108話 MG杯練習試合一日目①
集合時間になり、MG杯専用のサーバーに人が集まっていく。
見たことのない名前が並ぶ共通通話部屋にコミュ障の血が騒ぐ(?)
知った人の名前はないかと眺めるが椿チームのみんなはまだ来ていなかった。
(こ、これは行かない方がいいな...)
僕は椿チーム専用の通話部屋で待つことにした。
他のみんなはまだニコさんしかオンラインになっていない。
僕はファンボのマネキン撃ちでエイムを温めておく。
集合時間が迫り、共通通話部屋を確認しに行くとつばロバの二人とニコさんがいた。
このMG杯に参加するのは五人のチームが八チーム、総勢四十人の参加者がいる。
その大半の人が共通通話部屋に集まっている。
参加するボタンを押すのに覚悟が必要だった。
「ふぅ...」
深呼吸をして通話部屋に参加する。
嫌でも通話部屋に入ると入室音が鳴る。
だが、この大人数が話していると入室音は聞こえないのか反応する人はいなかった。
僕的にはその方がありがたいのだが...
その時もう一つの入室音が聞こえる。
「みんなこんばんは〜!」
入って早々、小豆さんの声がサーバーに響く。
何というコミュ力...
元気な挨拶にいろんな人から挨拶が返ってくる。
その様子を見て自分のことが少し嫌いになった...
身を隠すように息を潜めていると、開始時刻になりMG杯主催者が通話部屋に入ってくる。
「えぇ皆さん!お時間になりましたので、ルール説明をします!
マイクをミュートにしていただくか、お静かにしていただけると助かります」
そう言うと今までの騒がしさが嘘のように静かになった。
「ありがとうございます。
では早速ルール説明に入ります。
今回もMG杯の主催者を務めます、オーナーの大熊です。
参加していただいた皆様、ありがとうございます!
今日は練習試合一日目となります。
チームは番号を割り振らせていただいて、こちらで総当たりになるように予定を組ませていただきました」
共通サーバーの連絡事項のチャットに総当たりの画像が貼られた。
練習試合は四日間、その後練習期間、休みを挟んで本番が行われる。
「では一試合目の準備をお願いします!」
日程表に従って、僕達は椿チーム専用の通話部屋に移動した。
さっきまでの大勢の中から慣れた人だけのいる通話部屋に移動したことで、息苦しさから解放された感覚に包まれた。
「よっす〜」
「おいす〜」
「こんばんは」
「こんばんはだよ〜!」
「こ、こんばんはです...」
「ミンナこんばんはだねー」
コーチのライトさんも集まり、椿チーム全員が揃った。
僕達の最初の相手はMG所属のeatさんチームだ。
eatさんは元気ハツラツでハイテンションな男性、どんなゲームも全力で楽しむ姿にファンも大勢いる。
プレイスタイルとかも見ておこうと思ったが、みんなの配信を追うのに必死で見ることができなかった。
カスタムマッチで部屋が立てられ、全員が揃ったことが確認されたのでキャラ選択画面に移った。
キャラの選択中に相手チームのリーダー、eatさんについてニコさんが質問する。
「eatさんはどんなプレイスタイルなんですか?」
「あいつはね〜、うるさいよ」
「プレイスタイル言うとるやろがい」
「あぁあぁごめん、プレイスタイルはスキルの使い方が上手いな」
「スキルが上手いんですね」
「エリアコントロールキャラでエリアキープが上手い上に撃ち合いも結構やるからなあいつ...」
「椿君とどっちが強いの〜?」
「ま、俺の方が上手いか!」
「じゃあ勝ったね!」
「余裕よ、優勝確定してるようなもん」
「では頑張ってもらいましょうか」
「みんなも頑張るんだよ!?」
キャラ選択時間が終わり、マップの画面に切り替わる。
今回のマップは王都、爆弾設置箇所はABの二箇所。
中央にも道があり、攻守関係なく相手の位置を把握しなければ裏を取られてしまうようなマップの作りになっている。
相手のeatチームは、テイマー、天使、ドラゴン、呪術師、アンデッドと言う構成。
天使は回復魔法でHP回復、魔力を固めて遮蔽物を作る、時魔法フィールドで足が遅くなるというスキルが使用でき、必殺技は蘇生だ。
完全なサポートキャラだろう。
アンデッドは闇魔法でスモークを作る、地中に潜り一定距離テレポートする、闇魔法を直線上に飛ばして視界を奪うというスキルを使う。
必殺技は腕を発達化させ、マップの好きな場所までテレポートする。
だいぶアクティブなスモークキャラだ。
最初のラウンドが始まり、各自動き始める。
「狐狐ちゃんはBサイト通路に索敵矢、ニコさんは中央に罠仕掛けて引き気味で守ってみるか」
「わ、分かりました...!」
「はい、了解です」
最初は防衛側、キャラは顔合わせの時と同じで練習試合に挑む。
早速椿さんが作戦を立てていく。
「ローバーはAサイトプッシュして圧かけて、ラッシュ来そうなら小豆さんがスモークで時間稼ぎしようか」
「りょーかい」
「了解だよ!」
試合が始まる。
僕がBサイト通路に索敵矢を撃つと、索敵魔法が発動する前に破壊され索敵をすることが出来なかった。
だが、破壊されたと言うことは人がいると言うことでもある。
「Bサイト敵います...!」
そう報告した瞬間、凄まじい数の足音が聞こえる。
大勢いる、そう報告しようとした時、すでにBサイトへ入る唯一の入り口には小豆さんのスモーク、ニコさんのダメージフィールドが展開され相手は思わず足を止めた。
「敵止まった!ローバー君は中央警戒してて!」
「おっけ〜、見てる見てる」
「中央三人見えた」
Bサイト通路から中央に向かう道を見ていたローバーさんがそう報告する。
なんとかダメージを与えようとするが、三対一では明らかに部が悪いとローバーさんは最小限のダメージで引くことができた。
「これAサイト行ってそう」
「B見ておくからA寄っていいよ!」
「りょ、了解...!」
みんなの動きにどうにか着いて行こうとするが、上手い人達の立ち回りが素早すぎて着いていけない...
とりあえず移動していくニコさんに着いていきながら、Aサイトの後方から入口を警戒する。
「Aスモーク!」
「A通路にも敵いるから!」
「罠作動したので中央も警戒です」
「中央やったよ〜!」
「Aエントリー、一人持って行った!」
「天使八十カット、ヒール使った」
「設置設置!」
「設置止めました」
「中央二人!ローテートしてるよ!」
「了解!B行こう!」
「一人持って行けたけど負けちゃった...
四十カットしてる!」
「三対一よ!甘えず囲もう」
「B設置してますね」
「はいさせませんっとぉ!」
「ナイスー」
「ナイス〜!」
「ナイスです」
「な、ナイス...!」
全く何も分からないまま最初のラウンドを取ることができた。
お互いのキルの取り合い、僕はただあちこち歩き回っているだけだった...
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