれw】
僕はなんとか体勢を立て直し、足元の説明書は部屋の端に片付けた。
「ということで、3D化しました...!」
僕の記念すべき3D化配信は大コケから始まる事になってしまった...
読んでいただきありがとうございます!
誤字脱字等ありましたら報告していただけると助かります...!
Twitter作ってみました!
気軽にフォロー、DMなどどうぞ!
感想やご意見など励みになります!
@_Kamu_Kamu




