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第三皇子なのだが周囲からの扱われ方がひどい  作者:


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不思議な地下牢

 翌日の早朝。


 おれはここ最近の日課になっていることをするために城へ向かった。ちなみに日課とは城へ侵入して王の寝室に張られた罠と結界の解除をすることだ。

 いつもならそれだけで終わるのだが、今日はいつもと違って密偵が二人ほど罠にかかっていた。


「あー、やっぱり他にもいたか」


 おれの言葉に動きを封じられた密偵二人が恨めしそうに睨んでくる。その視線は殺気と屈辱に満ちていた。


「そんなに睨まれてもなぁ。とりあえず連れて行くか」


 密偵の二人は見えない蜘蛛の糸に体を拘束されているかのように空中で固まっていた。おれがこの部屋に現れてから必死に体を動かそうとしているが、どういう仕組みなのかプルプル震えるだけで全く動けないでいる。


 おれは頭をかきながら密偵に向けて手を伸ばした。


「ちょっと寒いぞ。水の精霊よ、彼のものに氷結の結界を」


 身動き出来ず恨めしそうに睨みつけている恰好のまま密偵を氷漬けにして、城の裏口へと運んだ。


「荷台を持ってきていて正解だったな」


 おれは荷台に氷漬けにした密偵二人を乗せると麻布を被せて、カリーナの家へと向かった。




 おれがカリーナの家の呼び鈴を鳴らすと、顔見知りの執事が出てきて客間へと案内した。

 おれは氷漬けにした二人の密偵を担いでいたが、執事は表情一つ変えなかった。さすが、この家の執事を長年勤めているだけのことはあって、これぐらいでは驚かないらしい。


 客間で待っているとカリーナが笑顔で入ってきて氷漬けにされた密偵を見た。


「おはよう。それ、こっちに持ってきて」


 その言葉と笑顔に、おれはゲンナリしながら立ち上がって氷漬けの密偵を担きあげた。


「嬉しそうだな」


「狩りが成功すると嬉しいものでしょ?」


「人間を狩るとか言うな」


 いつも通りカリーナはおれの言葉を無視すると二人の密偵を昨日の夜、捕まえた男がいる牢の隣に入れた。


 そこでおれが魔法を解除すると、二人の密偵は即座に隠し武器を投げつけてきた。氷漬けから目覚めてすぐの行動にしては、なかなか良い動きなのだが……


「気をつけてね。攻撃したら自分に返ってくるから」


 カリーナの説明と同時に密偵の二人が投げた武器が消え、牢の天井から投げた二人に向かって武器が降ってきた。


 予想外の事態に驚き困惑しながらも慌てて自分の武器を避けている。あの部屋にまで侵入できただけのこともあって、なかなか良い動きをする。


 驚きながらも牢の観察を始めた密偵二人を無視して、おれは昨日捕まえた男を見た。

 すると、昨日最後に見た時と変わらぬ姿勢で、こちらに背を向けて床に寝ていた。ふてぶてしいのか度胸が良いのか。


「まだ寝ているのか?」


 おれの呆れ声に、カリーナが冷徹な魔王の微笑みを浮かべて言った。


「昨日の夜はここから抜け出そうと頑張ったから疲れたのよ。武器も取り上げてないし、行動制限もしていないけど逃げ出せなかったから、ふて寝しているの。あ、自害防止魔法をかけてあるから、一応行動制限はあったわね」


 カリーナの言葉は傷ついたプライドに塩を塗るようなものであった。


 隠密として敵に捕まることは恥であり、自身が持っている情報を吐き出される前に自害するものである。それを封じられた上に武器があるのに逃げ出せないという生き恥のような状況。


「そりゃ、ふて寝したくなるわ。それにしても頑丈だな、この地下牢」


 おれが感心しながら周囲を見回すと、背後から女性の声が響いてきた。


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