137話 別世界に行くかも?
(僕が...コラボ...?)
スマホに映るゲーム画面を見て思った。
その画面に僕は“まだ”いないのだが...
話は数時間前に遡る。
いつも通り宿題を済ませて配信の準備をしている時だった。
スマホが揺れ、メッセージが届いたことを伝える。
通知を見るとマネージャーの葵さんからメッセージが届いているようだ。
『お疲れ様です。
早速本題に入りますが、狐狐さんをコラボキャラクターとして登場させたいとゲーム会社から連絡をいただきました。
内容が内容ですのでお時間のある際に通話にて説明させていただきます』
そのメッセージと共にゲームのURLも貼られていた。
僕が出るかもしれないということで一応インストールしてみる。
ゲームのタイトルは『フレンドオンライン』。
タイトル画面は壮大な世界を旅するような印象、異世界系のRPGらしい。
早速ゲームを始めようと画面をタップする。
配信の準備は完了させており、配信開始まで時間があるのでチュートリアルだけでもやってみようと思ったのだ。
スマホを横に持ち左側で移動、右側でスキルや攻撃をするみたいだ。
最初はゴブリンに襲われていたヒロインのような女の子を救う所から始まる。
フードを深く被った主人公がゴブリンを倒し切ると、ヒロインが声をかけてきた。
それに応える主人公がフードに手をかける。
(ここでキャラ作成するんだ)
フードを取る主人公はたった今自分が作成したキャラクターだ。
おしゃれな始まり方につい興奮してしまう。
こういったかっこいい演出は前世からの大好物だ。
主人公は女の子にして白い髪、種族は獣人を選択した。
獣人は猫、犬、ウサギ、羊の4種類しか無かったので耳が似ている猫を選択、性能自体に差はないそうだ。
だが、ここで一つ疑問が生まれた。
僕がコラボするとしたらどこなんだろう...
Monster Liveの世界とこのゲームの世界が繋がることでイベントが始まるとしても、操作キャラなどでMonster Liveのみんなが使用できないとファンは喜ばないと思うが...
といろいろ思っていたが、進めることで疑問は解消した。
このゲームには召喚獣システムがあり、主人公+召喚獣でコンボやダメージを稼ぐ戦闘スタイルのようだ。
おそらくその召喚獣枠に僕が出るのだろう...
...僕戦えるのか?
と言うところで配信開始時間が来たのでゲームを閉じる。
コラボの件は絶対に言ってはいけない内容な為、細心の注意を払って今日の雑談配信に臨むのだった。
雑談配信を終えた僕は葵さんに返信する。
23時までなら返信しても大丈夫とは言われているものの、少し申し訳なく思いながらメッセージを送った。
するとすぐに返信が届き、明日の都合がいい時間に説明するという内容だった。
僕は余裕のある時間を伝える。
(ぼ、僕がコラボか...)
改めてゲームを起動する。
チュートリアルを終え、ガチャ画面に移った。
SR確定ガチャ!と書かれている部分をタップしてガチャ演出が始まる。
綺麗な3Dモデルが滑らかに動き、召喚獣が魔法陣から姿を現す。
結果はSSRの召喚獣が1体、SRが1体、後はRの召喚獣だった。
いきなり最高レアリティが当たるのは運が良い。
早速SSRとSRの召喚獣をセットして最初のクエストに向かう。
ちなみにSSRが女騎士、SRがケットシーの召喚獣だ。
なんだかんだ面白くて、気付けば1時間経っていた。
明日が学校であることを思い出して時間割に合わせた教材の準備をして眠りにつく。
眠りにつくまでの間、フレンドオンラインの事を考えるほどハマってしまっていた。
目覚ましのアラームで目を覚ます。
しぱしぱとする目を擦りながら体を無理やり起こしてベッドから立ち上がる。
部屋を出るとリビングからは食器が擦れる音と何かを焼く音が聞こえた。
お母さんが毎朝焼いてくれる目玉焼きの音だろう。
「おはよう...」
「おはよう歩、もうすぐできるから顔洗ってきてね」
「あーい...」
僕は洗面所に行き顔を洗う。
寝起きには冷たい水が僕の目を覚ましてくれる。
リビングに戻ると机に並べられた皿に食パンと目玉焼きが乗っていた。
「いただきます」
「はいどうぞ〜、私もいただきます」
いちごジャムを薄く塗り広げて齧る。
テレビの音だけが聞こえるリビング、そんな時お母さんが口を開いた。
「歩、今度ゲームとコラボするんだってね?」
「あ、お母さんの方にもう話来てるんだ」
「せっかくならイラストはセブンママに!ってことで連絡が来たのよ」
「あのゲーム3Dばっかりだと思ったけど、イラストもあるんだね」
「レベルを上げて覚醒させると専用イラストがもらえるらしいのよね。
それで狐狐ちゃんとニコちゃんの覚醒絵を私が描くことになったの!」
僕は思わず食パンを食べる手を止めた。
「ニコさんも一緒にコラボするの?」
「そう言う話がお母さんには来たわよ?」
「じゃあ、今から必死に石集めないと...」
「課金もしていいけど、限度は守ってね〜」
「も、もちろん...!」
僕は牛乳で残りの食パンを流し込む。
皿を台所へ運び、寝癖をセットしに洗面台に行く。
跳ねた髪を整えながら、ゲームに実装される自分の性能を考えていた。
(僕は多分サポート系になるかな...
僕の3Dモデルか...楽しみだな〜...)
ニコさんのことも考えながらウキウキ気分で準備を終えた。
リビングに戻るとお母さんが自然な感じで声を掛けてくる。
「声の収録頑張らないとだね!」
「え、あ...そうか...」
そう、ゲームには専用の声を撮らないといけない。
僕はそのことを完全に忘れていて盛り上がってしまったのだ。
「ど、どうしよう...僕、演技とかできない...」
「大丈夫よ、ありのままの狐狐ちゃんとして声を入れればいいの!
なんならいつかボイスも出すことになるかもよ?」
「ぼ、僕のボイス!?」
僕はその日、帰ったら発声練習をしよう...と謎の不安と焦りを感じていた。
読んでいただきありがとうございます!
誤字脱字等ありましたら報告していただけると助かります...!
次回の更新は約1ヶ月後となります
良き年末年始をお過ごしください!
Twitter作ってみました!
気軽にフォロー、DMなどどうぞ!
感想やご意見など励みになります!
@_Kamu_Kamu




