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住んでる場所が田舎すぎて、ダンジョン探索者が俺一人なんだが?  作者: 赤月ヤモリ
第二章 夜叉の森ダンジョン編

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ep21 過去との邂逅

 モンスターが近付いているのは気付いていた。


 しかし他の探索者の獲物を奪うのは基本的にご法度。


 人数的にも危険はないと放置して進もうとしたところ、先ほどギルドで話しかけてきた大男の声が聞こえてきた。


 明らかに焦った声。

 彼の実力を考慮し、万が一に備えて動いた。


 結果としては、動いて正解。

 あと少し遅ければ重傷者が出ていただろう。


「大丈夫ですか?」


 話しかけると全員の視線が集まる。

 いやん、照れるじゃないの。

 大勢に注目される事自体は学校で慣れているが、その全員が探索者となると中々に迫力があるな。


「相馬……創?」


「あ、はい。先程はどうも。危なそうだったので乱入させていただきました。怪我はありませんか?」


 特に襲われそうになっていた女探索者をちらり。

 視線が合うと、彼女はコクコクと忙しなく首肯を返した。


 無理をしている様子もないので大丈夫だろう。


「まずはありがとう。おかげで全員無事だ。……けど、これをあんたがやったのか?」


「そうですね。これでもAランク探索者……いえ、Sランク探索者ですから!」


 ふふんっ、と胸を張る。

 ドヤって感じだ。

 流石にここで謙遜しても意味ないからな。


 すると、わぁあああ! と歓声が上がる――事はなく。


「お、おう」

「すげぇ」

「レベルが違うな」

「てかこの氷硬すぎ」

「思ってたより自己顕示欲強めの高校生だな……」


 小さな感嘆が広がった。

 おかしいね。

 レイジがのの猫を助けた時は『日本最強ヤバすぎ!』『かっこいい!』『しゅきしゅき大好き!』みたいな感じで、ネット中お祭り騒ぎだったというのに。


 なんだこの差は。


 まぁいいんだけどね。

 おっさん連中からちやほやされても嬉しくないし。

 別に負け惜しみじゃないし。

 ほんとだし。


 なんて話していると、遅れて七規と幸坂さんが合流。


「せんぱ~い、いきなり早いよ~。幸坂さん重いんだから、気を使ってあげてよ~」


「盾が、ね? 重いのは、盾が、だから。私は、重くない、から」


「わかってますって」


 えへへ、と仲睦まじく笑い合う二人(七規は無表情)。

 かなり打ち解けて見える。


(夜叉の森に潜るにあたって、三人で何度か顔合わせはしたが……それでも過ごした時間は短いし、二人のコミュ力がなせる業か)


 七規は友人も多く、学内でも人気者。

 幸坂さんもこの間まで彼氏がいたリア充だ。


 ここに『同じパーティー』『同じ探索者』という共通の話題が生まれれば、仲良くならない方がおかしいという話である。


 そんな二人を横目にしつつ、俺は大男へと声を掛けた。


「ところで皆さん付いて来ていたみたいですが、何か用でしたか?」


 すると大男は渋い表情を浮かべて答える。


「あぁ、それか。悪いな。みんなSランクの実力が見たいって言って聞かなくてなぁ……俺はやめようって言ったんだぜ?」


「そうでしたか」


 確かに有名人が来たら見たくなるのは人の性か。


 正直、俺個人は別に問題はない。

 見られて困ることもないし。


 ただ今回は七規と幸坂さんの引率の仕事中。

 出来れば早々にお帰り願うとしよう。


 俺は再度口を開こうとして——。


「あっ、そうか! もしかして七規ちゃん!?」


 ふと一人の女性探索者が何かに気付いた様子で、七規に近付いた。


「え、え?」


「やっぱりそうだ! 七規ちゃんだ!」


「七規の知り合いか?」


「いや、知らない人……どこかでお会いしましたか?」


 嬉しそうな女性探索者に対し、七規は困った様子。

 しかし女性探索者は気にしたそぶりも見せずに、苦笑を浮かべた。


「あー、ごめんごめん。大丈夫、知らなくて当然。初対面だよ。ただ七規ちゃんの写真は前に見せてもらったことがあってね、顔だけ知ってたんだ」


 見せてもらったこと?

 いったい誰から?


 疑問符を浮かべるのは俺や七規だけでなく、彼女以外の探索者も同様。


 いきなり何言ってんだこいつ、的な目で女性探索者を見ている。

 すると彼女のパーティーメンバーと思しき男性が全員を代表して問いかけた。


「この子を知ってるのか?」


「うん! てかあんたも知ってるわよ!」


「えぇ?」


「ほら、志穂さんと正二さん……水瀬さん(・・・・)所の娘さんよ!」


「水瀬……って、えぇ!? マジか!?」


 途端に他の探索者たちもわっと声を上げる。


 あちこちから、

「水瀬んとこの!?」

「可愛いのは母親譲りか」

「無表情は父親譲りね」

 と視線が七規に集中。


「はわ、はわわわわっ」


 対する七規は聞いたこともない声を上げて、慌てた様子で俺の背後に隠れる。小動物の様でとても可愛い。服をキュッと摘まんでくるの、胸がどきどきして仕方ないよ。


 俺は胸の高鳴りを堪えつつ、思考を巡らせる。


 話から察するに、みんなが知っているのは七規の両親のことだろう。というか今更だけど、七規の両親って何者なのだろうか。彼女の保護者がおじい様であることから、亡くなっているのだろうことは察しているのだが……。


「えっと、七規の両親をご存じで?」


「そりゃもちろん! 夜叉の森じゃ二人がトップだったからなぁ~!」


「私も何度助けてもらったか」


「俺も俺も! あの時貰ったアドバイスのおかげでCランクまで上り詰めたぜ!」


「お前もか~!」


 次第に盛り上がる探索者たち。

 俺たちを置いて思い出話に花を咲かせていらっしゃる。


 どうやら七規の両親も探索者だったらしい。


「にしても、あの二人の娘が探索者か……感慨深いな。相馬くんもそう思うだろ?」


「……え?」


 はて?

 何故そこで俺に話を振るのか。

 それではまるで、俺が七規の両親と知り合いの様ではないか。


 生憎と七規以外で水瀬と言う探索者に心当たりは――。


「……」


 心、当たりは――。


 ドクン、と心臓が跳ねる。

 気付いてはいけないことに、気付いてしまう。


「おい、そのことは——!」


「え? ……あ、やべ」


 慌てた声が、嫌に耳に残る。


(まさか……そんな)


 と、生唾を飲み込もうとして、気付く。


 俺の背後。

 服の裾を握る彼女の手が、震えていることに。


 視線を向けると、七規は俯いて動かない。


 それを見た瞬間、俺はすべての動揺を飲み込む。

 飲み込んで、意識を無理やり切り替える。


「すみません。俺が始めたことで恐縮ですけど、ダンジョン内での立ち話は危険ですのでそろそろ……それと、俺たちはもう少し潜る予定ですが、本日は二人の引率の仕事でもありますので、後を付けるのはここまでにしていただけたら幸いです。後日俺一人ならいくらでもお見せしますので」


 ちらりと大男さんに視線を送る。

 すると彼は「任せろ」と言わんばかりに首肯を返してくれた。


 これでひとまず安心だろう。

 仮に言う事を聞かない人がいても、何とかしてくれる。


 実力では劣ろうと、彼の威圧感はかなりのものだ。

 逆らえる者も早々居まい。


 俺は小さく頭を下げてから、七規の手を取り幸坂さんと一緒に同所を後にするのだった。

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― 新着の感想 ―
そっちかぁ〜
七規も事情は知ってるのだろうね 相馬君後で抱きしめて落ち着かせんといかんばい
やっぱりな… 七規やおじい様の異様な信頼や、他人とは思えないくらい良くしてくれる事、違法薬物渡してでも相馬創を生かそうとするから守護者として以上の大恩がありそうだし薄々勘づいていたが予想外が1つ …
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