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第三皇子なのだが周囲からの扱われ方がひどい  作者:


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思わぬ再会

 茶色の髪に緑の瞳。見覚えがある、どころではない、良く知った顔を持つ少女の姿に、おれは無意識に呟いていた。


「……まさか」


 おれはゆっくりと息を飲んだ。


 おれが知っている姿より身長が伸び、顔立ちも体つきも女の子から少女へと成長している。

 たった四年でこんなにも姿が変わるのかと思ったが、どんなに姿が変わろうと瞳は変わっていない。おれを振り回すたびに楽しそうに笑い、どんな草葉より生き生きと輝いている緑の瞳は。


 硬直しているおれにサミルが後ろから近づき声をかけてきた。


「どうかされましたか?」


 その声で現状を思い出したおれは少女から視線を逸らすことなく指示を出した。


「予想外すぎることが起きた。兵をギリギリまで後退させろ。前線には魔力が強い者を配置して防壁を張れ」


「御意」


 サミルが素早く下がって兵に指示を出す。


 おれは兵が後退する時間稼ぎの意味もかねて声をかけた。


「久しぶりだな」


 おれの言葉への返事は魔法の詠唱だった。


「風の精霊よ。すべてを切り裂け」


 ブーメランのような形をした巨大な風の刃が容赦なく襲ってくる。


 おれは慌てて魔法の詠唱をした。


「ちょっ、まっ、水の精霊よ!我を守れ!」


 水の防壁によって方向を変えられた風の刃が右後方にあった山を真っ二つに切断した。


「おまえ、人の話ぐらい聞けよ!」


 手加減なしの攻撃におれは叫ぶが無視され、次の魔法の詠唱が始まった。


「風の精霊よ。無数の矢となれ」


「水の精霊よ。我を包む鉄壁となれ」


 水の防壁が風の矢を弾いたところでおれは黒馬から降りて逃がした。本気で相手をしないと、この一帯が荒野となる危険がある。


「風の精霊よ。彼のものを射止めよ」


「容赦ないな」


 あらゆる方向から襲ってくる風をおれは浮遊魔法で体を浮かばせて逃げた。だが風の攻撃は一度避けても途中で方向転換をして再び襲ってくる。しかも、方向転換が間に合わなかった攻撃は地面を切り裂き、岩をえぐり、まばらにそびえ立っている木を切り倒していく。


 この光景にはフオル国軍と謀反軍の兵は顔を青くしていた。自分たちのところに攻撃が飛んできたら防ぐ術がないからだ。


 おれは攻撃を避けながら魔法を詠唱した。


「水の精霊よ。害するものを迎え撃て」


 どこからか現れた水の矢が風の攻撃に当たり相殺していく。おれがもう一度声をかけようとしたところで魔法の詠唱が聞こえてきた。


「風の精霊よ。天よりこの地に……」


 詠唱している魔法の内容におれは驚いて叫んだ。


「それは止めろ!」


「……怒りの裁きを降臨させよ」


 おれの言葉は当然のように無視され、魔法の詠唱が終わると同時に複数の竜巻が発生して無差別攻撃を始めた。


 おれは縦横無尽に動き回る竜巻から逃げながら呼びかける。


「おまえ、国の危機なんだぞ?それぐらい分かるだろ?こんなところで戦っている場合じゃない」


 おれが叫ぶとポツリと声が聞こえた。


「火の精霊よ。風と踊れ」


「マジか!?」


 竜巻に火が点火され、見たままの通り火柱となった。どうやら、おれの言葉は火に油を注いだようだ。この場合は竜巻に火だが。


「何が気に食わなかったんだ!?」


 おれの叫び声は無情にも炎の中に消えていった。


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