変わるために
僕が振られたという事を知った高野が慰安会と称して飲み会を嬉嬉として実行した。
そんなだからモテねぇんだよ。
ありがたいと言えばありがたいのだが…。
その日もいつもの安居酒屋のあと、高野もあのニューハーフクラブが気に入ったようでひと月ぶりくらいに行ってみた。
この間の事をきちんと謝罪しようと思ったのだが、既にリサさんは辞めていた。
どうやら、手術の目標額に達したようだ。
謝罪も祝いの言葉も言えずモヤモヤしたものが残ってしまった。
そして、衝撃的なものも見てしまった。
彼女達のビフォーアフターだ。
どう見てもその画像は普通の男性だった。
しかし、昨日、僕らの目の前にいたのは『普通の女性』だった。
「女性ホルモンの効果で結構変わるんですよー!昔の写真あんまり見ないでよー!」
「副作用とかあるんですけど、そのまま男でいるより何倍もマシです。」
彼女達は隠すことなく語ってくれた。
「あ、でも、嫌がる子もいるから気をつけてくださいねー。」
その言葉を聞いてるのか聞いてないのか高野ははしゃぎっぱなしだった。
僕は衝撃的だった。
元々見た目が女性っぽいから化粧や整形で女性らしく見えると思っていた。
♢
「たまには同期同士で飲むのもいいな!」
完全に高野は出来上がっている。
「そうだな…。お前、飲み過ぎだよ…。」
足取りの覚束無い高野の肩を支える。
「大丈夫だって!しかし、人って変われるもんなんだなぁ…。」
「何だ?お前、ニューハーフにでもなんのか?」
僕はわざとらしくニヤリと笑う。
「ちげぇよ!理想に近づくためにあの子達は努力してんだ…。俺も頑張んないとなぁ…。」
高野にも思うところがあったようだ。
珍しくまともな事を言うもんだ。
「でも、三崎、残念だったなぁ!リサちゃん辞めちゃったし連絡先も知らないんだろ?狙ってたんだろぉ?」
「違うっての!ほら、タクシー来たぞ!あとは1人で帰れるよな?」
そう言ってこの酔っぱらいを押し込んだ。




