150話 新しい道
ある日、チームここからのチャットグループに椿さんからメッセージが届いた。
次の休みにファンボを一緒に配信しようという内容だ。
僕はいつも通り予定がないのですぐに返答した。
ニコさん、小豆さんも大丈夫と返答し、次の休みの予定が決まった。
配信の告知を投稿すると伝説のチームが復活すると話題になった...
数日は瞬く間に過ぎ去り、約束の日。
久しぶりに起動するファンタジーボムに懐かしさを覚える。
フレンド欄を見ると、ここからのみんなは既にオンラインになっていた。
通話部屋にもどんどん集まっているようだった。
配信40分前、僕は急いでシャベルを起動し全員が集まっている通話部屋に入室する。
「こ、こんばんは〜...」
「狐狐ちゃ〜ん!ばんは〜!」
「こんばんは、来たねー」
「狐狐ちゃんこんばんは!」
「狐狐さん、こんばんは」
「みんな早くない...?」
「なんか楽しみだったし、エイムあっためておきたくてね」
懐かしいこの5人での通話、自然と笑みが溢れる。
エイムを温める軽い試合が白熱し、配信ギリギリになったのは内緒である。
「みんなもう配信してる?」
「俺はしてるぞ」
「私もしていますよ」
「私も〜!」
「僕は今からです...!」
裏で起動していた配信ソフトの最終確認を済ませて、配信開始ボタンを押す。
【コラボ】ここからのメンバーでファンボ!【九尾狐狐/椿/ローバー/ニコ・ウラナ/小粒小豆】配信中
@九尾狐狐 Monster Live三期生
懐かしい5人でファンボします!
久しぶりだから上手くできるかわかりませんけど...
#狐狐ライブ
「僕も配信始めました」
【ここからきちゃ〜!!】
【久しぶりだ!】
【ここにちはー!】
【ここから久しぶりすぎる...】
既に待機していたココ友のみんながコメントをしてくれる。
瞬く間にコメント欄が流れ始めた。
「そう言えば、今回のコラボは椿からの提案でしたけど、久しぶりにやりたくなったのでしょうか?」
「実はね〜、ファンボに関して重大な発表があったんよ!」
「そうなんだ!なになに?」
小豆さんが目を輝かせるように食いつく。
ゲームはランクの関係ないフリーマッチだが、内部レートに差があるせいかなかなかマッチングしない。
椿さんがわざとらしく間を開けていると、ローバーさんが淡々と話し出した。
「実は俺らプロシーンに復帰することになった」
「おい!俺がカッコつけて言うとこやぞ!
邪魔すんな!」
「え、プロゲーマーに復帰するってこと...?」
思わず僕は聞き直した。
つばロバの2人が所属するMemorial gamersことMGは日本でもかなり上位に位置するチームだ。
だからこそMG杯が開催されているのだが...
話によると、現在ファンボ部門の最前線で活躍していた選手が次回開催される日本大会までに腕の怪我が完治しないそうだ。
頑張りすぎによる怪我らしい...
そこでMG杯でより一層有名になったつばロバに話が来た、実力も大会までに調整すれば十分に戦えると現コーチから後押しされたらしい。
「ってことで、次の大会応援してくれよな〜!」
「えぇ!?ドッキリとかじゃないの!?」
小豆さんが驚いた声を上げると同時にマッチングする。
いろいろ詳しく聞きたいが、流石にゲームを放っておきながら話すわけにもいかない。
「そう言う重大発表って配信終わりにするものじゃないんでしょうか...」
「正直我慢できんかった!w」
「こいつ早く発表したい〜ってうるさいんすよ...」
「だってお前考えてみ?みんなに応援されるって気持ちええぞぉ?」
「それはそうだけど、まずキャラ選んどけ。
ってかMG杯の時にめっちゃ応援してもらってたやんけ」
「もっとよ!」
「...とりあえずキャラ選べよぉ!!」
キャラ選択時間が終了となり、椿さんのキャラはランダムで選ばれたテイマーとなってしまった。
僕のエルフと合わせて索敵キャラ2になってしまう。
「馬鹿野郎がよ!」
「これはマジですまん、コメント欄見てて...w」
「まあプロに復活するつばロバさんなら余裕ですよね〜?」
悪い話し方で小豆さんがいじる。
「あったりまえよ!
俺らを誰だと思ってんのって...!」
「吐息多めで話すなよ」
「なんか、イケボ配信者みたい...」
「イケボじゃないでしょ〜」
「狐狐ちゃん...?」
「なんか...やだ...」
「...よし、頑張ろうか」
「お前凹むなってw」
「効いてるの面白いw」
「皆さん...もう最初のラウンド始まりますよ...」
ニコさんがどうにかまとめて試合に気持ちを切り替えた。
試合は13:11の延長戦でギリギリ勝利することができた。
プロ復帰ということもあり練習していたのか、つばロバの2人が撃ち負けなかった。
僕は定点をかなり忘れていたので、覚えていた定点をどうにか誤魔化しながらサポートしていた。
「お疲れ様〜」
「お疲れ様です」
「あっぶね〜...コーチに怒られる〜...」
「プロ復帰するってことは、もうこうやって遊べるのも最後...?」
小豆さんが気になっていた質問を投げ掛けた。
確かにプロに復帰すると練習で忙しくなり、遊べなくなるだろう。
もしかするとVtuberも引退する可能性がある。
「正直言うと滅多に遊べなくなるね。
今怪我してるやつがまた戻ってこられるか分かんないからさ」
「相当な怪我ですね...」
「あいつ頑張りすぎなんだよな...」
「マジでそれ、1日中ゲーム起動してるとか結構あるんよね...」
「怪我良くなると良いですね...」
そんなに頑張っている人が報われないのは絶対にやめて欲しい。
僕は心の中で神様にお願いした。
「とにかく、プロ復帰する前にみんなと遊びたかったってことよ!」
「なるほどね〜、楽しかった?」
「めーちゃくちゃ楽しかった!」
「これで練習頑張れるな」
「みんなミラー配信で応援してくれよ!」
「そうですね、楽しみにしています」
「...頑張ってね!」
「おう!優勝して世界行ってくるわ!」
つばロバの2人がプロ復帰するという発表から始まった配信。
コメントも応援メッセージで埋まっていた。
僕も活躍する2人を想像しながら応援するのだった。
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